ブロムウィッチ積分とは?|ラプラス逆変換の公式とその応用

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ラプラス逆変換を求める際には、ラプラス逆変換表を参照するのが基本的な方法ですが、ラプラス逆変換にも計算公式が存在しています。

この公式はブロムウィッチ積分と呼ばれる積分で次の様に記述されます。

ブロムウィッチ積分とは?

以下のように記述される複素線積分ブロムウィッチ積分と呼ぶ。

\begin{split}
\ff{1}{2i\pi}\lim_{q\to \infty}\left\{\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}F(s)\,\diff s\right\}
\end{split}

ただし、$p,q$ を実数、$i$ を虚数単位とする。

そして、ブロムウィッチ積分ラプラス逆変換の間には、次のような関係が成立します。

ブロムウィッチ積分とラプラス逆変換の関係

ブロムウィッチ積分ラプラス逆変換の間には以下の関係が成立する。

\begin{split}
\L^{-1}[F(s)]=f(t)&=\ff{1}{2i\pi}\lim_{q\to \infty}\left\{\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}F(s)\,\diff s \right\}\\
\,
\end{split}

このようにして、ラプラス逆変換はブロムウィッチ積分を用いて計算できます。

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ブロムウィッチ積分とラプラス逆変換

まず、ブロムウィッチ積分の定義ですが、これは次の様に述べられます。

ブロムウィッチ積分とは?

以下のように記述される複素線積分ブロムウィッチ積分と呼ぶ。

\begin{split}
f(t)=\ff{1}{2i\pi}\lim_{q\to \infty}\left\{\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}F(s)\,\diff s\right\}
\end{split}

ただし、$p,q$ を実数、$i$ を虚数単位とする。

このとき、ラプラス逆変換は次の様に表せる。

\begin{split}
\L^{-1}[F(s)]=f(t)=\ff{1}{2i\pi}\lim_{q\to \infty}\left\{\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}F(s)\,\diff s\right\} \\
\,
\end{split}

そして、ブロムウィッチ積分ラプラス逆変換の公式として用いられます。ブロムウィッチ積分を用いると、ラプラス逆変換表に載っていない関数についても、原関数 $f(t)$ が計算できるようになります。

このようなる理由は、フーリエの積分定理フーリエ変換より証明できます。具体的には次の様に示されます。

【証明】

証明に当たっては、以下に示すフーリエの積分定理を利用します。フーリエの積分定理の証明は別の機会に示しますが、ここでは成立するものとして話を進めていきます。

フーリエの積分定理とは?

$f(t)$ が $(-\infty,\infty)$ で区分的に滑らかかつ、絶対可積分であるとする。このとき次式が成立する。

\begin{split}
g(t)=\ff{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty} e^{i\A t}\left\{\int_{-\infty}^{\infty} e^{-i\A t} g(t) \right\}\diff \A
\end{split}

ただし、$i$ を虚数単位とする。

さて、ラプラス変換の定義より $\DL{ F(s)=\int_0^{\infty}e^{-st}f(t)\diff t }$ であるので、ブロムウィッチ積分の中身を、

\begin{split}
&\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}F(s)\,\diff s =\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}\left( \int_0^{\infty}e^{-st}f(t)\diff t \right) \diff s
\end{split}

と変形できます。今、$s=q+i\A$ と置いて($\A$ は実数)$\A$ についての置換を実行すると以下のようになります。

\begin{split}
\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}\left( \int_0^{\infty}e^{st}f(t)\diff t \right) \diff s&=\int_{-q}^{q} e^{(p+i\A)t}\left( \int_0^{\infty}e^{-(p+i\A)t}f(t)\diff t \right) i\diff \A \EE
&=ie^{pt}\int_{-q}^{q}e^{i\A t}\left\{ \int_{\infty}^{-\infty}e^{-i\A t}\Big( e^{-pt}f(t)\Big)\diff t \right\} \diff \A
\end{split}

ラプラス変換では $t\leq 0$ の範囲で $f(t)=0$ となる関数を用いることより、二行目への変形の過程で積分区間の下端を $-\infty$ まで拡張できます。

最後に $q\to\infty$ の極限を考えます。すると、上のフーリエの積分定理を適用できて、

\begin{split}
&ie^{pt}\int_{-\infty}^{\infty}e^{i\A t}\left\{ \int_{\infty}^{-\infty}e^{-i\A t}\Big( e^{-pt}f(t)\Big)\diff t \right\} \diff \A \EE
=\,&2\pi\cdot ie^{pt}\cdot \ff{1}{2\pi}\int_{-\infty}^{\infty}e^{i\A t}\left\{ \int_{\infty}^{-\infty}e^{-i\A t}\Big( e^{-pt}f(t)\Big)\diff t \right\} \diff \A \EE
=&\,2\pi\cdot ie^{pt}\cdot \Big( e^{-pt}f(t) \Big) \EE
=&\,2i\pi f(t)
\end{split}

ゆえに、$\DL{f(t)=\ff{1}{2i\pi}\lim_{q\to \infty}\left\{\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}F(s)\,\diff s\right\} }$ が証明できました。

ブロムウィッチ積分と留数定理

次に、ブロムウィッチ積分の具体的な計算手順について考えてみます。ブロムウィッチ積分が複素線積分であることに関連して、留数定理を用いて次の様に計算できます。

ブロムウィッチ積分と留数定理の関係

$e^{st}F(s)$ の極を $\A_1,\A_2,\cdots,\A_n$ として、その留数を $\RM{Res}(\A_i)$ とする。

このとき、ブロムウィッチ積分は次の様に計算できる。

\begin{split}
\L^{-1}[F(s)]=f(t)&=\ff{1}{2i\pi}\lim_{q\to \infty}\left\{\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}F(s)\,\diff s\right\}\EE
&=\sum_{j=1}^n\RM{Res}(\A_j) \\
\,
\end{split}

上式を示すため、ブロムウィッチ積分を段階的に留数定理が使える形に持ち込んでいきます。まず、ブロムウィッチ積分を行う積分区間を複素平面上に表示すると、図の赤線のようになります。

ブロムウィッチ積分の模式図

次に、ブロムウィッチ積分の被積分関数である $e^{st}F(s)$ の特異点について考えます。例えば、$F(s)e^{st}=\DL{\ff{e^{st}}{s^2+1}=\ff{se^{st}}{(s+i)(s-i)}}$ であったとすると、その特異点は、$\A_1=-i,\A_2=i$ となります。これを一般化すると、特異点 $\A_1,\A_2,\cdots$ をが上図のように表示できます。

ここまで来ると、後は留数定理の形に持ち込むだけです。このとき、積分経路の設定方法がポイントとなります。

すなわち、全ての特異点が直線の左側に来るように $p$ の設定を行い、そして、これらの特異点が積分経路の内側に含まれるような周回経路の設定を行うことがポイントとなります。

ブロムウィッチ積分の積分経路

このとき、$e^{st}F(s)$ の周回積分は次の様に表せます。

\begin{split}
\oint e^{st}F(s)\diff s&=\int_{\stackrel{\huge\frown}{ABC}}e^{st}F(s)\diff s+\int_{CA}e^{st}F(s)\diff s
\end{split}

さて、左辺の周回積分に留数定理が適用できることに注目すると、$\DL{ \oint e^{st}F(s)\diff s=2i\pi \sum_{j=1}^n\RM{Res}(\A_j) }$ となって、

\begin{split}
2i\pi \sum_{j=1}^n\RM{Res}(\A_j) &=\int_{\stackrel{\huge\frown}{ABC}}e^{st}F(s)\diff s+\int_{CA}e^{st}F(s)\diff s \EE
&=\int_{\stackrel{\huge\frown}{ABC}}e^{st}F(s)\diff s+\int_{p-iq}^{p+iq}e^{st}F(s)\diff s \EE
\end{split}

と整理できます。ここで、$q\to\infty$ の極限を考えると $\DL{\int_{\stackrel{\huge\frown}{ABC}}e^{st}F(s)\diff s}$ の部分が $0$ となることが証明できるので、第二項の $\DL{\lim_{q\to \infty}\left\{\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}F(s)\,\diff s\right\}}$ のみが残ります。以上をまとめると、

\begin{split}
&2i\pi \sum_{j=1}^n\RM{Res}(\A_j)=\lim_{q\to \infty}\left\{\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}F(s)\,\diff s\right\} \EE
\therefore\, &f(t)=\ff{1}{2i\pi}\lim_{q\to \infty}\left\{\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}F(s)\,\diff s\right\}=\sum_{j=1}^n\RM{Res}(\A_j)
\end{split}

このように、留数定理を用いることでブルムウィッチ積分が計算でき、そしてラプラス逆変換も求められるのです。

ブロムウィッチ積分を用いたラプラス逆変換の例題

例として、ブルムウィッチ積分により $F(s)=\DL{\ff{s}{s^2+1}}$ のラプラス逆変換を計算してみましょう。

まず、$e^{st}F(s)$ の特異点を求めます。与式は次式のように変形できるので、

\begin{split}
e^{st}F(s)=\ff{se^{st}}{s^2+1}=\ff{se^{st}}{(s+i)(s-i)}
\end{split}

極が $-i,i$ であることが分かります。また、これらの極は一位の極のため、それぞの留数を、

$$
\left\{
\begin{split}
&\RM{Res}(-i)= \lim_{s\to -i}\left\{ (s+i)e^{st}F(s) \right\}=\ff{1}{2}e^{-it}\EE
&\RM{Res}(i)= \lim_{s\to i}\left\{ (s-i)e^{st}F(s) \right\}=\ff{1}{2}e^{it}
\end{split}
\right.
$$

と求められます。この結果を用いることでブロムウィッチ積分が、

\begin{split}
&\ff{1}{2i\pi}\lim_{q\to \infty}\left\{\int_{p-iq}^{p+iq} e^{st}F(s)\,\diff s\right\} \EE
=& \RM{Res}(-i)+\RM{Res}(i) \EE
=& \ff{1}{2}\left( e^{-it}+e^{it} \right)
\end{split}

と計算でき、最後にオイラーの公式を用いると、

\begin{split}
\ff{1}{2}\left( e^{-it}+e^{it} \right)&=\ff{1}{2}\Big\{ (\cos t+i\sin t)+(\cos t-i\sin t) \Big\} \EE
&= \cos t
\end{split}

となって、見事に $\DL{ \L^{-1}\left[ \ff{s}{s^2+1} \right] =\cos t }$ と一致し、計算結果が正しいことが分かります。

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