畳み込み積分のラプラス変換とは?|合成積とラプラス変換の関係

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今回は畳み込み積分についてのラプラス変換について説明します。まず、畳み込み積分は次のように定義される計算のことを言います。

畳み込み積分(合成積)とは?

$f(t),g(t)$ を $0\le t$ で区分的に連続な関数として、以下の計算を畳み込み積分または合成積と呼び、

$(f\ast g)(x)$ あるいは $f\ast g$ と表す。

\begin{split}
(f\ast g)(x)=f\ast g=\int_{-\infty}^{\infty}f(u)g(x-u)\diff u\\
\,
\end{split}

そして、畳み込み積分のラプラス変換は以下のように計算できます。

畳み込み積分のラプラス変換

$f(t),g(t)$ を $0\le t$ で区分的に連続な関数かつ、指数 $\A$ 位の関数として、各関数のラプラス変換を $\L[f(t)]=F(s),\L[g(t)]=G(s)$ とする。このとき、$\L[(f\ast g)(t)]$ も存在して以下が成立する。

\begin{split}
\L[(f\ast g)(t)]=F(s)G(s)\quad (s>\A)\\
\,
\end{split}

まずは、畳み込み積分の定義と性質について説明します。

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畳み込み積分とは?

始めに、畳み込み積分とは次のように定義される積分の計算方法です。

畳み込み積分(合成積)とは?

$f(t),g(t)$ を $0\le t$ で区分的に連続な関数として、以下の計算を畳み込み積分または合成積と呼び、

$(f\ast g)(x)$ あるいは $f\ast g$ と表す。

\begin{split}
(f\ast g)(x)=f\ast g=\int_{-\infty}^{\infty}f(u)g(x-u)\diff u\\
\,
\end{split}

畳み込み積分の性質

畳み込み積分は掛け算と同様に、交換法則結合法則と呼ばれる重要な性質を持ちます。

畳み込み積分の性質

畳み込み積分は以下のような性質がある。

交換法則

\begin{split}
f\ast g=g\ast f
\end{split}

結合法則

\begin{split}
(f\ast g)\ast h=f\ast (g\ast h) \\
\,
\end{split}

【交換法則の証明】

まずは $g\ast f$ について考えます。これは畳み込み積分の定義より、

\begin{split}
g\ast f=\int_{-\infty}^{\infty}g(u)f(x-u)\diff u
\end{split}

とできて、これを $t=x-u$ として右辺の置換を実行すると、

\begin{split}
g\ast f&=-\int_{\infty}^{-\infty}g(x-t)f(t)\diff t \EE
&= \int_{-\infty}^{\infty}f(t)g(x-t)\diff t \EE
&=f\ast g
\end{split}

となります。これより、畳み込み積分の交換法則を示せました。

【結合法則の証明】

$(f\ast g)\ast h$ について計算します。これも畳み込み積分の定義より

\begin{split}
(f\ast g)\ast h=\int_{-\infty}^{\infty}\Big\{(f\ast g)(u)\Big\}h(x-u)\diff u
\end{split}

今、$\DL{(f\ast g)(u)=\int_{-\infty}^{\infty}f(u)g(u-t)\diff t}$ とでき、これを上式に適用すると、

\begin{split}
(f\ast g)\ast h=\int_{-\infty}^{\infty}\left\{ \int_{-\infty}^{\infty}f(u)g(u-t)\diff t \right\}h(x-u)\diff u
\end{split}

$f,g,h$ は区分的に連続な関数のため、積分の順序を入れ替えることができて、

\begin{split}
(f\ast g)\ast h=\int_{-\infty}^{\infty}f(u)\left\{ \int_{-\infty}^{\infty}g(u-t)h(x-u)\diff t\right\} \diff u
\end{split}

ここで $v=u-t$ として置換積分を実行すると、

\begin{split}
(f\ast g)\ast h&=\int_{-\infty}^{\infty}f(u)\left\{ \int_{\infty}^{-\infty}g(v)h\Big((x-t)-v\Big)\diff v\right\} \diff u
\end{split}

とできます。さらに $x-t=x-u$ であることに注意すると、

\begin{split}
(f\ast g)\ast h&=\int_{-\infty}^{\infty}f(u)\left\{ \int_{\infty}^{-\infty}g(v)h\Big((x-u)-v\Big)\diff v\right\} \diff u \EE
&=\int_{-\infty}^{\infty}f(u)\Big\{(g\ast h)(x-u) \Big\} \diff u \EE
&=f\ast (g\ast h)
\end{split}

であることが言え、畳み込み積分の結合法則を示せました。

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畳み込み積分のラプラス変換とは?

今回のテーマである畳み込み積分のラプラス変換について、結果を示すと以下のようになります。

畳み込み積分のラプラス変換

$f(t),g(t)$ を $0\le t$ で区分的に連続な関数かつ、指数 $\A$ 位の関数として、各関数のラプラス変換を $\L[f(t)]=F(s),\L[g(t)]=G(s)$ とする。このとき、$\L[(f\ast g)(t)]$ も存在して以下が成立する。

\begin{split}
\L[(f\ast g)(t)]=F(s)G(s)\quad (s>\A)\\
\,
\end{split}

例えば、$f(t)=t,g(t)=\sin t$ とするとき、$\L[f(t)]=F(s)=\DL{\ff{1}{s^2}},$ $\L[g(t)]=G(s)=\DL{\ff{1}{s^2+1}}$ となります。このとき、$\L[(f\ast g)(t)]$ は畳み込み積分のラプラス変換を用いて次のように計算できます。

\begin{split}
\L[(f\ast g)(t)]&=\L\left[ \int_{0}^{\infty}t\sin(t-u)\diff u \right]\EE
&=F(s)G(s) \EE
&=\ff{1}{s^2}\cdot\ff{1}{s^2+1} \EE
&=\ff{1}{s^2(s^2+1)}
\end{split}

【合成積のラプラス変換の証明】

仮定より $f(t),g(t)$ は区分的に連続な関数かつ、指数 $\A$ 位の関数ラプラス変換の収束条件より $\L[(f\ast g)(t)]$ のラプラス変換も存在すると言えます。

これより、$\L[(f\ast g)(t)]$ の計算が行えて、

\begin{split}
\L[(f\ast g)(t)]&=\int_0^{\infty}e^{-st}\left\{ \int_0^{\infty}f(u)g(t-u) \diff u\right\}\diff t \EE
&= \int_0^{\infty}f(u)\left\{ \int_0^{\infty} e^{-st}g(t-u)\diff t\right\}\diff u
\end{split}

ここで、$v=t-u$ と置換すると $t=u+v,\diff v=\diff t$ となるため、

\begin{split}
\L[(f\ast g)(t)]&= \int_0^{\infty}f(u)\left\{ \int_0^{\infty} e^{-su-sv}g(v)\diff v\right\}\diff u \EE
&= \int_0^{\infty}e^{-su}f(u)\left\{ \int_0^{\infty} e^{-sv}g(v)\diff v\right\}\diff u \EE
&= \left\{ \int_0^{\infty}e^{-su}f(u) \diff u\right\}\left\{ \int_0^{\infty} e^{-sv}g(v)\diff v\right\} \EE
&= F(s)G(s)
\end{split}

以上より、畳み込み積分のラプラス変換を証明できました。

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初期値定理と最終値定理とは?

話は少し変わりますが、ラプラス変換微分方程式を解くだけでなく、制御工学などでも使われます。このような場面では、原関数 $f(t)$ の初期値や最終値($t\to\infty$ での極限値)を知ることが重要になります。

このようなとき、以下に述べる初期値定理最終値定理を知っていると手早く計算が行えます。

初期値定理と最終値定理

$f(t)$ を $0\le t$ で定義された区分的に連続な関数とする。

このとき、以下の初期値定理最終値定理が成立する。

初期値定理

\begin{split}
\lim_{t\to +0}f(t)=\lim_{s\to\infty}sF(s)
\end{split}

最終値定理

\begin{split}
\lim_{t\to \infty}f(t)=\lim_{s\to0}sF(s)
\end{split}

ただし、像関数 $F(s)$ は $0\le s$ で収束するとする。

例えば $f(t)=e^{-at}$ の最終値の計算を行うとき、$f(t)$ のラプラス変換が $\DL{F(s)=\ff{1}{s+a}}$ となることより、$f(t)$ の最終値が次のように求められます。

\begin{split}
\lim_{t\to \infty}f(t)&=\lim_{t\to \infty}e^{-at}=\lim_{s\to0}sF(s) \EE
\therefore\,\lim_{t\to \infty}e^{-at}&=\lim_{s\to0}\ff{s}{s+a}=0
\end{split}

【初期値定理と最終値定理の証明】

$f'(t)$ のラプラス変換について、ラプラス変換の積分法則を適用すると、

\begin{eqnarray}
\int_0^{\infty}f'(t)e^{-st}\diff t=sF(s)-f(0) \tag{1}
\end{eqnarray}

$s\to \infty$ の極限を考えると左辺が $0$ となり、

\begin{split}
\lim_{s\to\infty}\Big\{sF(s)-f(0) \Big\}=0
\end{split}

が言えます。これを移行して、

\begin{split}
\lim_{t\to +0}f(t)=\lim_{s\to\infty}sF(s)
\end{split}

となり、初期値定理が示せました。引き続き、式$(1)$にて $s\to 0$ とすると左辺は $f(\infty)-f(0)$ となるので、

\begin{split}
f(\infty)-f(0)&=\lim_{s\to0}sF(s)-f(0) \EE
\therefore\,\lim_{t\to \infty}f(t)&=\lim_{s\to0}sF(s)
\end{split}

とできます。これより、最終値定理を示せました。なお、周期関数の場合では最終値定理が成立しないことに注意が必要です。

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