ライプニッツの定理とは?|積の微分法則の一般化とその証明

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今回は、積の微分法則を一般化したライプニッツの定理について説明します。

ライプニッツの定理

$x$ の関数 $f,g$ について $n$ 回微分が可能ならば、これらの積の $n$ 階微分について以下が成立する。

\begin{split}
(fg)^{(n)}=\sum_{r=0}^n {}_n\RM{C}_r\,f^{(n-r)}g^{(r)}
\end{split}

ただし、$n$ の階乗を $n!$ として、

\begin{split}
{}_n\RM{C}_0=1,\,\, {}_n\RM{C}_r=\ff{n!}{r!(n-r)!}
\end{split}

とする。

ライプニッツの定理を証明する準備として、積の関数の微分について改めて考えてみます。

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積の関数の $n$ 次導関数の計算

まずは、$f,g$ を $x$ の関数として、これらの関数の積 $fg$ の微分について考えてみます。具体的には、$1\sim4$ 階微分までを計算すると、次のようになります。なお、$f^{(n)}$ は $f$ の $n$ 階微分を表しているとします。

$$
\left\{
\begin{split}
&(fg)^{(1)}=f^{(1)}g^{(0)}+f^{(0)}g^{(1)} \EE
&(fg)^{(2)}=f^{(2)}g^{(0)}+2f^{(1)}g^{(1)}+f^{(0)}g^{(2)} \EE
&(fg)^{(3)}=f^{(3)}g^{(0)}+3f^{(2)}g^{(1)}+3f^{(1)}g^{(2)}+f^{(0)}g^{(3)} \EE
&(fg)^{(4)}=f^{(4)}g^{(0)}+4f^{(3)}g^{(1)}+6f^{(2)}g^{(2)}+4f^{(1)}g^{(3)}+f^{(0)}g^{(4)} \EE
\end{split}
\right.
$$

ところで、$a+b,$ $(a+b)^2,$ $(a+b)^3,$ $(a+b)^4$ の展開式を考えてみましょう。二項定理を使いつつ効率的に計算すると、

$$
\left\{
\begin{eqnarray}
a+b&=&a+b \EE
(a+b)^2&=&a^2+2ab+b^2 \EE
(a+b)^3&=&a^3+3a^2b+3ab^2+b^3 \EE
(a+b)^4&=&{}_4\RM{C}_0a^4b^0+{}_4\RM{C}_1a^3b^1+{}_4\RM{C}_2a^2b^2+{}_4\RM{C}_3a^1b^3+{}_4\RM{C}_4a^0b^4\EE
&=&a^4+4a^3b+6a^2b^2+3ab^3+b^4
\end{eqnarray}
\right.
$$

となりますが、これらの係数は上述の微分の係数の並びと同じになっていることが分かります。

これは偶然の一致では無く、数学的に証明ができます。この定理こそ、冒頭で説明したライプニッツの定理となります。

ライプニッツの定理の証明

さて、ライプニッツの定理は次のように述べられます。

ライプニッツの定理

$x$ の関数 $f,g$ が $n$ 回微分可能ならば、これらの積 $fg$ の $n$ 階微分について以下が成立する。

\begin{split}
(fg)^{(n)}=\sum_{r=0}^n {}_n\RM{C}_r\,f^{(n-r)}g^{(r)}
\end{split}

ただし、$n$ の階乗を $n!$ として、

\begin{split}
{}_n\RM{C}_0=1,\,\, {}_n\RM{C}_r=\ff{n!}{r!(n-r)!}
\end{split}

とする。

証明は数学的帰納法を用いて行うこととします。まず、$n=1$ の場合については、積の微分公式より成立することは明らかです。

次に、$n=k$ にてライプニッツの定理が成立すると仮定すると、

\begin{split}
(fg)^{(k)}=\sum_{r=0}^k {}_k\RM{C}_r\,f^{(k-r)}g^{(r)}
\end{split}

が成立します。ここで、$n=k+1$ の場合について考えていきます。さて、$(fg)^{(k+1)}$ は $(fg)^{(k)}$ を微分したものであることに留意すると、

\begin{split}
(fg)^{(k+1)}&=\big( (fg)^{(k)} \big)’\EE
&=\left( \sum_{r=0}^k {}_k\RM{C}_r\,f^{(k-r)}g^{(r)} \right)’\EE
&=\sum_{r=0}^k {}_k\RM{C}_r\,f^{(k-r+1)}g^{(r)}+\sum_{r=0}^k {}_k\RM{C}_r\,f^{(k-r)}g^{(r+1)}\EE
&=\sum_{r=0}^k {}_k\RM{C}_r\,f^{(k-r+1)}g^{(r)}+\sum_{r=1}^{k+1} {}_k\RM{C}_{r-1}\,f^{(k-r+1)}g^{(r)}\EE
\end{split}

と書くことができます。上式はさらに変形でき、

\begin{split}
&{}_k\RM{C}_0f^{(k+1)}g +\sum_{r=1}^k \left( {}_k\RM{C}_r+{}_k\RM{C}_{r-1} \right)\,f^{(k-r+1)}g^{(r)}+{}_k\RM{C}_kf^{(0)}g^{(k+1)}
\end{split}

とできます。ここで、第二項の中に登場する ${}_k\RM{C}_r+{}_k\RM{C}_{r-1}$ を計算してみると次のような関係が導けます。

\begin{split}
{}_k\RM{C}_r+{}_k\RM{C}_{r-1}&=\ff{k!}{r!(k-r)!}+\ff{k!}{(r-1)!(k-r+1)!}\EE
&=\ff{k!}{(r-1)!(k-r)!}\left(\ff{1}{r}+\ff{1}{k-r+1} \right)\EE
&=\ff{(k+1)!}{r!(k-r+1)!}={}_{k+1}\RM{C}_r
\end{split}

これを適用しつつ、上式をさらに変形すると、

\begin{split}
&{}_{k+1}\RM{C}_0f^{(k+1)}g +\sum_{r=1}^k {}_{k+1}\RM{C}_r\,f^{(k-r+1)}g^{(r)}+{}_{k+1}\RM{C}_{k+1}f^{(0)}g^{(k+1)}\EE
=&\sum_{r=0}^{k+1}{}_{k+1}\RM{C}_{r}\,f^{(k-r+1)}g^{(r)}
\end{split}

以上より、

\begin{split}
(fg)^{(k+1)}&=\sum_{r=0}^{k+1}{}_{k+1}\RM{C}_{r}\,f^{(k-r+1)}g^{(r)}
\end{split}

となって $n=k+1$ のときも成立することが分かります。以上より、数学的帰納法から全ての自然数 $n$ に対してライプニッツの定理が正しいことが示されました。

ライプニッツの定理の例題

実際にライプニッツの定理を用いて積の関数の微分を考えてみます。

例題$1$)$e^x\log x$ の $5$ 階微分を計算せよ。

まず、$f=e^x,g=\log x$ とします。ライプニッツの定理を使うために、$f$ と $g$ の $5$ 階微分までを計算する必要があります。

$f$ については微分しても結果が変わらないので、$g$ の微分について考えれば良いことが分かります。今回は $g$ の $5$ 階微分までを計算すれば良く、以下のように計算できます。

$$
\left\{
\begin{split}
&g^{(1)}=\ff{1}{x}\EE
&g^{(2)}=-\ff{1}{x^2}\EE
&g^{(3)}=\ff{2}{x^3}\EE
&g^{(4)}=-\ff{6}{x^4}\EE
&g^{(5)}=\ff{24}{x^5}\EE
\end{split}
\right.
$$

これより、ライプニッツの定理を用いると、$5$ 階微分が次のように求められます。

\begin{split}
(fg)^{(5)}&=\sum_{r=0}^5 {}_5\RM{C}_r\,f^{(5-r)}g^{(r)}\EE
&={}_5\RM{C}_0 f^{(5)}g^{(0)}+{}_5\RM{C}_1 f^{(4)}g^{(1)}+{}_5\RM{C}_2 f^{(3)}g^{(2)}\EE
&\qquad+{}_5\RM{C}_3 f^{(2)}g^{(3)}+{}_5\RM{C}_4 f^{(1)}g^{(4)}+{}_5\RM{C}_5 f^{(0)}g^{(5)}\EE
&=e^x\log x+\ff{5e^x}{x}-\ff{10e^x}{x^2}+\ff{20e^x}{x^3}-\ff{30e^x}{x^4}+\ff{24e^x}{x^5}
\end{split}

例題$2$)$\DL{\ff{e^x}{a+x}}$ の $n$ 階微分を計算せよ。ただし、$a\neq -x$

先程と同様に、$f=e^x,g=\DL{\ff{1}{a+x}}$ とします。このとき、$f$ は微分しても変わらないので、$g$ の微分のみ考えればよいことが分かります。

$g=(a+x)^{-1}$ ともできることに注意すると、$4$ 階微分までを次のように計算できます。

$$
\left\{
\begin{split}
&g^{(1)}=-(a+x)^{-2}=-\ff{1}{(a+x)^2}\EE
&g^{(2)}=2(a+x)^{-3}=\ff{2}{(a+x)^3}\EE
&g^{(3)}=-6(a+x)^{-4}=-\ff{6}{(a+x)^4}\EE
&g^{(4)}=24(a+x)^{-5}=\ff{24}{(a+x)^5}\EE
\end{split}
\right.
$$

この結果から、$g^{(n)}=\DL{\ff{(-1)^nn!}{(a+x)^{(n+1)}}}$ と予想できます。これを数学的帰納法を用いて証明していきます。

まず、$n=1$ にて予想が成立することは明らかです。次に、$n=k$ にて予想が成立すると仮定して、$n=k+1$ の場合について計算してみると、

\begin{split}
g^{(k+1)}&=\left( g^{(k)}\right)’\EE
&=\left( \ff{(-1)^k\,k!}{(a+x)^{(k+1)}} \right)’ \EE
&=(-1)^k\,k!\left( \ff{1}{(a+x)^{(k+1)}} \right)’ \EE
&=(-1)^k\,k!\cdot -(k+1)\ff{1}{(a+x)^{(k+2)}} \EE
&=\ff{(-1)^{k+1}(k+1)!}{(a+x)^{(k+2)}}
\end{split}

これより、最初の仮定が真であることが分かります。

これらのことを用いると、ライプニッツの定理より $\DL{\ff{e^x}{a+x}}$ の $n$ 階微分が次のように計算できます。

\begin{split}
\left( \ff{e^x}{a+x}\right)^{(n)}&=(fg)^{(n)}\EE
&=\sum_{r=0}^n {}_n\RM{C}_r\,f^{(n-r)}g^{(r)}\EE
&=e^x \sum_{r=0}^n \ff{(-1)^rr!\,n!}{r!(n-r)!(a+x)^{(r+1)}}
\end{split}

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