合成抵抗と合成インピーダンスの導出|直流回路と交流回路の合成則とは?

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今回は直列回路と並列回路について、抵抗とインピーダンスの合成則について説明します。

まず、直流電源の直列回路と並列回路について、抵抗・電気容量・自己インダクタンスの合成結果は次のようになります。

直流回路の合成抵抗

抵抗を $R_1,R_2$、電気容量を $C_1,C_2$、自己インダクタンスを $L_1,L_2$ とする。

直列にこれらの素子を接続したとき、その合成結果は次のように表される。

$$
\left\{
\begin{split}
&R=R_1+R_2\EE
&\ff{1}{C}=\ff{1}{C_1}+\ff{1}{C_2}\EE
&L=L_1+L_2
\end{split}
\right.
$$

また、並列につないだ場合、その合成結果は次のように表される。

$$
\left\{
\begin{split}
&\ff{1}{R}=\ff{1}{R_1}+\ff{1}{R_2}\EE
&C=C_1+C_2\EE
&\ff{1}{L}=\ff{1}{L_1}+\ff{1}{L_2}
\end{split}
\right.
$$

 

次に、交流電源の直列回路と並列回路について、その合成インピーダンスは次のように表されます。

交流回路の合成インピーダンス

抵抗、コイル、コンデンサ―の複素リアクタンスを $\dot{Z}_R,\dot{Z}_L,\dot{Z}_C$ とする。

このとき、直列回路の合成インピーダンス $\dot{Z}$ は次のように表される。

\begin{split}
\dot{Z}=\dot{Z}_R+\dot{Z}_L+\dot{Z}_C
\end{split}

また、並列回路の合成インピーダンス $\dot{Z}$ は次のように表される。

\begin{split}
\ff{1}{\dot{Z}}=\ff{1}{\dot{Z}_R}+\ff{1}{\dot{Z}_L}+\ff{1}{\dot{Z}_C}\\
\,
\end{split}

これらの結果から分かる通り、直流回路と交流回路で合成方法は同じになります。まずは、直流電源についての合成結果を導いていきます。

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直流回路の合成則

高校物理の復習も兼ねて、直流電源につながれた回路=直流回路の合成則について考えていきます。

抵抗の合成則の導出

始めに、図のように直列につながれた抵抗と並列につながれた抵抗の合成について考えます。なお、直流電源の電圧を $V$、抵抗を $R_1,R_2$ とします。

直列抵抗と並列抵抗

まず、抵抗 $R_1,R_2$ が直列につながれている場合について考えます。また、それぞれの抵抗に $V_1,V_2$ の電圧がかかっているとします。

このとき、キルヒホッフの第二法則から起電力の和と電圧降下の和が等しくなると言えるので、

\begin{split}
V=V_1+V_2
\end{split}

が成立します。そして、キルヒホッフの第一法則から、各抵抗に流れる電流は等しいと言えます。これを $I$ とするとオームの法則から、$V_1=R_1I,V_2=R_2I$ とできます。以上を適用すると、

\begin{split}
V=R_1I+R_2I=(R_1+R_2)I
\end{split}

となります。この結果より、直列回路での合成抵抗は、各抵抗の和となることが言えます。

次に、並列回路の合成抵抗について考えます。このとき、各抵抗にかかっている電圧は、キルヒホッフの第二法則より、$V_1=V,V_2=V$ と言えます。

そして、各抵抗の電流を $I_1,I_2$、直流電源からの電流を $I$ とすると、キルヒホッフの第一法則から、$I=I_1+I_2$ の関係が成立します。

さらに、オームの法則より $I_1=\DL{\ff{V}{R_1}},I_2=\DL{\ff{V}{R_2}}$ の関係にあるので、以下の式が成立します。

\begin{split}
I&=I_1+I_2=\ff{V}{R_1}+\ff{V}{R_2}\EE
&=\left( \ff{1}{R_1}+\ff{1}{R_2} \right)V
\end{split}

以上より、並列回路全体の合成抵抗 $R$ は、

\begin{split}
\ff{1}{R}=\ff{1}{R_1}+\ff{1}{R_2}
\end{split}

となることが分かります。

電気容量の合成則の導出

図のように直列につながれたコンデンサ―と並列につながれたコンデンサ―の電気容量の合成について考えます。なお、各コンデンサ―の電気容量を $C_1,C_2$ とします。

直列コンデンサ―と並列コンデンサ―

まず、コンデンサーを直列につないだ時を考えます。このとき、各コンデンサ―の電圧が $V_1,V_2$ であするとすると、先程と同様の議論より、

\begin{split}
V=V_1+V_2
\end{split}

の関係にあると言えます。このとき、各コンデンサーに蓄えらている電気量は等しく、これを $Q$ と置くことができます。今、電気容量と電圧の公式から $Q=C_1V_1=C_2V_2$ と言えるので、

\begin{split}
V=V_1+V_2=\ff{Q}{C_1}+\ff{Q}{C_2}=\left(\ff{1}{C_1}+\ff{1}{C_2}\right)Q
\end{split}

が得られます。これより、直列回路の合成電気容量を $C$ としたとき、

\begin{split}
\ff{1}{C}=\ff{1}{C_1}+\ff{1}{C_2}
\end{split}

となることが分かります。

次に、並列につないだ場合の合成電気容量について考えます。

今、それぞれのコンデンサーにかかっている電圧は、キルヒホッフの第二法則から、$V_1=V_2=V$ と言えます。したがって、この回路全体で蓄えられた電気量は以下のようになります。

\begin{split}
Q=Q_1+Q_2=C_1V+C_2V=(C_1+C_2)V
\end{split}

これより、並列につながれたコンデンサ―の合成電気容量は $C=C_1+C_2$ となって、電気容量の和となることが分かります。

コイルの合成則の導出

図のように、直列につながれたコイルと並列につながれたコイルの自己インダクタンスの合成=合成インダクタンスについて考えます。なお、各コイルの自己インダクタンスを $L_1,L_2$ とします。

直列コイルと並列コイル

まず、コイルを直列につないだ場合ですが、キルヒホッフの第一法則から各コイルに流れている電流は等しいと言えます。ゆえに、以下の関係が成立します。

\begin{split}
V&=V_1+V_2\EE
&=-L_1\int_{t_0}^{t_1}\ff{\diff I}{\diff t}\diff t-L_2\int_{t_0}^{t_1}\ff{\diff I}{\diff t}\diff t \EE
&=-(L_1+L_2)\int_{t_0}^{t_1}\ff{\diff I}{\diff t}\diff t
\end{split}

この結果より、直列につないだコイルの合成インダクタンスは和となることが言えます。

次に、並列回路の合成インダクタンスについて考えます。このとき、$I=\DL{\ff{1}{L_1}\int_{t_0}^{t_1}V\diff t}$ の関係にあることを用います。今、各コイルに流れる電流を $I_1,I_2$ とすると、キルヒホッフの第一法則より以下の関係が導けます。

\begin{split}
I&=I_1+I_2\EE
&=\ff{1}{L_1}\int_{t_0}^{t_1}V\diff t+\ff{1}{L_2}\int_{t_0}^{t_1}V\diff t\EE
&=\left(\ff{1}{L_1}+\ff{1}{L_2}\right)\int_{t_0}^{t_1}V\diff t
\end{split}

これより、並列回路全体の合成インダクタンス $L$ は、

\begin{split}
\ff{1}{L}=\ff{1}{L_1}+\ff{1}{L_2}
\end{split}

となることが分かります。

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交流回路の合成則

今度は交流回路において、抵抗に相当するインピーダンスについての合成則について考えます。

さて、抵抗とコイル、そしてコンデンサーを直列につなげた $RLC$ 直列回路の合成インピーダンス $Z$ は、こちらで求めたように、

\begin{split}
Z=\sqrt{R^2+\left(L\omega-\ff{1}{C\omega} \right)^2}
\end{split}

となりました。さらに、合成インピーダンスは、以下の複素インピーダンス $\dot{Z}$ の絶対値(→複素数の絶対値とは?)と等しくなります。($j$ は虚数単位

$$
\left\{
\begin{split}
\dot{Z}&=R+j\left(L\omega-\ff{1}{C\omega} \right)\EE
Z&=|\dot{Z}|
\end{split}
\right.
$$

並列回路の合成インピーダンスを求める際、この関係式を利用します。

RC並列回路の合成インピーダンス

まずは、抵抗とコンデンサーを並列につないだ $RC$ 並列回路の合成インピーダンスを求めていきます。

このとき、それぞれの複素リアクタンス(=直流回路の抵抗に相当)は $R,\DL{\ff{1}{jC\omega}}$ と置けます。

RC回路の模式図

さて、リアクタンスの単位がオームであることから推測できる通り、交流の並列回路の合成インピーダンスも実は、直流の並列回路と同じ方法で計算できます。

すなわち、$RC$ 並列回路全体の複素インピーダンス $\dot{Z}$ は $R,\DL{\ff{1}{jC\omega}}$ と次のような関係にあります。

\begin{split}
\ff{1}{\dot{Z}}=\ff{1}{R}+\ff{1}{\ff{1}{jC\omega}}
\end{split}

これを整理すると

\begin{split}
\dot{Z}&=\ff{R}{1+j\omega RC}\EE
&=\ff{R}{1+(\omega RC)^2}-j\ff{\omega R^2C}{1+(\omega RC)^2}
\end{split}

とできます。前述のように、合成インピーダンスと複素インピーダンスは $Z=|\dot{Z}|$ の関係にあることより、

\begin{split}
Z=\ff{R}{\sqrt{1+(\omega RC)^2}}
\end{split}

と求められます。

RL並列回路の合成インピーダンス

次に、抵抗とコイルを並列につないだ $RL$ 並列回路の合成インピーダンスを求めていきます。

RL回路の模式図

先程と同様の議論より、$RL$ 回路全体の複素インピーダンスは次のように計算でき、

\begin{split}
\ff{1}{\dot{Z}}&=\ff{1}{R}+\ff{1}{jL\omega}\EE
\therefore\,\dot{Z}&=\ff{jRL\omega}{R+jL\omega}
\end{split}

整理して、

\begin{split}
\dot{Z}&=\ff{\omega^2RL^2}{R^2+(L\omega)^2}+j\ff{\omega R^2L}{R^2+(L\omega)^2}
\end{split}

これより、合成インピーダンスを、

\begin{split}
Z=\ff{\omega RL}{\sqrt{R^2+(L\omega)^2}}
\end{split}

と求められます。

LC並列回路の合成インピーダンス

最後に、コイルとコンデンサーを並列につないだ $LC$ 並列回路の合成インピーダンスを求めていきます。

LC回路の模式図

先程と同様の議論より、$LC$ 回路全体の複素インピーダンスは次のように計算でき、

\begin{split}
\ff{1}{\dot{Z}}&=\ff{1}{jL\omega}+\ff{1}{\ff{1}{jC\omega}}\EE
\therefore\,\dot{Z}&=j\ff{L\omega}{1-\omega^2 LC}
\end{split}

これより、合成インピーダンスを

\begin{split}
Z=\left|\ff{L\omega}{1-\omega^2 LC} \right|
\end{split}

と求められます。

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