以前、軌道要素から衛星の位置と速度を求める方法について説明しましたが、今回はこれを使って準天頂衛星「みちびき」の衛星の軌道について計算してみます。
公転周期が惑星の自転周期と等しく、特定の地域の上空に長時間留まるような軌道のこと
準天頂衛星とは?
まず、準天頂衛星の”準天頂”という言葉の意味についてですが、これは天頂からわずかにずれたという意味です。
例えば、東京(北緯 $35^{\circ}$)に住んでいる人にとって、天頂の位置に衛星があるようにしたいとき、軌道傾斜角 $i$ を $35^{\circ}$ と設定すれば良いことが言えます。もし、この位置に衛星を相対的に静止させられれば話は簡単になるのですが、重力の影響により赤道上以外では、衛星を静止させることはできません。
そこで考え出されたのが、なるべく天頂の位置に留まるように、準天頂の位置に衛星を配置する軌道が考えられました。そして、このような軌道は準天頂軌道と呼ばれます。
さて、日本ではGPS衛星を補完する目的で、準天頂衛星「みちびき」が運用されています。なお、日本の国土が北緯 $20\sim46^{\circ}$ の範囲にあることを考慮して、みちびきの軌道傾斜角が約 $40^{\circ}$ となるように設定されています。
2024年9月現在「みちびき」は4機運用されており、高度 $32,000~40,000\,\RM{km}$ で軌道周期は23時間56分に設定されています。(地球の自転と同期させることで、衛星の位置を定位置に留めるためです)
また、みちびきが日本上空に滞在する時間がなるべく長くなるよう、離心率は約 $0.075$ に設定されています。
このように、準天頂軌道は日本での利用に適したユニークな軌道であると言えます。
みちびきの軌道のシミュレーション
「みちびき」では、リアルタイムの軌道要素が公開されているので、これを利用してみちびきの位置や速度を計算することができます。
実際に、「みちびき」の一日間の軌道をコンピュータも用いて計算して描画すると、下の動画のようになります。なお、動画では地球の重心を原点としつつ地球の自転と一緒に回転しない座標系での位置を描画しています。
また、地球に固定された座標系(=地球の自転と共に移動する座標系)で、みちびきの軌道を描画すると、下図のようになって、8の字を描くような軌道となることが分かります。
このように、地上から「みちびき」の軌道を観測すると、8の字の特徴的な軌道を描くこととなります。