四元数とは?|四元数の形式和と三次元空間における回転の関係

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今回は、複素数を拡張した概念である四元数について説明します。

四元数とは?

$q_0,q_1,q_2,q_3$ を実数として、$i,j,k$ を虚数とする。このとき、四元数を以下のように定義する。

\begin{split}
q=q_0+iq_1+jq_2+kq_3
\end{split}

なお、$q_0$ をスカラー部分、$iq_1+jq_2+kq_3$ をベクトル部分と呼ぶ。

このとき、三つの虚数単位 $i,j,k$ は次の規則に従うとする。

$$
\left\{
\begin{split}
&i^2=-1,\,\,j^2=-1,\,\,k^2=-1 \EE
&ij=k,\quad jk=i,\quad ki=j \EE
&ji=-k,\,\,kj=-i,\,\,ik=-j
\end{split}
\right.
$$

また、四元数の大きさ $|q|$ と共役四元数 $\bar{q}$ を次のように定義する。

\begin{split}
|q|=\sqrt{q_0^2+q_1^2+q_2^2+q_3^2}
\end{split}

\begin{split}
\bar{q}=q_0-iq_1-jq_2-kq_3 \\
\,
\end{split}

また、四元数の計算が回転に対応することを、ロドリゲの回転公式と比較することで示します。まずは、四元数の定義と性質について説明します。

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四元数とは?

冒頭で紹介したように、複素数を拡張した概念として四元数($\RM{quaternion}$)が生まれました。

さて、四元数 $q$ は $q_0,q_1,q_2,q_3$ を実数、$i$ を虚数、$i$ とは異なる二つの虚数を $j,k$ として、以下のように定義されます。

\begin{split}
q=q_0+iq_1+jq_2+kq_3
\end{split}

ただし、三つの虚数単位 $i,j,k$ は次の規則に従うとします。

$$
\left\{
\begin{split}
&i^2=-1,\,\,j^2=-1,\,\,k^2=-1 \EE
&ij=k,\quad jk=i,\quad ki=j \EE
&ji=-k,\,\,kj=-i,\,\,ik=-j
\end{split}
\right.
$$

そして、四元数の大きさを $|q|$ で表現し、以下のように定義します。

\begin{split}
|q|=\sqrt{q_0^2+q_1^2+q_2^2+q_3^2}
\end{split}

特に、$|q|=1$ となる四元数を単位四元数と呼びます。

また、四元数は複素数と同様に、共役四元数 $\bar{q}$ を考えることができて次のように定義されます。

\begin{split}
\bar{q}=q_0-iq_1-jq_2-kq_3
\end{split}

四元数とは?

$q_0,q_1,q_2,q_3$ を実数として、$i,j,k$ を虚数とする。このとき、四元数を以下のように定義する。

\begin{split}
q=q_0+iq_1+jq_2+kq_3
\end{split}

このとき、三つの虚数単位 $i,j,k$ は次の規則に従うとする。

$$
\left\{
\begin{split}
&i^2=-1,\,\,j^2=-1,\,\,k^2=-1 \EE
&ij=k,\quad jk=i,\quad ki=j \EE
&ji=-k,\,\,kj=-i,\,\,ik=-j
\end{split}
\right.
$$

また、四元数の大きさ $|q|$ と共役四元数 $\bar{q}$ を次のように定義する。

\begin{split}
|q|=\sqrt{q_0^2+q_1^2+q_2^2+q_3^2}
\end{split}

\begin{split}
\bar{q}=q_0-iq_1-jq_2-kq_3 \\
\,
\end{split}

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四元数の演算と形式和の対応

さて、四元数の実数部分(上述の $q_0$ 部分)をスカラー部分と呼び、$iq_1+jq_2+kq_3$ 部分のことをベクトル部分と呼びます。この名が示す通り、$iq_1+jq_2+kq_3$ は三次元空間のベクトルと同一視できます。

上のように同一視すると、四元数 $q$ を三次元空間のベクトル $\B{q}$ とスカラー部分 $q_0$ の形式的な和として、

\begin{split}
q=q_0+\B{q}
\end{split}

と表現できます。なお、上のようにスカラーとベクトルを $+$ で結んだ”和”には、形式的な意味しか持たないため、形式和と呼ばれます。ただし、形式和の演算も交換則や分配則を満たし、実数と同様の計算が行えるとします。

形式和とは?

$q_0$ を実数、$\B{q}$ を三次元空間のベクトルとする。このとき、$q_0$ と $\B{q}$ を $+$ で結んだ”和”を形式和と呼ぶ。なお、形式和の演算も交換則や分配則を満たし、実数と同様の計算が行えるとする。

\begin{split}
q_0+\B{q}
\end{split}

また、形式和の実数は四元数のスカラー部分に対応し、ベクトルは四元数のベクトル部分に対応する。

ところで、二つの四元数 $\A=a_0+ia_1+ja_2+ka_3=a_0+\B{a},$ $\beta=b_0+ib_1+jb_2+kb_3=b_0+\B{b}$ の積 $\A\beta$ につい、形式和の考え方を適用すると、以下のようにできます。

\begin{split}
\A\beta&=(a_0+ia_1+ja_2+ka_3)(b_0+ib_1+jb_2+kb_3) \EE
&=a_0b_0+a_0(ib_1+jb_2+kb_3)+b_0(ia_1+ja_2+ka_3) \EE
&\quad\,\,+(i^2a_1b_1+j^2a_2b_2+k^2a_3b_3)+jk(a_2b_3-a_3b_2)\EE
&\qquad+ki(a_3b_1-a_1b_3)ij(a_1b_2-a_2b_1)\EE
&= a_0b_0+a_0\B{b}+b_0\B{a}-\B{a}\cdot\B{b}\EE
&\quad\,\,+i(a_2b_3-a_3b_2)+j(a_3b_1-a_1b_3)+k(a_1b_2-a_2b_1) \EE
&=a_0b_0+a_0\B{b}+b_0\B{a}-\B{a}\cdot\B{b}+\B{a}\times\B{b}
\end{split}

一方、$\A\beta$ は形式和を用いて次のようにもできることに注目すると、

\begin{split}
\A\beta&=(a_0+\B{a})(b_0+\B{b}) \EE
&=a_0b_0+a_0\B{b}+b_0\B{a}+\B{a}\B{b}
\end{split}

二式を比較して

\begin{eqnarray}
\B{a}\B{b}=-\B{a}\cdot\B{b}+\B{a}\times\B{b} \tag{1}
\end{eqnarray}

という関係が導けます。このように、ベクトルの”積”は、内積外積により記述されます。

ベクトルの”積”とは?

ベクトル $\B{a},\B{b}$ の”積”は、内積外積により以下のように記述される。

\begin{eqnarray}
\B{a}\B{b}=-\B{a}\cdot\B{b}+\B{a}\times\B{b} \\
\,
\end{eqnarray}

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四元数と回転との関係

この節では、四元数が回転と密接な関係を持つことを説明します。

四元数とベクトルの回転

単位四元数を $q$、これの共役四元数を $\bar{q}$ とする。

また、$q$ のスカラー部分とベクトル部分の大きさが以下の関係を満たすとする。

$$
\left\{
\begin{split}
&q_0=\cos\ff{\Omega}{2} \EE
&\sqrt{q_1^2+q_2^2+q_3^2}=\sin\ff{\Omega}{2}
\end{split}
\right.
$$

このとき、ベクトル $\B{a}$ をベクトル $\B{l}=(q_1,q_2,_3)$ 周りに $\Omega$ 回転させる操作は、以下のように表される。

\begin{split}
\B{a}’=q\B{a}\bar{q}
\end{split}

ただし、$\B{a}’$ を回転後のベクトルとする。

まず、単位四元数 $q$ があるとき、以下の関係を満たす角度 $\Omega$ が存在することが言えます。(ただし、$q$ のスカラー部分を$q_0$、ベクトル部分を $iq_1+jq_2+kq_3$ とします)

$$
\left\{
\begin{split}
&q_0=\cos\ff{\Omega}{2} \EE
&\sqrt{q_1^2+q_2^2+q_3^2}=\sin\ff{\Omega}{2}
\end{split}
\right.
$$

これを用いると $\B{l}$ をベクトルとして、$q$ が形式和として、

\begin{split}
q=\cos\ff{\Omega}{2}+\B{l}\sin\ff{\Omega}{2}
\end{split}

と表現できます。さらに、$\B{l}$ が単位ベクトルであることも言えます。

このとき、任意のベクトル $\B{a}$ について、以下の計算を考えてみましょう。

\begin{split}
q\B{a}\bar{q}=\left(\cos\ff{\Omega}{2}+\B{l}\sin\ff{\Omega}{2} \right)\B{a}\left(\cos\ff{\Omega}{2}-\B{l}\sin\ff{\Omega}{2} \right)
\end{split}

上式にはベクトルとスカラーが混在していますが、形式和の考え方に従って計算を進めていきます。すると、

\begin{split}
q\B{a}\bar{q}=\B{a}\cos^2\ff{\Omega}{2}+(\B{l}\B{a}-\B{a}\B{l})\cos\ff{\Omega}{2}\sin\ff{\Omega}{2}-\B{l}\B{a}\B{l}\sin^2\ff{\Omega}{2}
\end{split}

とできて、まず、$\B{l}\B{a}-\B{a}\B{l}$ の部分については式$(1)$で導いた対応関係を用いて、

\begin{split}
\B{l}\B{a}-\B{a}\B{l}=2(\B{l}\times \B{a})
\end{split}

となります。次に、$\B{l}\B{a}\B{l}$ は以下のように計算できます。

\begin{split}
\B{l}\B{a}\B{l}&=\B{l}(-\B{a}\cdot\B{l}+\B{a}\times\B{l})\EE
&=-(\B{a}\cdot\B{l})\B{l}+\B{l}(\B{a}\times\B{l}) \EE
&=-(\B{a}\cdot\B{l})\B{l}+\Big\{-\B{l}\cdot(\B{a}\times\B{l})+\B{l}\times(\B{a}\times\B{l}) \Big\}\EE
&=-(\B{a}\cdot\B{l})\B{l}+\B{l}\times(\B{a}\times\B{l})
\end{split}

右辺第二項にベクトル三重積の公式を適用して整理すると、

\begin{split}
\B{l}\B{a}\B{l}&=\B{a}-2(\B{a}\cdot\B{l})\B{l}
\end{split}

となります。これらの結果を元の式に戻すと、

\begin{split}
q\B{a}\bar{q}&=\B{a}\cos^2\ff{\Omega}{2}+2(\B{l}\times \B{a})\cos\ff{\Omega}{2}\sin\ff{\Omega}{2}-\Big\{\B{a}-2(\B{a}\cdot\B{l})\B{l} \Big\}\sin^2\ff{\Omega}{2}\EE
&=\B{a}\left(\cos^2\ff{\Omega}{2}-\sin^2\ff{\Omega}{2} \right)+2(\B{l}\times \B{a})\cos\ff{\Omega}{2}\sin\ff{\Omega}{2}-2(\B{a}\cdot\B{l})\B{l}\sin^2\ff{\Omega}{2}
\end{split}

となり、これらに二倍角の公式を用いると、

\begin{split}
q\B{a}\bar{q}&=\cos \Omega\B{a}+(\B{a}\cdot\B{l})(1-\cos\Omega)\B{l}+\sin \Omega(\B{l}\times \B{a})
\end{split}

となります。これがロドリゲスの回転公式と一致することより、$q\B{a}\bar{q}$ という演算がベクトル $\B{a}$ を回転軸周りに $\Omega$ 回転させる操作に相当することが分かります。

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