矩形波のフーリエ級数展開の導出|フーリエ級数展開の具体例③

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三角波のフーリエ級数展開に引き続き、今回は矩形波フーリエ級数展開の導出過程について説明します。さて、結論を先に示すと、矩形波のフーリエ級数展開表示は以下のようになります。

矩形波のフーリエ級数展開表示

周期 $2\pi$ の矩形波 $f(x)=\RM{sgn}x$ のフーリエ級数展開表示は以下のように表せる。

\begin{split}
f(x) &=\ff{4}{\pi}\sum_{k=1}^{\infty}\ff{\sin (2k-1)x}{2k-1}
\end{split}

周期2πの矩形波の模式図

これの導出過程を説明する前に、矩形波について説明を行い

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矩形波とは?

矩形波とは、その名の通り、四角形のような形をした波が周期的に繰り返される波のことを言います。

矩形波の例として、下図のような周期が $2a$ のものを示します。

周期2aの矩形波の模式図

さて、上ののこぎり波を $f(x)$ とすると以下のような式で表せます。

$$
f(x)=\left\{
\begin{split}
&\,1\quad\quad(0< x\leq a) \EE
&\,0\quad\quad(x=0) \EE
&-1\quad(-a\leq x< 0)
\end{split}
\right.
$$

なお、上の表現は次の様に定義される符号関数 $\RM{sgn}x$ を用いて、

$$
\RM{sgn} x=\left\{
\begin{split}
&\,1\quad\quad(0< x\leq a) \EE
&\,0\quad\quad(x=0) \EE
&-1\quad(-a\leq x< 0)
\end{split}
\right.
$$

$f(x)=\RM{sgn}x$ とも表せます。

今回は、周期関数である矩形波をフーリエ級数展開により表現することを考えます。

矩形波のフーリエ級数展開の導出

ここでは、周期が $2\pi$ の矩形波フーリエ級数展開表示を求めることを考えます。

周期2πの矩形波の模式図

目指す形は下のような級数展開表示です。

\begin{eqnarray}
f(x) &=& \ff{a_0}{2} + \sum_{k=1}^{\infty}\left( a_k\cos kx + b_k\sin kx \right)
\end{eqnarray}

このとき、$a_k, b_k$ はフーリエ係数と呼ばれ、今回の場合は次の様に表現されます。

$$
\left\{
\begin{eqnarray}
a_0 &=& \ff{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi} f(x) \diff x \EE
a_k &=& \ff{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi} f(x)\cos kx \diff x \EE
b_k &=& \ff{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi} f(x)\sin kx \diff x
\end{eqnarray}
\right.
$$

さて、今回の矩形波 $f(x)$ は前述のように、

$$
f(x)=\left\{
\begin{split}
&\,1\quad\quad(0< x\leq a) \EE
&\,0\quad\quad(x=0) \EE
&-1\quad(-a\leq x< 0)
\end{split}
\right.
$$

と表せました。したがって、$a_0,a_k,b_k$ 等の各フーリエ係数はこのように求められます。

\begin{split}
a_0 &= \ff{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi} f(x) \diff x \EE
\pi a_0&=\int_{-\pi}^{0} (-1)\diff x+\int_{0}^{\pi} 1\diff x=0 \EE
\therefore\, a_0&=0
\end{split}

次に $a_k$ は、

\begin{split}
a_k &= \ff{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi} f(x)\cos kx \diff x \EE
\pi a_k&=-\int_{-\pi}^{0} \cos kx\diff x+\int_{0}^{\pi} \cos kx\diff x =0 \EE
\therefore\, a_k&=0
\end{split}

となります。最後に $b_k$ は、

\begin{split}
b_k &= \ff{1}{\pi}\int_{-\pi}^{\pi} f(x)\sin kx \diff x \EE
\pi b_k&=-\int_{-\pi}^{0} \sin kx\diff x+\int_{0}^{\pi} \sin kx\diff x \EE
&=-\left[ \ff{1}{k}\cos kx \right]_{-\pi}^{0}+\left[ \ff{1}{k}\cos kx \right]_{0}^{\pi} \EE
&=\ff{2}{k}\Big(1-(-1)^k \Big)
\end{split}

となって、$k$ が奇数か偶数かで以下のようにまとめられます。($m=1,2,3,\cdots$)

$$
b_k=\left\{
\begin{split}
& 0\quad\quad(k=2m)\EE
& \ff{4}{\pi k}\quad (k=2m-1)
\end{split}
\right.
$$

以上にしてフーリエ係数が求められたので、矩形波のフーリエ級数展開が以下のように表せます。

\begin{split}
f(x) &= \ff{4}{\pi}\sum_{k=1}^{\infty}\ff{\sin (2k-1)x}{2k-1}
\end{split}

冒頭に示した矩形波のフーリエ級数展開が導けました。

矩形波のフーリエ級数展開の近似精度の確認

上で導いたのこぎり波のフーリエ級数展開について、実際に描画すると以下のようになります。

矩形はのフーリエ級数展開の結果

上図より $k$ の増加に伴ってのこぎり波にどんどん近づいていくことが分かります。

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