ロドリゲスの回転公式とは?|ベクトルの回転公式の導出

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以前、回転を行列を用いて表現し、これにより回転行列を導きました。今回はベクトルを用いて回転を表現する方法を考えます。結論から示すと、以下のようなロドリゲスの回転公式が成立します。

ロドリゲスの回転公式

回転軸 $l$ と平行な単位ベクトルを $\B{l}$ として、$l$ 周りにベクトル $\B{a}$ を $\Omega$ 回転させたとする。このとき、回転後のベクトル $\B{a}’$ はロドリゲスの回転公式より以下のように記述される。

\begin{eqnarray}
\B{a}’&=&\cos\Omega\,\B{a}+(\B{a}\cdot\B{l})(1-\cos\Omega)\B{l}+\sin\Omega(\B{l}\times \B{a})\\
\,
\end{eqnarray}

ベクトルの軸周りの回転

ロドリゲスの回転公式を導く準備として、ベクトルを軸回りに回転させた場合の幾何学的関係について考えていきましょう。

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ベクトルの軸周りの回転

図のように、軸回りにベクトルを回転させる状況について考えます。今、原点 $O$ を始点とするベクトル $\B{a}$ を回転軸 $l$ 周りに、$\Omega$ 回転させたとします。このとき、回転後のベクトルを $\B{a}’$、回転軸方向の単位ベクトルを $\B{l}$ とします。

今、$\B{a},\B{a}’$ の終点をそれぞれ $P,P’$ として、$P$ または $P’$ から回転軸に下ろした垂線の足を $Q$、$P’$ から線分 $QP$ に下ろした垂線の足を $H$ とします。

ベクトルの軸周りの回転

ここでは、回転後のベクトル $\B{a}’$ が以下のようにベクトル分解できることに注目します。

\begin{eqnarray}
\B{a}=\overrightarrow{OP’}=\overrightarrow{OQ}+\overrightarrow{QH}+\overrightarrow{HP’}\tag{1}
\end{eqnarray}

なお、右辺の三つのベクトルを具体的に求めることにより、ロドリゲスの回転公式が導けます。

まず、$\overrightarrow{OQ}$ については、回転軸と $\B{a}$ の成す角を $\q$ として、

\begin{eqnarray}
\overrightarrow{OQ}=(\B{a}\cdot\B{l})\B{l}\tag{2}
\end{eqnarray}

とできます。次に $\overrightarrow{QP}$ については、

\begin{split}
\overrightarrow{QP}&=\overrightarrow{OP}-\overrightarrow{OQ}\EE
&=\B{a}-(\B{a}\cdot\B{l})\B{l}
\end{split}

とできます。このようにして $\overrightarrow{QH}$ と $\overrightarrow{HP’}$ を導いていきます。次節では、$\overrightarrow{QH}$ と $\overrightarrow{QP’}$ を求め、ロドリゲスの回転公式を導きます。

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ロドリゲスの回転公式の導出

$\overrightarrow{QH}$ を導くステップとして、$\overrightarrow{QH}$ の長さ $|\overrightarrow{QH}|$ が $\overrightarrow{QP’}$ と $\overrightarrow{QP}$ と平行な単位ベクトル内積で表されることを用います。すなわち、

\begin{split}
|\overrightarrow{QH}|=\overrightarrow{QP’}\cdot \ff{\overrightarrow{QP}}{|\overrightarrow{QP}|}
\end{split}

これを用いると $\overrightarrow{QH}$ を次のように計算できます。なお、軸回りの回転角度を $\Omega$ とします。

\begin{split}
\overrightarrow{QH}&=|\overrightarrow{QH}|\ff{\overrightarrow{QP}}{|\overrightarrow{QP}|}\EE
&=\left( \overrightarrow{QP’}\cdot \ff{\overrightarrow{QP}}{|\overrightarrow{QP}|} \right)\ff{\overrightarrow{QP}}{|\overrightarrow{QP}|} \EE
&=\ff{\overrightarrow{QP’}\cdot \overrightarrow{QP}}{|\overrightarrow{QP}|^2}\,\overrightarrow{QP} \EE
&=\ff{|\overrightarrow{QP}|^2\cos \Omega}{|\overrightarrow{QP}|^2}\,\overrightarrow{QP} \EE
&=\cos\Omega\Big(\B{a}-(\B{a}\cdot\B{l}\Big)\B{l})
\end{split}

これを整理すると、

\begin{eqnarray}
\overrightarrow{QH}&=\big\{ \B{a}-(\B{a}\cdot\B{l})\B{l}\big\} \cos\Omega \tag{3}
\end{eqnarray}

と求められます。

次に、$\overrightarrow{HP’}$ を求めていきます。このとき、$\overrightarrow{HP’}$ の長さは図より、$|\overrightarrow{HP’}|=|\overrightarrow{QP’}|\sin\Omega$ と表せ、今 $|\overrightarrow{QP’}|=|\overrightarrow{QP}|$ であるので、

\begin{eqnarray}
|\overrightarrow{HP’}|=|\overrightarrow{QP’}|\sin\Omega=|\overrightarrow{QP}|\sin\Omega
\end{eqnarray}

とできます。また、$|\B{l}\times \B{a}|=|\B{a}|\sin\q=|\overrightarrow{QP}|$ の関係にあり、そして、$\overrightarrow{HP’}$ の向きが外積 $\B{l}\times \B{a}$ の方向と一致していることに注目します。すると、

\begin{eqnarray}
\overrightarrow{HP’}&=&|\overrightarrow{QP’}|\sin\Omega\ff{\B{l}\times \B{a}}{|\B{l}\times \B{a}|} \EE
&=&|\overrightarrow{QP}|\sin\Omega\ff{\B{l}\times \B{a}}{|\B{l}\times \B{a}|}\EE
&=&(\B{l}\times \B{a})\sin\Omega\,\,(\because|\B{l}\times \B{a}|=|\overrightarrow{QP}|)\tag{4}
\end{eqnarray}

と求められます。

以上、ここまでで得られた計算結果を式$(1)$に戻すと、$\B{a}’$ を

\begin{eqnarray}
\B{a}’&=&(\B{a}\cdot\B{l})\B{l}+\big\{ \B{a}-(\B{a}\cdot\B{l})\B{l}\big\} \cos\Omega+(\B{l}\times \B{a})\sin\Omega\EE
&=&\cos\Omega\B{a}+(\B{a}\cdot\B{l})(1-\cos\Omega)\B{l}+\sin\Omega(\B{l}\times \B{a})
\end{eqnarray}

と導けます。目的としていた $\B{a}’$ の表示が得られました。また、冒頭で紹介したロドリゲスの回転公式そのものであることも分かります。

ベクトルの軸周りの回転
ロドリゲスの回転公式

回転軸 $l$ と平行な単位ベクトルを $\B{l}$ として、$l$ 周りにベクトル $\B{a}$ を $\Omega$ 回転させたとする。このとき、回転後のベクトル $\B{a}’$ はロドリゲスの回転公式より以下のように記述される。

\begin{eqnarray}
\B{a}’&=&\cos\Omega\B{a}+(\B{a}\cdot\B{l})(1-\cos\Omega)\B{l}+\sin\Omega(\B{l}\times \B{a})\\
\,
\end{eqnarray}

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ロドリゲスの回転公式と回転行列

それでは、具体的に $\B{a}=(a_1,a_2,a_3)^T,\B{l}=(l_1,l_2,l_3)^T$ として、ロドリゲスの回転公式の成分を計算してみましょう。

このとき、$\B{l}\times \B{a}$ については、

$$
\begin{split}
\B{l}\times \B{a}&=
\begin{vmatrix}
\B{i} & \B{j} & \B{k} \\
l_1 & l_2 & l_3 \\
a_1 & a_2 & a_3
\end{vmatrix}\EE
&=(l_2a_3-l_3a_2)\B{i}+(l_3a_1-l_1a_3)\B{j}\EE
&\qquad+(l_1a_2-l_2a_1)\B{k}
\end{split}
$$

となることに注意すると、$\B{a}’=(a_1′,a_2′,a_3′)^T$ を次のように表せます。

$$
\begin{pmatrix}
a_1′ \\
a_2′ \\
a_3′ \\
\end{pmatrix}\EE=
\begin{pmatrix}
a_1\cos\Omega+(l_2a_3-l_3a_2)\sin\Omega+(l_1a_1+l_2a_2+l_3a_3)(1-\cos\Omega)l_1 \\
a_2\cos\Omega+(l_3a_1-l_1a_3)\sin\Omega+(l_1a_1+l_2a_2+l_3a_3)(1-\cos\Omega)l_2 \\
a_3\cos\Omega+(l_1a_2-l_2a_1)\sin\Omega+(l_1a_1+l_2a_2+l_3a_3)(1-\cos\Omega)l_3
\end{pmatrix}
$$

これをさらに整理すると、

$$
\begin{pmatrix}
a_1′ \\
a_2′ \\
a_3′ \\
\end{pmatrix}\EE=
\begin{pmatrix}
\cos\Omega+l_1^2(1-\cos\Omega) & l_1l_2(1-\cos\Omega)-l_3\sin\Omega & l_1l_3(1-\cos\Omega)+l_2\sin\Omega \\
l_1l_2(1-\cos\Omega)+l_3\sin\Omega & \cos\Omega+l_2^2(1-\cos\Omega) & l_2l_3(1-\cos\Omega)-l_1\sin\Omega \\
l_1l_3(1-\cos\Omega)-l_2\sin\Omega & l_2l_3(1-\cos\Omega)+l_1\sin\Omega & \cos\Omega+l_3^2(1-\cos\Omega) \\
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
a_1 \\
a_2 \\
a_3 \\
\end{pmatrix}
$$

となります。今、右辺に現れる行列部分を $R$ として、$\B{l}=(1,0,0)^T,(0,1,0)^T,(0,0,1)^T$ などをそれぞれ適用すると、三次元空間での $x,y,z$ 軸回りの回転行列と一致することが分かります。

これより、$R$ は回転行列の別表現となっていることが分かります。

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