勾配・発散・回転の球座標表示の導出|ベクトル微分演算子の球座標表示とは?

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今回は、勾配(グラディエント)発散(ダイバージェンス)回転(ローテーション)の球座標表示を導出していきます。

結論から示すと、これらは次のように表せます。まず、勾配 $\RM{grad}$ の球座標表示は以下のようになります。

勾配(グラディエント)の球座標表示

$f$ をスカラー関数、$\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi}$ を球座標における単位ベクトルとする。

このとき、$\RM{grad} f$ は次のように表される。

\begin{split}
\RM{grad}f=\nabla f&=\B{e}_r\ff{\del f}{\del r}+\B{e}_{\q}\ff{1}{r}\ff{\del f}{\del \q}+\B{e}_{\phi}\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del f}{\del \phi}\\
\,
\end{split}

次に、発散 $\RM{div}$ の球座標表示は次のように表せます。

発散(ダイバージェンス)の球座標表示

$\B{A}=(A_r,A_{\q},A_{\phi})$ をベクトル関数、$\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi}$ を球座標における単位ベクトルとする。

このとき、$\RM{div} \B{A}$ は次のように表される。

\begin{split}
\RM{div}\B{A}=\ff{1}{r^2}\ff{\del}{\del r}(r^2A_r)+\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del}{\del \q}(\sin\q A_{\q})+\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del A_{\phi}}{\del \phi}\\
\,
\end{split}

最後に、回転 $\RM{rot}$ の球座標表示は次のように表せます。

回転(ローテーション)の球座標表示

$\B{A}=(A_r,A_{\q},A_{\phi})$ をベクトル関数、$\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi}$ を球座標における単位ベクトルとする。

このとき、$\RM{rot} \B{A}$ は次のように表される。

\begin{split}
\RM{rot}\B{A}&=\ff{1}{r\sin\q}\left( \ff{\del }{\del \q}(\sin\q A_{\phi})-\ff{\del A_{\q}}{\del \phi} \right)\B{e}_r+\ff{1}{r}\left( \ff{1}{\sin\q}\ff{\del A_r}{\del \phi}-\ff{\del }{\del r}(rA_{\phi}) \right)\B{e}_{\q}+\ff{1}{r}\left( \ff{\del}{\del r}(rA_{\q})-\ff{\del A_r}{\del \q} \right)\B{e}_{\phi}\\
\,
\end{split}

これらを導出する準備として、最初にベクトル微分演算子のナブラ $\nabla$ の球座標表示を導出していきます。

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ナブラの球座標表示の導出

さて、直交座標における単位ベクトルを $\B{e}_x,\B{e}_y,\B{e}_z$ として、ベクトル微分演算子の $\nabla$(ナブラ)は、偏微分演算子内積として次のように表せます。

\begin{split}
\nabla&=\B{e}_x\ff{\del}{\del x}+\B{e}_y\ff{\del}{\del y}+\B{e}_z\ff{\del}{\del z} \EE
&=(\B{e}_x,\B{e}_y,\B{e}_z)\cdot\left( \ff{\del}{\del x},\ff{\del}{\del y},\ff{\del}{\del z} \right)^T
\end{split}

とこで、こちらで計算した結果によると、球座標における単位ベクトル $\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi}$ は、直交座標における単位ベクトル $\B{e}_x,\B{e}_{y},\B{e}_{z}$ は次のような関係がありました。

$$
(\B{e}_x,\B{e}_y,\B{e}_z)
=(\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi})
\begin{pmatrix}
\sin\q\cos\phi & \sin\q\sin\phi & \cos\q \\
\cos\q\cos\phi & \cos\q\sin\phi & -\sin\q \\
-\sin\phi & \cos\phi & 0
\end{pmatrix}
$$

また、直交座標と球座標の偏微分演算子の対応についても、こちらで計算しており、次のような対応関係がありました。

$$
\begin{pmatrix}
\ff{\del}{\del x} \\
\ff{\del}{\del y} \\
\ff{\del}{\del z}
\end{pmatrix} =
\begin{pmatrix}
\sin\q\cos\phi & \ff{\cos\q\cos\phi}{r} & -\ff{\sin\phi}{r\sin\q} \\
\sin\q\sin\phi & \ff{\cos\q\sin\phi}{r} & \ff{\cos\phi}{r\sin\q} \\
\cos\q & -\ff{\sin\q}{r} & 0
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\ff{\del}{\del r} \\
\ff{\del}{\del \q} \\
\ff{\del}{\del \phi}
\end{pmatrix}
$$

これらを最初の式に適用すると、以下のようになって、ナブラの球座標表示が得られます。

\begin{split}
\nabla&=(\B{e}_x,\B{e}_y,\B{e}_z)\cdot\left( \ff{\del}{\del x},\ff{\del}{\del y},\ff{\del}{\del z} \right)^T\EE
&=\B{e}_r\ff{\del}{\del r}+\B{e}_{\q}\ff{1}{r}\ff{\del}{\del \q}+\B{e}_{\phi}\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del}{\del \phi}
\end{split}

ナブラの球座標表示

球座標における単位ベクトルを $\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi}$ として、ナブラ $\nabla$ の球座標表示は次のように表される。

\begin{split}
\nabla&=\B{e}_r\ff{\del}{\del r}+\B{e}_{\q}\ff{1}{r}\ff{\del}{\del \q}+\B{e}_{\phi}\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del}{\del \phi}\\
\,
\end{split}

以上より、球座標におけるナブラの表示が得られました。

グラディエントの球座標表示

上の結果から、球座標におけるグラディエントが以下のように求められます。

\begin{split}
\RM{grad}f=\nabla f&=\B{e}_r\ff{\del f}{\del r}+\B{e}_{\q}\ff{1}{r}\ff{\del f}{\del \q}+\B{e}_{\phi}\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del f}{\del \phi}
\end{split}

勾配(グラディエント)の球座標表示

$f$ をスカラー関数、$\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi}$ を球座標における単位ベクトルとする。

このとき、$\RM{grad} f$ は次のように表される。

\begin{split}
\RM{grad}f=\nabla f&=\B{e}_r\ff{\del f}{\del r}+\B{e}_{\q}\ff{1}{r}\ff{\del f}{\del \q}+\B{e}_{\phi}\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del f}{\del \phi}\\
\,
\end{split}

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ダイバージェンスの球座標表示

ここでは、ダイバージェンスの球座標表示について導出していきます。まず、ダイバージェンスは、

\begin{split}
\RM{div}\B{A}=\nabla\cdot \B{A}
\end{split}

と定義され、ベクトル関数 $\B{A}$ を $\B{A}=(A_r,A_{\q},A_{\phi})$ とすると、

\begin{split}
\RM{div}\B{A}&=\B{e}_r\cdot\ff{\del}{\del r}(A_r\B{e}_r+A_{\q}\B{e}_{\q}+A_{\phi}\B{e}_{\phi})\EE
&\quad+\B{e}_{\q}\cdot\ff{1}{r}\ff{\del}{\del \q}(A_r\B{e}_r+A_{\q}\B{e}_{\q}+A_{\phi}\B{e}_{\phi})\EE
&\quad+\B{e}_{\phi}\cdot\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del}{\del \phi}(A_r\B{e}_r+A_{\q}\B{e}_{\q}+A_{\phi}\B{e}_{\phi})\EE
\end{split}

と表示できます。

このとき、球座標における単位ベクトルの微分に気を付けて計算すると、以下のようにダイバージェンスの球座標表示が得られます。

\begin{split}
\RM{div}\B{A}&=\ff{\del A_r}{\del r}\B{e}_r\cdot\B{e}_r+\ff{1}{r}\left(A_r\B{e}_{\q}\cdot\B{e}_{\q}+\B{e}_{\q}\cdot\B{e}_{\q}\ff{\del A_{\q}}{\del \q} \right)\EE
&\quad+\ff{1}{r\sin\q}\left( \sin\q A_r\B{e}_{\phi}\cdot\B{e}_{\phi}+\cos\q A_{\q}\B{e}_{\phi}\cdot\B{e}_{\phi}+\B{e}_{\phi}\cdot\B{e}_{\phi}\ff{\del A_{\phi}}{\del \phi} \right)\EE
&=\ff{\del A_r}{\del r}+\ff{2A_r}{r}+\ff{1}{r}\ff{\del A_{\q}}{\del \q}+\ff{\cos\q}{r\sin\q}A_{\q}+\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del A_{\phi}}{\del \phi} \EE
&=\ff{1}{r^2}\ff{\del}{\del r}(r^2A_r)+\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del}{\del \q}(\sin\q A_{\q})+\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del A_{\phi}}{\del \phi}
\end{split}

発散(ダイバージェンス)の球座標表示

$\B{A}=(A_r,A_{\q},A_{\phi})$ をベクトル関数、$\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi}$ を球座標における単位ベクトルとする。

このとき、$\RM{div} \B{A}$ は次のように表される。

\begin{split}
\RM{div}\B{A}=\ff{1}{r^2}\ff{\del}{\del r}(r^2A_r)+\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del}{\del \q}(\sin\q A_{\q})+\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del A_{\phi}}{\del \phi}\\
\,
\end{split}

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ローテーションの球座標表示

最後にローテーションの球座標表示を導出します。

まず、ローテーションは、ベクトル関数を $\B{A}$ として次のように定義されます。

\begin{split}
\RM{rot}\B{A}=\nabla\times \B{A}
\end{split}

これに、 ここで、$\B{A}=(A_r,A_{\q},A_{\phi})$ と置き、先程導出したナブラの球座標表示を適用すると、以下のように変形できます。

\begin{split}
\nabla\times \B{A}=
\begin{vmatrix}
\B{e}_r & \B{e}_{\q} & \B{e}_{\phi} \\
\ff{\del}{\del r} & \ff{1}{r}\ff{\del}{\del \q} & \ff{1}{r\sin\q}\ff{\del}{\del \phi}\\
A_r & A_{\q} & A_{\phi}
\end{vmatrix}
\end{split}

これを具体的に計算すると、

\begin{split}
\nabla\times \B{A}&=\left( \ff{1}{r}\ff{\del }{\del \q}(A_{\phi}\B{e}_r)-\ff{1}{r\sin\q}\ff{\del }{\del \phi}(A_{\q}\B{e}_r) \right)\EE
&\quad+\left( \ff{1}{r\sin\q}\ff{\del }{\del \phi}(A_{r}\B{e}_{\q})-\ff{\del }{\del r}(A_{\phi}\B{e}_{r}) \right)\EE
&\quad+\left( \ff{\del }{\del r}(A_{\q}\B{e}_{\phi})-\ff{1}{r}\ff{\del }{\del \q}(A_{r}\B{e}_{\phi}) \right)\EE
&=\left(\ff{\B{e}_r}{r}\ff{\del A_{\phi}}{\del \q}+\ff{A_{\phi}}{r}\B{e}_{\q}-\ff{\B{e}_r}{r\sin\q}\ff{\del A_{\q}}{\del \phi}-\ff{A_{\q}}{r}\B{e}_{\phi} \right)\EE
&\quad+\left( \ff{\B{e}_{\q}}{r\sin\q}\ff{\del A_r}{\del \phi}+\ff{A_r\cos\q}{r\sin\q}\B{e}_{\phi}-\ff{\del A_{\phi}}{\del r}\B{e}_{r} \right)\EE
&\quad+\left( \ff{\del A_{\q}}{\del r}\B{e}_{\phi}-\ff{1}{r}\ff{\del A_{r}}{\del \q}\B{e}_{\phi}\right)\EE
&=\ff{1}{r\sin\q}\left( \ff{\del }{\del \q}(\sin\q A_{\phi})-\ff{\del A_{\q}}{\del \phi} \right)\B{e}_r\EE
&\quad+\ff{1}{r}\left( \ff{1}{\sin\q}\ff{\del A_r}{\del \phi}-\ff{\del }{\del r}(rA_{\phi}) \right)\B{e}_{\q}\EE
&\quad+\ff{1}{r}\left( \ff{\del}{\del r}(rA_{\q})-\ff{\del A_r}{\del \q} \right)\B{e}_{\phi}
\end{split}

とできます。これより、ローテーションの球座標表示が得られます。

回転(ローテーション)の球座標表示

$\B{A}=(A_r,A_{\q},A_{\phi})$ をベクトル関数、$\B{e}_r,\B{e}_{\q},\B{e}_{\phi}$ を球座標における単位ベクトルとする。

このとき、$\RM{rot} \B{A}$ は次のように表される。

\begin{split}
\RM{rot}\B{A}&=\ff{1}{r\sin\q}\left( \ff{\del }{\del \q}(\sin\q A_{\phi})-\ff{\del A_{\q}}{\del \phi} \right)\B{e}_r+\ff{1}{r}\left( \ff{1}{\sin\q}\ff{\del A_r}{\del \phi}-\ff{\del }{\del r}(rA_{\phi}) \right)\B{e}_{\q}+\ff{1}{r}\left( \ff{\del}{\del r}(rA_{\q})-\ff{\del A_r}{\del \q} \right)\B{e}_{\phi}\\
\,
\end{split}

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