ラプラス変換の微分法則・積分法則とは?|理論と証明

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ラプラス変換は常微分方程式を解く際に威力を発揮しますが、それは微分方程式を多項式の形に持ち込めるためです。

今回はラプラス変換による微分方程式の解法の準備として、ラプラス変換の微分法則積分法則について説明します。まず、微分法則は次のように述べられます。

ラプラス変換の微分法則

$0\le t$ で定義された $f(t),f'(t),\cdots,f^{(n-1)}(t)$ は全て連続であるとする。

また、ある定数 $M,\A$ に対して以下が成立するとする。

\begin{split}
|f^{(k)}(t)|\le Me^{\A t},\quad(t\le 0,k=0,1,2,\cdots,n-1)
\end{split}

このとき、$t\le 0$ において $f$ の $n$ 階微分 $f^{(n)}(t)$ が区分的に連続であれば
$f^{(n)}(t)$ のラプラス変換が存在し次式が成立する。これをラプラス変換の微分法則と呼ぶ。

\begin{split}
\L[f^{(n)}(t)]&=s^n\L[f(t)]-\sum_{k=1}^n s^{n-k}f^{(k-1)}(0) \\
\,
\end{split}

そして、ラプラス変換の積分法則は次のように述べられます。

ラプラス変換の積分法則

$0\le t$ で定義された $f(t)$ は区分的に連続であるとする。

また、ある定数 $M,\A$ に対して以下が成立するとする。

\begin{split}
|f(t)|\le Me^{\A t}
\end{split}

このとき、次式が成立する。これをラプラス変換の積分法則と呼ぶ。

\begin{split}
\L\left[ \int_0^{t} f(u)\diff u \right]&=\ff{1}{s}\L[f(t)] \\
\,
\end{split}

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微分法則とは?

冒頭で説明したように、ラプラス変換は以下のように述べられる微分法則が成立します。

ラプラス変換の微分法則

$0\le t$ で定義された $f(t),f'(t),\cdots,f^{(n-1)}(t)$ は全て連続であるとする。

また、ある定数 $M,\A$ に対して以下が成立するとする。

\begin{split}
|f^{(k)}(t)|\le Me^{\A t},\quad(t\le 0,k=0,1,2,\cdots,n-1)
\end{split}

このとき、$t\le 0$ において $f$ の $n$ 階微分 $f^{(n)}(t)$ が区分的に連続であれば
$f^{(n)}(t)$ のラプラス変換が存在し次式が成立する。これをラプラス変換の微分法則と呼ぶ。

\begin{split}
\L[f^{(n)}(t)]&=s^n\L[f(t)]-s^{n-1}f(0)-s^{n-2}f^{(1)}(0)-\\
&\qquad\cdots-sf^{(n-2)}(0)-f^{(n-1)}(0) \\
&=s^n\L[f(t)]-\sum_{k=1}^n s^{n-k}f^{(k-1)}(0) \\
\,
\end{split}

このように、微分の計算をラプラス変換に通すと $\DL{\ff{1}{s}}$ 掛けるという操作に変換できることが分かります。

例えば、$f(t)=(t-1)^2$ を原関数として $\L[f(t)]$ のラプラス変換を求めたいとき、微分法則が利用できます。今、$f^{”}(t)=2$ についてラプラス変換を計算すると $\DL{\L[f^{”}(t)]=\ff{2}{s}}$ とでき、この結果を微分法則の式に適用すると、

\begin{split}
\ff{2}{s}&=s^2\L[(t-1)^2]-\sum_{k=1}^2 s^{2-k}f^{(k-1)}(0) \EE
&= s^2\L[(t-1)^2]-sf(0)-f'(0) \EE
&= s^2\L[(t-1)^2]-s-(-2) \EE
\end{split}

これより、$\DL{\L[(t-1)^2]=\ff{2}{s^3}+\ff{s+2}{s^2}}$ と求められます。もちろん、$f(t)=t^2$ のラプラス変換を求めた後、移動法則を用いて求めることもできます。

微分法則の証明

微分法則の証明を行っていきます。最初のステップとして、$n=1$ の場合、すなわち、

\begin{split}
\L[f^{(1)}(t)]&=s\L[f(t)]-f(0)
\end{split}

の証明を行います。さて、一旦は $f'(t)$ が連続である場合を考えます。このとき、$f'(t)$ のラプラス変換は部分積分を用いて次のように計算できます。

\begin{split}
\L[f'(t)]&=\int_0^{\infty}f'(t)e^{-st}\diff t \EE
&= \left[ f(t)e^{-st} \right]_0^{\infty}+s\int_0^{\infty}f(t)e^{-st}\diff t \EE
&= 0-f(0)+s\L[f(t)] \EE
\therefore\,\L[f'(t)]&=s\L[f(t)]-f(0)
\end{split}

これより、$\L[f^{(1)}(t)]=s\L[f(t)]-f(0)$ が示されました。区分的に連続である場合は、連続な各区間で分けて積分を実行すると同様の証明ができます。

次に、$n=k$ にて微分法則が成立して次式のようになると仮定します。

\begin{split}
\L[f^{(k)}(t)]&=s^k\L[f(t)]-\sum_{j=1}^k s^{k-j}f^{(j-1)}(0)
\end{split}

この仮定の下、$f^{(k+1)}(t)$ のラプラス変換 $\L[f^{(k+1)}(t)]$ について考えます。まず、$f^{(k+1)}(t)$ のラプラス変換は定義より、

\begin{split}
\L[f^{(k+1)}(t)]&=\int_0^{\infty}f^{(k+1)}(t)e^{-st}\diff t
\end{split}

とできて、この右辺に部分積分を適用すると、

\begin{split}
\L[f^{(k+1)}(t)]&=\left[ f^{(k)}(t)e^{-st} \right]_0^{\infty}+s\int_0^{\infty}f^{(k)}(t)e^{-st}\diff t \EE
&=- f^{(k)}(0)+s\int_0^{\infty}f^{(k)}(t)e^{-st}\diff t
\end{split}

さらに、右辺に先程の仮定を適用すると、

\begin{split}
\L[f^{(k+1)}(t)]&=-f^{(k)}(0)+s\left( s^k\L[f(t)]-\sum_{j=1}^k s^{k-j}f^{(j-1)}(0) \right) \EE
&=s^{k+1}\L[f(t)]-\sum_{j=1}^{k+1} s^{k-j}f^{(j-1)}(0)
\end{split}

とできて、これより $n=k+1$ でも微分法則が成立することが分かりました。以上、数学的帰納法より全ての自然数 $n$ に対して微分法則が成立することが示されました。

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積分法則とは?

次に、ラプラス変換については、以下のように述べられる積分法則が成立します。

ラプラス変換の積分法則

$0\le t$ で定義された $f(t)$ は区分的に連続であるとする。

また、ある定数 $M,\A$ に対して以下が成立するとする。

\begin{split}
|f(t)|\le Me^{\A t}
\end{split}

このとき、次式が成立する。これをラプラス変換の積分法則と呼ぶ。

\begin{split}
\L\left[ \int_0^{t} f(u)\diff u \right]&=\ff{1}{s}\L[f(t)] \\
\,
\end{split}

このように、積分の計算をラプラス変換に通すと $\DL{s}$ 掛けるという操作に変換できることが分かります。

例えば、$\DL{f(t)=t}$ として、$\DL{\ff{1}{2}\int_0^{t} f(u)\diff u=\ff{1}{2}\int_0^{t} u\diff u}=t^2$ のラプラス変換を求めたいとき、積分法則から次のように計算できます。

\begin{split}
&\L\left[ \ff{1}{2}\int_0^{t} u\diff u \right]=\ff{1}{s}\L[t] \EE
\therefore\,&\L\left[ t^2 \right]=\ff{1}{s}\cdot \ff{1}{s^2}=\ff{1}{s^3}
\end{split}

積分法則の証明

積分法則の証明を行います。まず、$g(t)=\DL{\int_0^{t} f(u)\diff u}$ とすると、$f(t)$ が不連続である点を除いて $g'(t)=f(t)$ とできます。これをラプラス変換すると微分法則より、

\begin{split}
\L[g'(t)]&=s\L[g(t)]-g(0) \EE
&=s\L[g(t)]-\int_0^{0} f(u)\diff u\EE
&=s\L[g(t)]
\end{split}

とでき、まとめると

\begin{split}
\therefore\, \L\left[ \int_0^{t} f(u)\diff u \right]&=\ff{1}{s}\L[f(t)]
\end{split}

という結果が得られます。以上より、$\DL{\L\left[ \int_0^{t} f(u)\diff u \right]=\ff{1}{s}\L[f(t)]} $ となって積分法則が成立することが示されました。

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$t^n$ 積法則とは?

最後に $t^n$ 積法則について説明します。

ラプラス変換の $t^n$ 積法則

$0\le t$ で定義された $f(t)$ は区分的に連続とし、指数 $\A$ 位の関数とする。

このとき、次式が成立する。これを $t^n$ 積法則と呼ぶ。

\begin{split}
\L\left[ t^nf(t) \right]&=(-1)^n \ff{\diff^n}{\diff s^n}F(s)
\end{split}

ただし、$\L[f(t)]=F(s)$ とする。

例えば、$\DL{f(t)=t^2 e^{t}}$ として $\L[f(t)]$ のラプラス変換を求めたいとき、$t^n$ 積法則より次のように計算できます。まず、$g(t)=e^t$ のラプラス変換を計算すると、

\begin{split}
\L\left[ e^t \right]&=\int_0^{\infty} e^t\cdot e^{-st} \EE
&= \left[ -\ff{1}{s-1}e^{-(s-1)t} \right]_0^{\infty}=\ff{1}{s-1}
\end{split}

これより、$f(t)=t^2 e^{t}$ のラプラス変換を

\begin{split}
\L\left[ t^2e^t \right]&=(-1)^2\left( \ff{1}{s-1} \right)^{”} \EE
&= \ff{2}{(s-1)^3}\qquad(s>1)
\end{split}

とできます。

$t^n$ 積法則の証明

$t^n$ 積法則の証明を行っていきます。最初のステップとして、$n=1$ の場合、すなわち、

\begin{split}
\L\left[ tf(t) \right]&=-\ff{\diff}{\diff s}F(s)
\end{split}

の証明を行います。これを証明するため $f(t)$ のラプラス変換について考えます。これは次のように計算でき、

\begin{split}
\L\left[ f(t) \right]&=F(s)=\int_0^{\infty} f(t) e^{-st} \diff t
\end{split}

これの両辺を $s$ で微分すると、

\begin{split}
\ff{\diff}{\diff s}\L\left[ f(t) \right]&=\ff{\diff}{\diff s}F(s)=\ff{\del}{\del s}\int_0^{\infty} f(t) e^{-st} \diff t
\end{split}

$f(t)$ は区分的に連続な関数のため、微分と積分の順序を入れ替えることができ、

\begin{split}
\ff{\diff}{\diff s}F(s)&=\int_0^{\infty} f(t) \ff{\del}{\del s}e^{-st} \diff t \EE
&=-\int_0^{\infty} f(t)te^{-st} \diff t \EE
&=-\L[tf(t)] \EE
\therefore\, \L[tf(t)]&=-\ff{\diff}{\diff s}F(s)
\end{split}

$n=1$ の場合での $t^n$ 積の証明を示せました。次に、$n=k$ にて $t^n$ 積が成立して次式のようになると仮定します。

\begin{split}
\L\left[ t^kf(t) \right]&=(-1)^k \ff{\diff^k}{\diff s^k}F(s)=G(s)
\end{split}

ここで、$g(t)=\DL{t^kf(t)}$ として、$t\,g(t)$ のラプラス変換を考えると、先程証明した結果を用いて

\begin{split}
\L[t\,g(t)]&=-\ff{\diff}{\diff s}G(s)
\end{split}

となることが言えます。今、仮定より $G(s)=\DL{(-1)^k \ff{\diff^k}{\diff s^k}F(s)}$ と言えるので、

\begin{split}
\L[tg(t)]=\L\left[ t^{k+1}f(t) \right]&=(-1)^{k+1} \ff{\diff^{k+1}}{\diff s^{k+1}}F(s)
\end{split}

が導けます。これより $n=k+1$ でも $t^n$ 積法則が成立することが分かりました。以上、数学的帰納法より全ての自然数 $n$ に対して$t^n$ 積法則が成立することが示されました。

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