電流の流れているコイルには、磁場の形でエネルギーが蓄えられることが知られています。
このエネルギーのことを、電磁気学では、磁場のエネルギーと呼びます。なお、磁場のエネルギーは次のように表されます。
まずは、コイルに流れる電流と仕事の関係について考えていきます。
コイルに流れる電流と仕事の関係
コイルに流れる電流が $I$ から $I+\D I$ に増加したとき、このコイルに外部からされた仕事について考えてみましょう。なお、コイルの自己インダクタンスを $L$ とします。
さて、電流が $\D t$ の間に増加したとしましょう。このとき、$I\D t$ の電荷を逆起電力 $V=-\DL{L\ff{\D I}{\D t}}$ に逆らって移動させたと考えることができます。したがって、これに必要な外部からの仕事 $\D W$ を次のように計算できます。
\begin{split}
\D W=-V\cdot I\D t=L\ff{\D I}{\D t}\cdot I\D t=LI\D I
\end{split}
これの極限を考えると、コイルの電流を $\diff I$ 変化させるのに必要な外部からの仕事 $\diff W$ を
\begin{split}
\diff W=LI\,\diff I
\end{split}
と置けます。
ここで、電流を $0$ の状態から $I$ まで変化させたとします。すると、この変化に必要な外部からの仕事の大きさ $W$ は、$\diff W$ の和となります。ゆえに積分を用いて、
\begin{split}
W=L\int_0^I I\,\diff I=\ff{1}{2}LI^2
\end{split}
と計算できます。
磁場エネルギーとは?
上の結果は外部からの仕事の総和を表すものですが、コイルがされた仕事とも言い換えられます。さらに、コイルに蓄えられたエネルギーとも考えられます。
ゆえに、電流が $0$ から $I$ になった結果、コイルは $\DL{\ff{1}{2}LI^2}$ のエネルギーを蓄えたと見ることができます。
このとき、コイルに蓄えられるエネルギーは磁場の形として保存されています。そのため、このエネルギーのことを磁場のエネルギーと呼ぶことにします。
まとめると、自己インダクタンスが $L$ のコイルに $I$ の電流が流れているとき、コイルに蓄えられる磁場のエネルギー $U_m$ を
\begin{split}
U_m=\ff{1}{2}LI^2
\end{split}
と表せます。
ところで、長さが $l$ で断面積が $S$ の $N$ 回巻きのソレノイドコイルの内側の磁束密度の大きさは、$B=\DL{\mu \ff{N}{l}I}$ となります。そのため磁束は $\Phi=B\cdot S= \DL{\ff{\mu N I S}{l}}$ と計算できます。
さらに、自己インダクタンスの定義式である、$\DL{L=\ff{N\Phi}{I}}$ を適用します。すると、ソレノイドコイルの自己インダクタンスを $\DL{L=\ff{\mu N^2 S}{l}}$ と計算できます。ゆえに、ソレノイドコイルの磁場のエネルギー $U_m$ を
\begin{split}
U_m=\ff{\mu N^2 S}{2l}I^2
\end{split}
とできます。
磁場のエネルギー密度とは?
上で説明したように、ソレノイドコイルの磁束密度の大きさは $B=\DL{\mu \ff{N}{l}I}$ となります。これを利用すると、ソレノイドコイルの磁場のエネルギーを、
\begin{split}
U_m=\ff{1}{2\mu}B^2lS
\end{split}
と変形できます。
ここで、コイルの体積が $lS$ であることを用いると、コイルが保有する単位体積当たりの磁場のエネルギー=磁場のエネルギー密度 $u_m$ を次のように計算できます。
\begin{split}
u_m=\ff{U_m}{lS}=\ff{B^2}{2\mu}
\end{split}
これより、コイルに蓄えられる単位体積当たりの磁場のエネルギーを次のように表せることが分かります。