単位ベクトルと偏微分演算子の球座標表示|直交座標と球座標の対応

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今回は、単位ベクトルと偏微分演算子の球座標表示について考えます。

結論を示すと、これらは次のように表すことができます。

単位ベクトルの球座標表示

球座標における単位ベクトルをそれぞれ、$\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi}$ とする。

これらは、$\B{e}_x,\B{e}_y,\B{z}$ を直交座標系における単位ベクトルを用いて次のように表される。

$$
\left\{
\begin{split}
\B{e}_r&=\sin\q\cos\phi\B{e}_x+\sin\q\sin\phi\B{e}_y+\cos\q\B{e}_z\EE
\B{e}_{\q}&=\cos\q\cos\phi\B{e}_x+\cos\q\sin\phi\B{e}_y-\sin\q\B{e}_z\EE
\B{e}_{\phi}&=-\sin\phi\B{e}_x+\cos\phi\B{e}_y
\end{split}
\right.
$$

 

次に、直交座標系における偏微分演算子を球座標にて表示すると、次のようになります。

偏微分演算子の球座標表示

直交座標における偏微分演算子を $\DL{\ff{\del}{\del x},\ff{\del}{\del y},\ff{\del}{\del z}}$とし、

球座標における偏微分演算子を $\DL{\ff{\del}{\del r},\ff{\del}{\del \q},\ff{\del}{\del \phi}}$ とする。これらは次のような関係にある。

$$
\left\{
\begin{split}
\ff{\del}{\del x}&=\sin\q\cos\phi\ff{\del }{\del r}+\ff{\cos\q\cos\phi}{r}\ff{\del }{\del \q}-\ff{\sin\phi}{r\sin\q}\ff{\del }{\del \phi}\EE
\ff{\del}{\del y}&=\sin\q\sin\phi\ff{\del }{\del r}+\ff{\cos\q\sin\phi}{r}\ff{\del }{\del \q}+\ff{\cos\phi}{r\sin\q}\ff{\del }{\del \phi}\EE
\ff{\del}{\del z}&=\cos\q\ff{\del }{\del r}-\ff{\sin\q}{r}\ff{\del }{\del \q}\EE
\end{split}
\right.
$$

 

まずは、球座標における単位ベクトルの表示を導きます。

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単位ベクトルの球座標表示

まずは、球座標系における単位ベクトルの表示方法について考えます。

これを考えるに当たり、直交座標系における単位ベクトル $\B{e}_x,\B{e}_y,\B{e}_z$ を活用します。すなわち、これらの単位ベクトルを $z$ 軸周りに $\q$ 回転させ、次に $\phi$ だけ $z$ 軸を傾けたものが、球座標における単位ベクトル $ \B{e}_r,\B{e}_{\q},-\B{e}_{\phi} $ となることを利用します。

始めに、$\B{e}_x,\B{e}_y,\B{e}_z$ を $z$ 軸周りに $\q$ 回転させます。移動後のベクトル $\B{e}_x’,\B{e}_y’,\B{e}_z’$ は次のように表せます。

$$
\left\{
\begin{split}
\B{e}_x’&=\cos\q\B{e}_x+\sin\q\B{e}_y\EE
\B{e}_y’&=-\sin\q\B{e}_x+\cos\q\B{e}_y\EE
\B{e}_z’&=\B{e}_z
\end{split}
\right.
$$

次に、$z$ 軸を $\phi$ 傾けると、移動後のベクトル $\B{e}^{”}_x,\B{e}^{”}_y,\B{e}^{”}_z$ を次のように表せます。

$$
\left\{
\begin{split}
\B{e}^{”}_x&=\sin\phi\B{e}_x’+\cos\phi\B{e}_z\EE
\B{e}^{”}_y&=\B{e}_y’\EE
\B{e}^{”}_z&=-\cos\phi\B{e}_x’+\sin\phi\B{e}_z
\end{split}
\right.
$$

さて、球座標における単位ベクトル $\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi}$ は以下のような対応関係となります。

$$
\left\{
\begin{split}
\B{e}_r&=\B{e}^{”}_x\EE
\B{e}_{\q}&=\B{e}_y’\EE
\B{e}_{\phi}&=-\B{e}^{”}_z
\end{split}
\right.
$$

以上のことより、球座標における単位ベクトル $\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi}$ を、直交座標系の単位ベクトル $\B{e}_x,\B{e}_y,\B{e}_z$ により次のように表せます。

$$
\left\{
\begin{split}
\B{e}_r&=\sin\q\cos\phi\B{e}_x+\sin\q\sin\phi\B{e}_y+\cos\q\B{e}_z\EE
\B{e}_{\q}&=\cos\q\cos\phi\B{e}_x+\cos\q\sin\phi\B{e}_y-\sin\q\B{e}_z\EE
\B{e}_{\phi}&=-\sin\phi\B{e}_x+\cos\phi\B{e}_y
\end{split}
\right.
$$

以上より、球座標における単位ベクトルを導出できました。なお、これを行列とベクトルで表示すると、

$$
(\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi})
=(\B{e}_x,\B{e}_{y},\B{e}_{z})
\begin{pmatrix}
\sin\q\cos\phi & \cos\q\cos\phi & -\sin\phi \\
\sin\q\sin\phi & \cos\q\sin\phi & \cos\phi \\
\cos\q & -\sin\q & 0
\end{pmatrix}
$$

とできます。なお、両辺を入れ替えると以下のように係数行列が変化します。

$$
(\B{e}_x,\B{e}_y,\B{e}_z)
=(\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi})
\begin{pmatrix}
\sin\q\cos\phi & \sin\q\sin\phi & \cos\q \\
\cos\q\cos\phi & \cos\q\sin\phi & -\sin\q \\
-\sin\phi & \cos\phi & 0
\end{pmatrix}
$$

単位ベクトルの対応関係

直交座標における単位ベクトルを $\B{e}_x,\B{e}_y,\B{e}_z$、球座標における単位ベクトルを $\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi}$ とする。これらの単位ベクトルには次のような関係がある。

$$
(\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi})
=(\B{e}_x,\B{e}_{y},\B{e}_{z})
\begin{pmatrix}
\sin\q\cos\phi & \cos\q\cos\phi & -\sin\phi \\
\sin\q\sin\phi & \cos\q\sin\phi & \cos\phi \\
\cos\q & -\sin\q & 0
\end{pmatrix}
$$

$$
(\B{e}_x,\B{e}_y,\B{e}_z)
=(\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi})
\begin{pmatrix}
\sin\q\cos\phi & \sin\q\sin\phi & \cos\q \\
\cos\q\cos\phi & \cos\q\sin\phi & -\sin\q \\
-\sin\phi & \cos\phi & 0
\end{pmatrix}
$$

球座標の単位ベクトルの微分

球座標において、単位ベクトルの微分は $0$ 以外となることがあります。ここでは、球座標における単位ベクトルの微分の導出を行います。

例えば、$\B{e}_r$ を $\q$ で微分する場合ですが、

\begin{split}
\ff{\del \B{e}_r}{\del \q}&=\ff{\del }{\del \q}\Big(\sin\q\cos\phi\B{e}_x+\sin\q\sin\phi\B{e}_y+\cos\q\B{e}_z \Big)\EE
&=\cos\q\cos\phi\B{e}_x+\cos\q\sin\phi\B{e}_y-\sin\q\B{e}_z\EE
&=\B{e}_{\q}
\end{split}

のように計算できます。同様に計算すると、単位ベクトルを微分した結果は以下のようになります。

$$
\left\{
\begin{split}
&\ff{\del \B{e}_r}{\del r}=0\EE
&\ff{\del \B{e}_r}{\del \q}=\cos\q\cos\phi\B{e}_x+\cos\q\sin\phi\B{e}_y-\sin\q\B{e}_z=\B{e}_{\q}\EE
&\ff{\del \B{e}_r}{\del \phi}=-\sin\q\sin\phi\B{e}_x+\sin\q\cos\phi\B{e}_y=\sin\q\B{e}_{\phi}\EE
\end{split}
\right.
$$

$$
\left\{
\begin{split}
&\ff{\del \B{e}_{\q}}{\del r}=0\EE
&\ff{\del \B{e}_{\q}}{\del \q}=\!-\!\sin\q\cos\phi\B{e}_x\!-\!\sin\q\sin\phi\B{e}_y\!-\!\cos\q\B{e}_z\!=\!-\B{e}_{r}\EE
&\ff{\del \B{e}_{\q}}{\del \phi}=-\cos\q\sin\phi\B{e}_x+\cos\q\cos\phi\B{e}_y=\cos\q\B{e}_{\phi}
\end{split}
\right.
$$

$$
\left\{
\begin{split}
&\ff{\del \B{e}_{\phi}}{\del r}=0\EE
&\ff{\del \B{e}_{\phi}}{\del \q}=0\EE
&\ff{\del \B{e}_{\phi}}{\del \phi}=-\cos\phi\B{e}_x-\sin\phi\B{e}_y=-\sin\q\B{e}_r-\cos\q\B{e}_{\q}
\end{split}
\right.
$$

次に、偏微分演算子の球座標における表示について考えていきます。

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偏微分演算子の球座標表示

さて、$\DL{\ff{\del}{\del x}}$ のように、偏微分を行う対象の関数を含まない式のことを、ある種の記号と見なして、偏微分演算子と呼びます。

ここでは、直交座標系での偏微分演算子 $\DL{\ff{\del}{\del x},\ff{\del}{\del y},\ff{\del}{\del z}}$ と、球座標での偏微分演算子 $\DL{ \ff{\del}{\del r},\ff{\del}{\del \q},\ff{\del}{\del \phi} }$ の関係について考えます。

まず、直交座標(デカルト座標)と球座標の対応関係は以下のようになっています。

$$
\left\{
\begin{split}
x&=r\sin\q\cos\phi\EE
y&=r\sin\q\sin\phi\EE
z&=r\cos\q\EE
r&=\sqrt{x^2+y^2+z^2}
\end{split}
\right.
$$

偏微分演算子の対応関係

上の対応から分かるように、$x$ は $x(r,\q,\phi)$ のように三変数関数となります。そして、$r,\q,\phi$ も、$r(x,y,z)$ のように、三変数関数となります。これらを考慮すると、偏微分演算子 $\DL{\ff{\del }{\del r},\ff{\del }{\del \q},\ff{\del }{\del \phi}}$ は、連鎖律を用いて次のように表せます。

$$
\left\{
\begin{split}
\ff{\del}{\del r}&=\ff{\del x}{\del r}\ff{\del }{\del x}+\ff{\del y}{\del r}\ff{\del }{\del y}+\ff{\del z}{\del r}\ff{\del }{\del z}\EE
\ff{\del}{\del \q}&=\ff{\del x}{\del \q}\ff{\del }{\del x}+\ff{\del y}{\del \q}\ff{\del }{\del y}+\ff{\del z}{\del \q}\ff{\del }{\del z}\EE
\ff{\del}{\del \phi}&=\ff{\del x}{\del \phi}\ff{\del }{\del x}+\ff{\del y}{\del \phi}\ff{\del }{\del y}+\ff{\del z}{\del \phi}\ff{\del }{\del z}\EE
\end{split}
\right.
$$

上を計算して、行列の形に整理すると、以下のようになります。

$$
\begin{pmatrix}
\ff{\del}{\del r} \\
\ff{\del}{\del \q} \\
\ff{\del}{\del \phi}
\end{pmatrix} =
\begin{pmatrix}
\sin\q\cos\phi & \sin\q\sin\phi & \cos\q \\
r\cos\q\cos\phi & r\cos\q\sin\phi & -r\sin\q \\
-r\sin\q\sin\phi & r\sin\q\cos\phi & 0
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\ff{\del}{\del x} \\
\ff{\del}{\del y} \\
\ff{\del}{\del z}
\end{pmatrix}
$$

係数行列の逆行列を計算すると、上式を次のように書き換えることができます。

$$
\begin{pmatrix}
\ff{\del}{\del x} \\
\ff{\del}{\del y} \\
\ff{\del}{\del z}
\end{pmatrix} =
\begin{pmatrix}
\sin\q\cos\phi & \ff{\cos\q\cos\phi}{r} & -\ff{\sin\phi}{r\sin\q} \\
\sin\q\sin\phi & \ff{\cos\q\sin\phi}{r} & \ff{\cos\phi}{r\sin\q} \\
\cos\q & -\ff{\sin\q}{r} & 0
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\ff{\del}{\del r} \\
\ff{\del}{\del \q} \\
\ff{\del}{\del \phi}
\end{pmatrix}
$$

これを書き下すと、直交座標の偏微分演算子を球座標の微分演算子で表した結果を得られます。

$$
\left\{
\begin{split}
\ff{\del}{\del x}&=\sin\q\cos\phi\ff{\del }{\del r}+\ff{\cos\q\cos\phi}{r}\ff{\del }{\del \q}-\ff{\sin\phi}{r\sin\q}\ff{\del }{\del \phi}\EE
\ff{\del}{\del y}&=\sin\q\sin\phi\ff{\del }{\del r}+\ff{\cos\q\sin\phi}{r}\ff{\del }{\del \q}+\ff{\cos\phi}{r\sin\q}\ff{\del }{\del \phi}\EE
\ff{\del}{\del z}&=\cos\q\ff{\del }{\del r}-\ff{\sin\q}{r}\ff{\del }{\del \q}\EE
\end{split}
\right.
$$

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