前回はフーリエ変換の定義について説明しましたが、今回はフーリエ変換の基本的な性質である、線形法則と移動法則について説明します。まず、フーリエ変換は次のような線形法則という性質を持ちます。
二つ目に、次のように述べられる対称法則という性質を持ちます。
$\F[f(t)]=F(w)$ であるとき、以下が成立する。これをフーリエ変換の対称法則と呼ぶ。
\begin{split}
\F[F(t)]=f(-w) \\
\,
\end{split}
三つ目の性質として、以下の相似法則という性質を持ちます。
$\F[f(t)]=F(w)$ であるとき、以下のフーリエ変換の相似法則が成立する。
\begin{split}
\F[f(at)]=\ff{1}{|a|}F\left( \ff{w}{a} \right) \\
\,
\end{split}
四つ目の性質として、以下の移動法則という性質を持ちます。
$\F[f(t)]=F(w)$ であるとき、以下のフーリエ変換の移動法則が成立する。
\begin{split}
&(1)\quad \F[f(t+a)]=e^{iaw}F(w)\EE
&(2)\quad \F[e^{iat}f(t)]=F(w-a)
\end{split}
ただし、$i$ を虚数単位、$a$ を実数定数とする。
なお、フーリエ変換の微分法則と積分法則については次回説明します。
線形法則の証明
フーリエ変換の線形法則は次の様に述べられます。
線形法則の証明を以下に示します。
【フーリエ変換の線形法則の証明】
まず、$\A f(t)+\beta g(t)$ のフーリエ変換は、フーリエ変換の定義より以下のように計算できます。
\begin{split}
\F[\A f(t)+\beta g(t)]&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}\Big( \A f(t)+\beta g(t)\Big)e^{-iwt} \diff t \EE
&=\ff{\A}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} f(t)e^{-iwt} \diff t+\ff{\beta}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} g(t)e^{-iwt} \diff t \EE
&=\A\F[f(t)]+\beta \F[g(t)]\EE
&=\A F(w)+\beta G(w)
\end{split}
これより、フーリエ変換の線形法則が証明できました。
対称法則の証明
フーリエ変換の対称法則は次の様に述べられます。
$\F[f(t)]=F(w)$ であるとき、以下が成立する。これをフーリエ変換の対称法則と呼ぶ。
\begin{split}
\F[F(t)]=f(-w) \\
\,
\end{split}
対称法則の証明を以下に示します。
【フーリエ変換の対称法則の証明】
$f(t)$ と $F(w)$ については、フーリエ変換の反転公式より以下のような関係があり、
\begin{split}
f(t)&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} F(w)e^{iwt} \diff t
\end{split}
ここで、$t$ を $-t$ に置き換えると、
\begin{split}
f(-t)&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} F(w)e^{-iwt} \diff t
\end{split}
とできます。形式的に $t$ と $w$ を入れ替えると、
\begin{split}
f(-w)&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty} F(t)e^{-itw} \diff t \EE
&=\F[F(t)]
\end{split}
が成立します。これより $\F[F(t)]=f(-w)$ が言えて、フーリエ変換の対称法則が証明できました。
相似法則の証明
フーリエ変換の相似法則は次の様に述べられます。
$\F[f(t)]=F(w)$ であるとき、以下のフーリエ変換の相似法則が成立する。
\begin{split}
\F[f(at)]=\ff{1}{|a|}F\left( \ff{w}{a} \right) \\
\,
\end{split}
相似法則の証明を以下に行います。
【フーリエ変換の相似法則の証明】
$\F[f(at)]$ について、フーリエ変換の定義に従って計算すると、
\begin{split}
\F[f(at)]=\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}f(at)e^{-iwt} \diff t
\end{split}
ここで $at=u$ として置換を行うことを考えます。まず、$a>0$ のとき、
\begin{split}
\F[f(at)]&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}f(u)e^{-iw\ff{u}{a}} \ff{1}{a}\diff u \EE
&=\ff{1}{a}\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}f(u)e^{-iw\ff{u}{a}}\diff u \EE
&=\ff{1}{a}F\left( \ff{w}{a} \right)
\end{split}
次に、$a < 0$ のとき、
\begin{split}
\F[f(at)]&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{\infty}^{-\infty}f(u)e^{-iw\ff{u}{a}} \ff{-1}{a}\diff u \EE
&=-\ff{1}{a}\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}f(u)e^{-iw\ff{u}{a}}\diff u \EE
&=-\ff{1}{a}F\left( \ff{w}{a} \right)
\end{split}
となります。以上、$a>0,a<0$ の様子を一緒に表示すると、
\begin{split}
\F[f(at)]=\ff{1}{|a|}F\left( \ff{w}{a} \right)
\end{split}
となります。以上より、フーリエ変換の相似法則が証明できました。
移動法則の証明
フーリエ変換の移動法則は次の様に述べられます。
$\F[f(t)]=F(w)$ であるとき、以下のフーリエ変換の移動法則が成立する。
\begin{split}
&(1)\quad \F[f(t+a)]=e^{iaw}F(w)\EE
&(2)\quad \F[e^{iat}f(t)]=F(w-a)
\end{split}
ただし、$i$ を虚数単位、$a$ を実数定数とする。
移動法則の証明を以下に行います。
【フーリエ変換の移動法則の証明】
まず、$\F[f(t+a)]$ についてはフーリエ変換の定義から、
\begin{split}
\F[f(t+a)]=\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}f(t+a)e^{-iwt} \diff t
\end{split}
$t+a=u$ として置換すると、
\begin{split}
\F[f(t+a)]&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}f(u)e^{-iw(u-a)} \diff u \EE
&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}f(u)e^{-iwu}e^{iwa} \diff u
\end{split}
$e^{iwa}$ は定数扱いできるので、積分の外に出せて、
\begin{split}
\F[f(t+a)]&=\ff{e^{iaw}}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}f(u)e^{-iwu} \diff u
\end{split}
最後に積分変数を $u$ から $t$ に変えると、
\begin{split}
\F[f(t+a)]&=\ff{e^{iaw}}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-iwt} \diff t=e^{iaw}F(w)
\end{split}
となって移動法則の $(1)$ が示されました。
次に $\F[e^{iat}f(t)]$ を定義に従って計算すると、
\begin{split}
\F[e^{iat}f(t)]&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}\Big( e^{iat}f(t) \Big)e^{-iwt} \diff t \EE
&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}}\int_{-\infty}^{\infty}f(t)e^{-i(w-a)t} \diff t \EE
&=F(w-a)
\end{split}
となります。これより、移動法則の $(2)$ が示されました。