ベクトル場 $\B{F}$ の中に置かれた閉曲線と、その閉曲線に囲まれた面について以下の関係が成立することが知られています。そして、この関係はストークスの定理と呼ばれます。
ストークスの定理は、閉曲線に沿った線積分と閉曲面内の回転(ローテーション)の面積分の結果が等しくなることを主張しています。
今回は、ストークスの定理が主張する内容とその証明について説明していきます。
ストークスの定理とは?
いきなりですが、ストークスの定理は次のように述べられる定理です。
上の説明から分かるように、ストークスの定理は、ベクトル場のローテーションと閉曲線の周回積分を結びつけるものです。
右辺は、閉曲線 $C$ の接線ベクトル $\diff \B{r}$ とベクトル場 $\B{F}$ の内積を、$C$ 周りに一周線積分したものを表します。
例えば、$\diff \B{r}=(\diff x,\diff y,\diff z)$、$\B{F}=(F_x,F_y,F_z)$ であるとき、$\B{F}\cdot \diff \B{r}=F_x\diff x+F_y\diff x+F_z\diff z$ となりますが、これを $C$ に沿って積分したものが右辺の値となります。
ストークスの定理と物理学
例えば、循環と渦度の関係や電磁誘導の法則、アンペールの法則などでストークスの定理が適用されます。
これらは、回転する流れと流速の関係や、電場と磁場の関係を記述する際に使われます。
ストークスの定理の証明
それでは、ストークスの定理の証明を行っていきます。
まずは、閉曲線 $C$ 内部の微小な面積 $\diff S$ について考えます。このとき、ベクトル場を $\B{F}$ として、$\diff S$ に対する法線ベクトルを $\B{n}$ とします。
今回は簡単のため、$C,S$ が $x-y$ 平面上にあるとして、$\B{F}$ についても $\B{F}=(F_x,F,y,0)$ であるとして証明を進めていきます。
今、$\diff S$ の各頂点を $\RM{A, B,C, D}$ とします。また、各点の座標を $\RM{A}(x-\D x, y+\D y)$, $\RM{B}(x+\D x, y+\D y)$, $\RM{C}(x+\D x, y-\D y)$, $\RM{D}(x-\D x, y-\D y)$ であるとして、各辺の中点を $G_1, G_2, G_3, G_4$ とします。
このとき、各中点に関して次の関係が得られます。
$$
\left\{
\begin{split}
\,\B{F}(G_1)=\B{F}(x,y+\D y)&=\B{F}+\ff{\del \B{F}}{\del y}\D y \EE
\,\B{F}(G_2)=\B{F}(x+\D x,y)&=\B{F}+\ff{\del \B{F}}{\del x}\D x \EE
\,\B{F}(G_3)=\B{F}(x,y-\D y)&=\B{F}-\ff{\del \B{F}}{\del y}\D y \EE
\,\B{F}(G_4)=\B{F}(x-\D x,y)&=\B{F}-\ff{\del \B{F}}{\del x}\D x
\end{split}
\right.
$$
また、$\B{i},\B{j}$ を単位ベクトルとして、$\overrightarrow{AB},\overrightarrow{BC},\overrightarrow{CD},\overrightarrow{DA}$ を、
$$
\left\{
\begin{split}
\,\overrightarrow{AB}&=2\D x\,\B{i} \\
\,\overrightarrow{BC}&=-2\D y\,\B{j} \\
\,\overrightarrow{CD}&=-2\D x\,\B{i} \\
\,\overrightarrow{DA}&=2\D y\,\B{j}
\end{split}
\right.
$$
と表せます。そのため、微小な長方形 $ABCD$ の周回積分の値を次のように計算できます。
\begin{split}
\oint_{ABCD}\B{F} \cdot \diff \B{r}\,&\NEQ\B{F}(G_1)\cdot 2\D x\,\B{i}-\B{F}(G_2)\cdot2\D y\,\B{j} \EE
&\qquad -\B{F}(G_3)\cdot 2\D x\,\B{i}+\B{F}(G_4)\cdot 2\D x\,\B{j}\\[6pt]
&= \left( \ff{\del v}{\del x}-\ff{\del u}{\del y} \right)(4\D x\D y)
\end{split}
$\diff S=4\D x\D y$ のため、$\DL{\oint_{ABCD}\B{F} \cdot \diff \B{r}=\left( \ff{\del q_y}{\del x}-\ff{\del q_x}{\del y} \right)\diff S}$ が得られます。
次に、$\RM{rot}\B{F}$ を計算すると、
\begin{split}
\RM{rot}\B{F} &= -\ff{\del F_y}{\del z}\B{i}+\ff{\del F_x}{\del z}\B{j}+\left( \ff{\del F_y}{\del x}-\ff{\del F_x}{\del y} \right)\B{k}
\end{split}
となるので、$\RM{rot}\B{F}\cdot \B{k}\,\diff S$ が次のように計算できます。
\begin{split}
\RM{rot}\B{F}\cdot \B{k}\,\diff S=\left(\ff{\del F_y}{\del x}-\ff{\del F_x}{\del y}\right)\diff S
\end{split}
先述の右辺と一致することが確認できます。また、$\B{k}$ は法線ベクトル $\B{n}$ と一致するので、$\DL{\oint_{ABCD}\B{F} \cdot \diff \B{s}=\iint_{ABCD}\B{F}\cdot \B{n}\,\diff S}$ であることを導けます。
これを $C,S$ 全体に渡って計算すると、
\begin{split}
\int_S\RM{rot}\B{F}\cdot\B{n}\,\diff S=\oint_C\B{F}\cdot\diff \B{r}
\end{split}
となります。特別な状況での証明にはなりますが、ストークスの定理を証明できました。