ベクトルポテンシャルとは?|磁場のポテンシャルとは?

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電場 $\B{E}$ の背後には、電位 $\phi$ というポテンシャルエネルギーが存在しています。すなわち、電場と電位の間には以下の関係が成立します。($\nabla$ はナブラと読みます。この記号についてはこちらで詳しく説明しています)

\begin{split}
\B{E}=-\RM{grad}\phi
\end{split}

上式に示すように、$\phi$ はスカラー関数です。そのため、電位をスカラーポテンシャルと呼ぶこともできます。

さて、磁場磁束密度に対しても、その背景に電位と同様の物理量を考えることができます。この物理量は磁場のベクトルポテンシャルと呼ばれ、次のように定義されます。

ベクトルポテンシャルとは?

$\B{B}$ を磁束密度として、ベクトルポテンシャル $\B{A}$ を次のように定義する。

\begin{split}
\B{B}=\RM{rot} \B{A}\\
\end{split}

このとき、$\B{j}$ を電流密度、$\mu$ を透磁率として $\B{A}$ は次のように表される。

\begin{split}
\B{A}=\ff{\mu}{4\pi}\int_V\ff{\B{j}(\B{r}’)}{|\B{r}-\B{r}’|}\diff V \\
\,
\end{split}

ベクトルポテンシャルが上のように表される理由について今回は説明します。まずは、磁場あるいは磁束密度についてもガウスの法則と同様の関係式が成立することを示します。

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磁束密度に関するガウスの法則

例えば、直線状の導線に定常電流を流したとき、この導線周りに形成される磁束密度の様子は下図のようになります。

磁束密度のガウスの法則

ここで、任意の場所に閉曲面 $S$ を取ったとします。このとき、磁束密度 $\B{B}$ には湧き出しも吸い込みも無いので、$S$ を通って流入・流出する正味の磁束密度の合計は $\B{0}$ となります。

この様子は面積分として記述できて、

\begin{split}
\int_S\B{B}\cdot \B{n}\,\diff S=0
\end{split}

となります。さらに、左辺にガウスの発散定理を適用すると、

\begin{split}
\int_S\B{B}\cdot \B{n}\,\diff S=\int_V\RM{div}\B{B}\,\diff V
\end{split}

が得られます。ゆえに、

\begin{split}
\int_V\RM{div}\B{B}\,\diff V=0
\end{split}

が成立します。これが恒等的に成立するため、

\begin{split}
\RM{div}\B{B}=0
\end{split}

が導かれます。

ところで、電気には正電荷と負電荷を担う最小単位として、陽子と電子が存在します。ところが、磁気の場合は $N$ 極や $S$ 極は必ずペアで存在しており、単体の磁極、いわゆるモノポールは発見されていません。

そのため、空間上でどのような閉曲面を設定したとしても必ず、同じ磁気量の $N$ 極と $S$ 極が含まれると言えます。ゆえに、上で得られた式は直線状の導線の場合だけで無く、一般の状況でも成立することが分かります。

ところで、上式は(微分型の)ガウスの法則と同様の形をしているため、これを磁場に関するガウスの法則と呼ぶことにします。

磁場に関するガウスの法則

磁場に関するガウスの法則

$\B{H}$ を磁場、$\B{B}$ を磁束密度、$\mu$ を透磁率とする。

このとき、以下の磁場に関するガウスの法則が成立する。

$$
\left\{
\begin{split}
&\RM{div}\B{H}=0\EE
&\mu\,\RM{div}\B{H}=\RM{div}\B{B}=0
\end{split}
\right.
$$

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磁場のベクトルポテンシャルとは?

物理学ではある現象について、さらにその背後に存在する現象を明らかにしようとします。例えば、電場 $\B{E}$ についてはその背後に電位 $\phi$ が存在していて、

\begin{split}
\B{E}=-\RM{grad}\B{E}=-\left(\ff{\del \phi}{\del x}\B{i}+\ff{\del \phi}{\del y}\B{j}+\ff{\del \phi}{\del z}\B{k} \right)
\end{split}

という関係で結ばれています。($\nabla$ はナブラと読みます。この記号についてはこちらで詳しく説明しています)

ところで、ベクトル解析の公式によれば、以下の関係式が成立します。

$$
\left\{
\begin{split}
&\RM{rot}(\RM{grad} f)=\B{0}\qquad(1)\EE
&\RM{div}(\RM{rot} \B{A})= 0\,\,\qquad(2)
\end{split}
\right.
$$

話を電場に戻して、静電場においては $\RM{rot}\B{E}=\B{0}$ が成り立ちます。これを式$(1)$ と比較すると、$\B{E}=-\RM{grad}\phi$ が導けます。

このように、$\phi$ は静電場 $\B{E}$ の背景にある量と言えます。また、$\phi$ はスカラー関数のため、スカラーポテンシャルと呼ばれます。

一方、磁場については上で導出した関係式より、

\begin{split}
\RM{div}\B{B}=0
\end{split}

の関係にあると言えます。これを式$(2)$と比較すると、

\begin{split}
\B{B}=\RM{rot} \B{A}
\end{split}

という対応となります。この結果を電場と電位の関係から類推すると、$\B{A}$ は磁場における電位のような量であることが分かります。

このようなことから、$\phi$ をスカラーポテンシャルと呼んだことから、$\B{A}$ をベクトルポテンシャルと呼ぶことにします。

ベクトルポテンシャルとは?

$\B{B}$ を磁束密度として、ベクトルポテンシャル $\B{A}$ を次のように定義する。

\begin{split}
\B{B}=\RM{rot} \B{A}\\
\,
\end{split}

ベクトルポテンシャルの任意性

ベクトルポテンシャル $\B{A}$ は一意に定まらないという性質があります。例えば、スカラー関数を $f$ として、その勾配ベクトルを足したものを新たなベクトルポテンシャルとして、

\begin{split}
\B{A}_1=\B{A}+\RM{grad}f
\end{split}

と置いたとします。これについて、$\RM{rot}\B{A}_1$ を計算すると、

\begin{split}
\RM{rot}\B{A}_1&=\RM{rot}(\B{A}+\RM{grad}f)\EE
&=\RM{rot}\B{A}+\RM{rot}(\RM{grad}f)
\end{split}

となりますが、式$(1)$ より $\RM{rot}(\RM{grad}f)=0$ のため、$\RM{rot}\B{A}_1=\RM{rot}\B{A}=\B{B}$ となります。

このように、ベクトルポテンシャルはある程度の任意性を持ちます。

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ベクトルポテンシャルの表式の導出

さて、話は少し前後しますが、ビオ・サバール法則から磁束密度は次のように体積分を用いて以下のように表せます。

\begin{split}
\B{B}=\ff{\mu}{4\pi}\int_V\ff{\B{j}(\B{r}’)\times (\B{r}-\B{r}’)}{|\B{r}-\B{r}’|^3}\diff V
\end{split}

ここで、天下り的になりますが次の計算について考えます。

\begin{split}
\nabla\times \left(\ff{1}{|\B{r}-\B{r}’|}\,\B{j}(\B{r}’) \right)
\end{split}

このとき、スカラー量 $\phi$ とベクトル量 $\B{C}$ の外積 $\nabla\times (\phi\,\B{C})$ については公式 $\nabla\phi\times \B{C}+\phi\nabla\times \B{C}$ が成立します。そのため、上式を

\begin{split}
\nabla\times \left(\ff{1}{|\B{r}-\B{r}’|}\,\B{j}(\B{r}’) \right)=\nabla \left(\ff{1}{|\B{r}-\B{r}’|} \right)\times \B{j}(\B{r}’)+\ff{1}{|\B{r}-\B{r}’|}\nabla\times \B{j}(\B{r}’)
\end{split}

と変形できます。右辺第二項の微分演算子は $\B{r}$ の微分であるため、その計算結果は $\B{0}$ となります。ゆえに、右辺第一項のみを計算すれば良く、これは

\begin{split}
\nabla \left(\ff{1}{|\B{r}-\B{r}’|}\B{j}(\B{r}’) \right)&=\nabla \left(\ff{1}{|\B{r}-\B{r}’|} \right)\times \B{j}(\B{r}’) \EE
&=\ff{\B{j}(\B{r}’)\times (\B{r}-\B{r}’)}{|\B{r}-\B{r}’|^3}
\end{split}

となります。この結果を最初の式に適用すると、

\begin{split}
\B{B}&=\ff{\mu}{4\pi}\int_V\ff{\B{j}(\B{r}’)\times (\B{r}-\B{r}’)}{|\B{r}-\B{r}’|^3}\diff V\EE
&=\nabla\times \left( \ff{\mu}{4\pi}\int_V\ff{\B{j}(\B{r}’)}{|\B{r}-\B{r}’|}\diff V\right)
\end{split}

これより、ベクトルポテンシャルの中身は

\begin{split}
\B{A}=\ff{\mu}{4\pi}\int_V\ff{\B{j}(\B{r}’)}{|\B{r}-\B{r}’|}\diff V
\end{split}

となることが分かります。

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