ラプラス変換の線形法則・移動法則とは?|ラプラス変換の基本性質

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前回ラプラス変換の定義について説明しましたが、今回はラプラス変換の基本的な性質について説明します。

まず、ラプラス変換は次のような線形法則という性質を持ちます。

ラプラス変換の線形法則とは?

$0\le t$ で定義された二つの原関数 $f(t),g(t)$ がそれぞれラプラス変換により、像関数 $F(s),G(s)$ になるとする。このとき、$a,b$ を定数として以下が成立する。これをラプラス変換の線形法則と呼ぶ。

\begin{split}
\L[af(t)+bg(t)]=aF(s)+bG(s) \\
\,
\end{split}

二つ目に、次のように述べられる相似法則を持ちます。

ラプラス変換の相似法則とは?

$0\le t$ で定義された二つの原関数 $f(t),g(t)$ がそれぞれラプラス変換により、像関数 $F(s),G(s)$ になるとする。このとき、$a>0$ として以下が成立する。これをラプラス変換の相似法則と呼ぶ。

\begin{split}
\L[f(at)]=\ff{1}{a}F\left( \ff{s}{a} \right) \\
\,
\end{split}

三つ目の性質として、以下の移動法則を持ちます。

ラプラス変換の移動法則とは?

第一移動法則

$0\le t$ で定義された原関数 $f(t)$ がラプラス変換により、像関数 $\L[f(t)]=F(s)$ になるとする。

このとき、以下の第一移動法則が成立する。

\begin{split}
\L[e^{\lambda t}f(t)]=F(s-\lambda),\,\,\,(s>a)
\end{split}

第二移動法則

$0\le t$ で定義された原関数 $f(t)$ がラプラス変換により、像関数 $\L[f(t)]=F(s)$ になるとする。

このとき、正の定数 $b$ について以下の第二移動法則が成立する。

\begin{split}
\L[U(t-b)f(t-b)]=e^{-b s}F(s),\,\,\,(s>b)
\end{split}

ただし、$U(x)$ をステップ関数(ヘヴィサイドの単位階段関数)とする。

なお、ラプラス変換の醍醐味である微分法則と積分法則については次回説明します。

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線形法則・相似法則とは?

ラプラス変換の線形法則とは?

最初に、ラプラス変換の線形法則について説明し、その証明を示します。

ラプラス変換の線形法則とは?

$0\le t$ で定義された二つの原関数 $f(t),g(t)$ がそれぞれラプラス変換により、像関数 $F(s),G(s)$ になるとする。このとき、$a,b$ を定数として以下が成立する。これをラプラス変換の線形法則と呼ぶ。

\begin{split}
\L[af(t)+bg(t)]=aF(s)+bG(s) \\
\,
\end{split}

線形法則の証明を以下に示します。

【ラプラス変換の線形法則の証明】

まず、$af(t)+bg(t)$ のラプラス変換は、ラプラス変換の定義より以下のように計算できます。

\begin{split}
\L[af(t)+bg(t)]&=\int_0^{\infty}\Big\{ af(t)+bg(t) \Big\}e^{-st}\diff t \EE
&=a\int_0^{\infty} f(t)e^{-st}\diff t+b\int_0^{\infty} g(t)e^{-st}\diff t \EE
&=a\L[f(t)]+b\L[g(t)]\EE
&=aF(s)+bG(s)
\end{split}

これより、ラプラス変換の線形法則が証明されました。

ラプラス変換の相似法則とは?

次に、ラプラス変換の相似法則について説明します。

ラプラス変換の相似法則とは?

$0\le t$ で定義された二つの原関数 $f(t),g(t)$ がそれぞれラプラス変換により、像関数 $F(s),G(s)$ になるとする。このとき、$a>0$ として以下が成立する。これをラプラス変換の相似法則と呼ぶ。

\begin{split}
\L[f(at)]=\ff{1}{a}F\left( \ff{s}{a} \right) \\
\,
\end{split}

相似法則の証明を以下に示します。

【ラプラス変換の対称性の証明】

$f(at)$ のラプラス変換は定義より以下のようにでき、

\begin{split}
\L[f(at)]&=\int_0^{\infty}f(at)e^{-st}\diff t \EE
\end{split}

ここで $at=u$ として置換積分を実行すると、

\begin{split}
\int_0^{\infty}f(at)e^{-st}\diff t &= \ff{1}{a}\int_0^{\infty}f(u)e^{-\ff{s}{a}u}\diff u \EE
&=\ff{1}{a}F\left( \ff{s}{a} \right)
\end{split}

とできます。これは、ラプラス変換の定義式において $s$ を $\DL{\ff{s}{a}}$ に変更したものと言えます。これより、$\DL{\ff{1}{a}F\left( \ff{s}{a} \right)}$ となります。以上よりラプラス変換の相似法則が示されました。

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移動法則とは?

ラプラス変換の定義から言えるように、原関数 $f(t)$ の定義域は $t\le 0$ となります。ゆえに、$-a\le t\,\,(a>0)$ のように定義域が負から始まるような原関数を、ラプラス変換することはできません。

このようなとき、ラプラス変換の移動法則を重宝します。以下にラプラス変換の移動法則とその証明を示します。

ラプラス変換の移動法則とは?

第一移動法則

$0\le t$ で定義された原関数 $f(t)$ がラプラス変換により、像関数 $\L[f(t)]=F(s)$ になるとする。

このとき、以下の第一移動法則が成立する。

\begin{split}
\L[e^{a t}f(t)]=F(s-a),\,\,\,(s>a)
\end{split}

第二移動法則

$0\le t$ で定義された原関数 $f(t)$ がラプラス変換により、像関数 $\L[f(t)]=F(s)$ になるとする。

このとき、正の定数 $b$ について以下の第二移動法則が成立する。

\begin{split}
\L[U(t-b)f(t-b)]=e^{-b s}F(s),\,\,\,(s>b)
\end{split}

ただし、$U(x)$ をステップ関数(ヘヴィサイドの単位階段関数)とする。

移動法則の証明を以下に行います。

【第一移動法則の証明】

$g(t)=e^{a t}f(t)$ として、ラプラス変換の定義に従って計算すると、

\begin{split}
\L[e^{a t}f(t)]&=\int_0^{\infty}\Big\{ e^{a t}f(t) \Big\}e^{-st}\diff t \EE
&= \int_0^{\infty} f(t)e^{-(s-a)t}\diff t
\end{split}

この結果は、ラプラス変換の定義において $s$ を $s-a$ に置き換えた式と言えます。したがって、

\begin{split}
\L[e^{a t}f(t)]=\int_0^{\infty} f(t)e^{-(s-a)t}\diff t=F(s-a)
\end{split}

となります。また、$s-a > 0$ のため、$s>a$ となります。このことから、$f(t)$ に $e^{a t}$ を掛けることは、像関数 $F(s)$ を $a$ だけ平行移動に相当することが分かります。

【第二移動法則の証明】

$U(t-b)f(t-b)$ を定義に従って計算すると、

\begin{split}
\L[U(t-b)f(t-b)]&=\int_0^{\infty}\Big\{ U(t-b)f(t-b) \Big\}e^{-st}\diff t
\end{split}

$t-b =u$ として置換を実行すると、

\begin{split}
\int_0^{\infty}\Big\{ U(t-b)f(t-b) \Big\}e^{-st}\diff t&=\int_{-b}^{\infty}U(u)f(u)e^{-s(u+b)}\diff u
\end{split}

さて、$U(u)$ はヘヴィサイドの単位関数と呼ばれるもので、次のような性質を持ちます。

$$
U(u)=
\left\{
\begin{split}
&0\quad(u<0)\EE
&1\quad(u\geq 0)
\end{split}
\right.
$$

これより、上式を

\begin{split}
\int_{-b}^{\infty}U(u)f(u)e^{-s(u+\eta)}\diff u&=\int_{-b}^{0}0\cdot f(u)e^{-s(u+b)}\diff u+\int_{0}^{\infty} f(u)e^{-s(u+b)}\diff u \EE
&=\int_{0}^{\infty} f(u)e^{-s(u+b)}\diff u \EE
&=e^{-sb}\int_{0}^{\infty} f(u)e^{-su}\diff u \EE
&=e^{-sb}\int_{0}^{\infty} f(t)e^{-st}\diff t \EE
&=e^{-sb}\L[f(t)] = e^{-sb}F(s)
\end{split}

と計算できて、第二移動法則を示せました。これより、$f(t)$ を $b$ 平行移動させることは、像関数 $F(s)$ に $e^{-b s}$ 掛けることに相当することが分かります。

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周期関数のラプラス変換の性質

最後に正弦関数 $\sin x$ や余弦関数 $\cos x$ のような周期関数について、ラプラス変換の性質について説明します。

周期関数のラプラス変換

$0\le t$ で定義された周期 $T$ の原関数 $f(t)$ のラプラス変換 $\L[f(t)]$ は以下のようになる。

\begin{split}
\L[f(t)]=\ff{F_0(s)}{1-e^{-sT}}
\end{split}

ただし、$F_0(s)=\DL{\int_0^{T}e^{-st}\diff t}$ とする。

証明は以下の様になります。

【周期関数のラプラス変換の証明】

まず、$f(t)\,\,(t\geq 0)$ は、周期 $T$ の周期関数であるため、

\begin{split}
f(t)=f(t+T)=f(t+2T)=\cdots=f(t+nT)=\cdots
\end{split}

の関係が成立します。これより、ラプラス変換を次のように計算できます。

\begin{split}
\L[f(t)]&=\int_0^{\infty}f(t)e^{-st}\diff t \EE
&= \int_0^{T}f(t)e^{-st}\diff t+\int_T^{2T}f(t)e^{-st}\diff t++\int_{2T}^{3T}f(t)e^{-st}\diff t+\cdots \EE
&=\int_0^{T}f(t)e^{-st}\diff t+\int_0^{T}f(t+T)e^{-s(t+T)}\diff t++\int_{0}^{T}f(t+2T)e^{-s(t+2T)}\diff t+\cdots \EE
&=\int_0^{T}f(t)e^{-st}\diff t+\sum_{n=1}^{\infty}\int_{0}^{T}f\Big(t+nT\Big)e^{-s(t+nT)}\diff t \EE
&=\int_0^{T}f(t)e^{-st}\diff t+\left(\int_{0}^{T}f\Big(t+nT\Big)e^{-st}\diff t\right)\sum_{n=1}^{\infty}e^{-snT}
\end{split}

周期関数のため、$f(t+nT)=f(t)$ と言えるので、

\begin{split}
\L[f(t)]&=\int_0^{T}f(t)e^{-st}\diff t+\left(\int_0^{T}f(t)e^{-st}\diff t\right)\sum_{n=1}^{\infty}e^{-snT}
\end{split}

右辺第二項については、無限等比級数の和の公式を利用して、

\begin{split}
\L[f(t)]&=\int_0^{T}f(t)e^{-st}\diff t\left(1+e^{-sT}+e^{-2sT}+\cdots \right) \EE
&=\left(\int_0^{T}f(t)e^{-st}\diff t\right)\cdot \ff{1}{1-e^{-sT}}
\end{split}

とできます。最後に $F_0(s)=\DL{\int_0^{T}e^{-st}\diff t}$ とすると、

\begin{split}
\L[f(t)]&=\ff{F_0(s)}{1-e^{-sT}}
\end{split}

が得られ、題意が示されました。

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