ケプラーの法則から言えるように、天体力学で扱う天体の軌道は基本的には楕円・放物線・双曲線の二次曲線となります。
今回は天体力学の基礎となる二次曲線を、極方程式で表すことを考えます。結論を示すと、二次曲線は半長径と離心率を用いて次のように表せます。
まずは、楕円の極方程式の導出について考えていきます。
楕円の極方程式と離心率の関係
始めに、楕円の極方程式と離心率の関係について考えていきます。
さて、楕円の長軸を $2a$、短軸を $2b$ とすると、直交座標(デカルト座標)での楕円の方程式は次のように表せました。
\begin{split}
\ff{x^2}{a^2}+\ff{y^2}{b^2}=1
\end{split}
ここで、$\RM{F}$ を焦点としてその座標を $(c,0)$ と置きます。そして、$\RM{F}$ を原点とする極座標 $(r,\nu)$ による表示を考えます。
すると、図から $x,y$ の対応関係を
$$
\left\{
\begin{split}
x&=c+r\cos\nu \EE
y&=c+r\sin\nu
\end{split}
\right.
$$
とできます。これを上式に適用して、
\begin{split}
\ff{(c+r\cos\nu)^2}{a^2}+\ff{(c+r\sin\nu)^2}{b^2}=1
\end{split}
整理すると、
\begin{split}
r&=\ff{a^2-c^2}{a+c\cos\nu}\EE
&=\ff{a\left(1-\ff{c^2}{a^2}\right)}{1+\ff{c}{a}\cos\nu}
\end{split}
と楕円の極方程式が得られます。これの係数を軌道方程式と比較すると、離心率 $e$ や半直弦 $p$ を以下のように表示できることが分かります。
$$
\left\{
\begin{split}
e&=\ff{c}{a} \EE
p&=a(1-e^2)
\end{split}
\right.
$$
これより、軌道方程式は離心率を用いて
\begin{split}
r=\ff{a(1-e^2)}{1+e\cos\nu}
\end{split}
と表せることが分かりました。この結果は天体力学で重宝されます。
放物線の極方程式と離心率の関係
次に、放物線の極方程式と離心率の関係について考えていきます。
放物線の焦点 $\RM{F}$ が $(q,0)$ の位置にあり、これと原点対称の位置 $(-q,0)$ を通って $y$ 軸に平行な直線のことを準線と呼びます。
このとき、直交座標(デカルト座標)での放物線の方程式を以下のように表せます。
\begin{split}
y^2=4qx
\end{split}
ここで、$\RM{F}$ を原点とする極座標 $(r,\nu)$ による放物線の表示を考えます。ます、図から $x,y$ の対応関係を
$$
\left\{
\begin{split}
x&=q+r\cos(\pi-\nu)=q-r\cos\nu \EE
y&=r\sin\nu
\end{split}
\right.
$$
とできます。放物線の極方程式を導く際は、$\RM{FP}$ と準線から $\RM{P}$ までの距離が等しくなることを利用すると極方程式が簡単に得られます。すなわち、
\begin{split}
r=q+(q-r\cos\nu)
\end{split}
が成立し、これを $r$ について整理すると、
\begin{split}
r=\ff{2q}{1+\cos\nu}
\end{split}
となって、放物線の極方程式が得られます。
双曲線の極方程式と離心率の関係
最後に双曲線の極方程式と離心率の関係について考えていきます。
ここで、双曲線の焦点の座標を $\RM{F}(c,0)$ として、双曲線と $x$ 軸との交点を $a$ とします。ここで、$b=\sqrt{c^2-a^2}$ とすると、直交座標(デカルト座標)での双曲線の方程式を以下のように表せました。
\begin{split}
\ff{x^2}{a^2}-\ff{y^2}{b^2}=1
\end{split}
そして、$\RM{F}$ を原点とする極座標 $(r,\nu)$ による表示を考えます。
すると、図より $x,y$ の対応関係が
$$
\left\{
\begin{split}
x&=c+r\cos(\pi-\nu)=c-r\cos\nu \EE
y&=c\sin\nu
\end{split}
\right.
$$
となり、上式に適用すると、
\begin{split}
\ff{(c-r\cos\nu)^2}{a^2}-\ff{r^2\sin^2\nu}{b^2}=1
\end{split}
整理すると、
\begin{split}
r&=\ff{c^2-a^2}{-a+c\cos\nu}\EE
&=\ff{a\left(1-\ff{c^2}{a^2}\right)}{1-\ff{c}{a}\cos\nu}
\end{split}
となります。楕円と同様、これの係数を軌道方程式と比較すると、離心率 $e$ や半直弦 $p$ を以下のように表示できることが分かります。
$$
\left\{
\begin{split}
e&=-\ff{c}{a} \EE
p&=a(1-e^2)
\end{split}
\right.
$$
これより、軌道方程式は離心率を用いて
\begin{split}
r=\ff{a(1-e^2)}{1+e\cos\nu}
\end{split}
と表せることが分かりました。
ところで、漸近線の角度を $\rho$ とすると、動径の角度は $\pi-\rho$ となり、さらに、$r\to\infty$ となることなりますが、これは軌道方程式において分母が $0$ となることに相当します。
ゆえに、
\begin{split}
0&=1+e\cos(\pi-\rho)\EE
&\therefore\,\cos\rho=\ff{1}{e}
\end{split}
という関係が成立します。