波動方程式のフーリエ変換|フーリエ変換による微分方程式の解法①

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今回より、フーリエ変換フーリエ逆変換を組み合わせて偏微分方程式を解く方法について説明します。

今回は、弦の振動を表す偏微分方程式である波動方程式を、フーリエ変換により解く方法を説明します。

\begin{eqnarray}
\ff{\del^2 y}{\del x^2} = \ff{1}{c^2}\ff{\del^2 y}{\del t^2}
\end{eqnarray}

なお、ラプラス変換を用いて波動方程式を解く方法についてはこちらで説明しています。波動方程式を解く準備として、まずは波動方程式のフーリエ変換について考えます。

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波動方程式のフーリエ変換

始めに波動方程式フーリエ変換を実行します。まず、波動方程式は弦の振動を表現する偏微分方程式で、例えば $1$ 次元の弦の振動は以下のように表されました。

\begin{eqnarray}
\ff{\del^2 y}{\del x^2} = \ff{1}{c^2}\ff{\del^2 y}{\del t^2}
\end{eqnarray}

なお、$y$ は $x$ と $t$ に関する二変数関数で明示的には $y(x,t)$ と表せます。ここで、上式にフーリエ変換を施すとこのようになります。

\begin{split}
\F\left[\ff{\del^2 y}{\del x^2}\right] = \ff{1}{c^2}\F\left[\ff{\del^2 y}{\del t^2}\right]
\end{split}

今回は、$x$ についてのフーリエ変換を行うことがポイントとなります。左辺についてはフーリエ変換の微分法則を用いることで、

\begin{split}
\F\left[\ff{\del^2 y}{\del x^2}\right] = (iw)^2\F[y]=-w^2Y(w,t)
\end{split}

とできます。次に、右辺についてはフーリエ変換の定義より以下のようにできて、

\begin{split}
\ff{1}{c^2}\F\left[\ff{\del^2 y}{\del t^2}\right]&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}c^2}\int_{-\infty}^{\infty}\ff{\del^2 y}{\del t^2}e^{-iwx} \diff x \EE
&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}c^2}\ff{\del^2 }{\del t^2}\int_{-\infty}^{\infty}y(x,t)e^{-iwx} \diff x \EE
&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}c^2}\ff{\del^2 }{\del t^2}\F[y(x,t)] \EE
&=\ff{1}{\sqrt{2\pi}c^2}\ff{\del^2 }{\del t^2}Y(w,t)
\end{split}

とできます。以上より、波動方程式のフーリエ変換の結果はこのようになります。

\begin{eqnarray}
\ff{\del^2 }{\del t^2}Y(w,t)=-\sqrt{2\pi}(wc)^2Y(w,t)\tag{1}
\end{eqnarray}

この結果を用いて、次節で波動方程式を解いて行きます。

フーリエ変換による波動方程式の解法

波動方程式をフーリエ変換した結果得られた式$(1)$は、$t$ についての二階微分方程式と見なせます。これの解は、振り子の微分方程式の結果より以下のように求められます。

\begin{eqnarray}
Y(w,t)=C_1(w)\cos \Big((2\pi)^{\ff{1}{4}}wc\Big) t+C_2(w)\sin \Big((2\pi)^{\ff{1}{4}}wc\Big) t\tag{2}
\end{eqnarray}

次に、初期条件(境界条件)として $y(x,0)=0,\DL{\left.\ff{\del y(x,t)}{\del t}\right|_{t=0}=e^{-x^2}}$ を与えたとします。

これらの初期条件をフーリエ変換すると、

\begin{split}
&\F[y(x,0)]=Y(w,0)=0 \EE
&\F\left[\left.\ff{\del y(x,t)}{\del t}\right|_{t=0}\right]=\F[e^{-x^2}]=e^{-\ff{w^2}{4}}
\end{split}

式$(2)$に関して $t=0$ を代入すると、$Y(w,0)=C_1(w)$ となりますが、上の結果より $C_1(w)=0$ と言えて、$Y(w,t)=C_2(w)\sin \Big((2\pi)^{\ff{1}{4}}wc\Big) t$ と言えます。この結果を用いて、二つ目の初期条件について考えると、

\begin{split}
\left.\ff{\del Y(w,t)}{\del t}\right|_{t=0}&=C_2(w)\cdot(2\pi)^{\ff{1}{4}}wc=e^{-\ff{w^2}{4}} \EE
\therefore\, C_2(w)&=\ff{1}{(2\pi)^{\ff{1}{4}}c}\ff{e^{-\ff{w^2}{4}} }{w}
\end{split}

となります。以上をまとめると、

\begin{eqnarray}
Y(w,t)=\ff{1}{(2\pi)^{\ff{1}{4}}c}\ff{e^{-\ff{w^2}{4}} }{w}\cdot \sin \Big((2\pi)^{\ff{1}{4}}wc\Big) t
\end{eqnarray}

が得られます。フーリエ変換の微分法則などを参照しながら、これのフーリエ逆変換を実行すると、目的の波動方程式の解 $y(x,t)$ が得られて、次のようになります。

\begin{eqnarray}
\F^{-1}[Y(w,t)]=y(x,t)=\ff{1}{2\sqrt{2}c}\left( \ff{\pi}{2} \right)^{\ff{1}{4}}\Big\{ \RM{erf}\Big((2\pi)^{\ff{1}{4}}ct-x\Big)+\RM{erf}\Big((2\pi)^{\ff{1}{4}}ct +x\Big) \Big\}
\end{eqnarray}

なお、$\RM{erf}(z)$ はエラー関数を表します。

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