ダランベールの波動公式とは?|波動方程式の一般解の公式

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今回は、無限領域について初期条件(=境界条件)を与えた場合の波動方程式の一般解である、ダランベールの波動公式を、フーリエ変換を用いて導出することを考えます。

ダランベールの波動公式

無限領域について波動方程式の初期条件が以下のように与えられたとき、

$$
\left\{
\begin{split}
&\ff{\del^2 y}{\del x^2} = \ff{1}{c^2}\ff{\del^2 y}{\del t^2} \\[8pt]
&\,y(x,0)=f(x) \EE
&\left.\ff{\del y}{\del t}\right|_{t=0}=g(x)
\end{split}
\right.
$$

その解は以下のように与えられる。

\begin{split}
y(x,t) &=\ff{1}{2}\Big(f(x-\A t)+f(x+\A t) \Big)+\ff{1}{2\A}\int_{x-\A t}^{x+\A t}g(\xi)\diff \xi
\end{split}

ただし、$\A^2=\sqrt{2\pi}c^2$ とする。

上に示す、ダランベールの波動公式を導く準備として、波動方程式フーリエ変換の結果について示します。

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波動方程式のフーリエ変換

始めに波動方程式フーリエ変換を実行します。まず、波動方程式は弦の振動を表現する偏微分方程式で、$1$ 次元の弦の振動は以下のように表されました。

\begin{eqnarray}
\ff{\del^2 y}{\del x^2} = \ff{1}{c^2}\ff{\del^2 y}{\del t^2}
\end{eqnarray}

なお、$y$ は $x$ と $t$ に関する二変数関数で明示的には $y(x,t)$ と表せます。

これのフーリエ変換の結果は、こちらで行っていますが次の様になります。

\begin{eqnarray}
\ff{\del^2 }{\del t^2}Y(w,t)=-\sqrt{2\pi}(wc)^2Y(w,t)
\end{eqnarray}

ここで、$\sqrt{2\pi}c^2=\A^2$ として、

\begin{eqnarray}
\ff{\del^2 }{\del t^2}Y(w,t)=-(\A w)^2Y(w,t)\tag{1}
\end{eqnarray}

と整理をしておきます。

ダランベールの波動公式の導出

式$(1)$の解は $t$ についての二階微分方程式と見なせます。これは、振り子の微分方程式解法を参照することで次のように求められます。

\begin{eqnarray}
Y(w,t)=C_1(w)\cos(\A wt)+iC_2(w)\sin(\A wt) \tag{2}
\end{eqnarray}

ここで、初期条件として

$$
\left\{
\begin{split}
&y(x,0)=f(x) \EE
&\left.\ff{\del y}{\del t}\right|_{t=0}=g(x)
\end{split}
\right.
$$

を与えます。これらの初期条件を $x$ についてフーリエ変換すると、

$$
\left\{
\begin{split}
&Y(x,0)=F(w) \EE
&\left.\ff{\del Y}{\del t}\right|_{t=0}=G(w)
\end{split}
\right.
$$

となります。これを式$(2)$に適用することを考えます。最初に式$(2)$に $t=0$ を適用すると

\begin{eqnarray}
Y(w,0)=F(w)=C_1(w)
\end{eqnarray}

が成立し、$Y(w,t)=F(w)\cos(\A wt)+C_2(w)\sin(\A wt)$ とできます。ところで、$\DL{\ff{\del Y}{\del t}}$ は、

\begin{split}
\ff{\del Y}{\del t}=-F(w)\cdot \A w\sin (\A w t)+iC_2(w)\cdot \A w\cos(\A w t)
\end{split}

となるので、これに $t=0$ を適用すると二つ目の初期条件となり、

\begin{split}
\left.\ff{\del Y}{\del t}\right|_{t=0}=G(w)=iC_2(w) \A w
\end{split}

となります。以上、初期条件を考慮することで式$(2)$が以下のようにできます。

\begin{eqnarray}
Y(w,t)=F(w)\cos(\A wt)-\ff{iG(w)}{\A w}\sin(\A wt) \tag{3}
\end{eqnarray}

式$(3)$を $w$ についてフーリエ逆変換すると波動方程式の解 $y(x,t)$ が得られます。これは積分法則三角関数の性質を参照することで、以下のようになります。

\begin{split}
\F^{-1}[Y(w,t)]&=\ff{1}{2}\Big(f(x-\A t)+f(x+\A t) \Big) \EE
&\qquad-(-i)\ff{i}{2\A}\left(\int_{-\infty}^{x-\A t}g(\xi)\diff \xi-\int_{-\infty}^{x+\A t}g(\xi)\diff \xi \right) \EE
y(x,t)&=\ff{1}{2}\Big(f(x-\A t)+f(x+\A t) \Big)+\ff{1}{2\A}\int_{x-\A t}^{x+\A t}g(\xi)\diff \xi
\end{split}

これより、冒頭に示したダランベールの波動公式が得られました。

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