累乗・べき乗のラプラス変換の導出|ラプラス変換の具体例と応用②

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今回は $t^{\A}$ のような累乗(べき乗)のラプラス変換について考えます。

累乗(べき乗)のラプラス変換

$n$ を $0$ 以上の整数として、$t^n$ のラプラス変換 $\L[t^n]$ は次の様に表せる。

\begin{split}
\L[t^n]=\ff{n!}{s^{n+1}}
\end{split}

また、$\A>-1$ なる任意の実数として、$t^{\A}$ のラプラス変換 $\L[t^{\A}]$ は次の様に表せる。

\begin{split}
\L[t^{\A}]=\ff{\Gamma(\A+1)}{s^{\A+1}}
\end{split}

ただし、$\Gamma(x)$ をガンマ関数とする。

結論を示すと上記のようになります。まずは、指数が $0$ 以上の整数となるような累乗についてのラプラス変換を導いていきます。

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累乗(べき乗)のラプラス変換の導出

$n$ を $0$ 以上の整数として、$t^n$ のラプラス変換について考えます。とは言え、いきなり計算するのは大変です。そこで $f(t)=1,t,t^2,t^3$ のラプラス変換を計算して、そこから法則性を考えることにします。

始めに、$f(t)=1$ のラプラス変換は次のように計算できます。

\begin{split}
\L[1]&=\int_0^{\infty}1\cdot e^{-st} \diff t \EE
&= \left[ -\ff{1}{s}e^{-st} \right]_0^{\infty}\EE
&= \ff{1}{s}
\end{split}

次に、$f(t)=t$ のラプラス変換は次のように計算できます。

\begin{split}
\L[t]&=\int_0^{\infty}te^{-st} \diff t \EE
&= \left[ -\ff{t}{s}e^{-st} \right]_0^{\infty}+\ff{1}{s}\int_0^{\infty}e^{-st} \diff t \diff t\EE
&= \ff{1}{s}\left[ -\ff{t}{s}e^{-st} \right]_0^{\infty} \EE
&= \ff{1}{s^2}
\end{split}

同様にして $t^2$ のラプラス変換を求めますが、これは $t^2=t\cdot t$ と見て $t^n$ 積法則を使うことで計算できます。すなわち、

\begin{split}
\L[t^2] &=\L[t\cdot t] =(-1)\ff{\diff}{\diff s}\L[t] \EE
&=(-1) \ff{\diff}{\diff s}\left(\ff{1}{s^2}\right) \EE
&=\ff{2}{s^3}
\end{split}

となります。そして、$t^3$ のラプラス積分も $t^n$ 積法則を用いることで同様にして、

\begin{split}
\L[t^3] &=\L[t\cdot t^2] =(-1)\ff{\diff}{\diff s}\L[t^2] \EE
&=(-1) \ff{\diff}{\diff s}\left(\ff{2}{s^3}\right) \EE
&=\ff{6}{s^4}=\ff{3!}{s^4}
\end{split}

とできます。ここまでの結果より、$t^n$ のラプラス変換は $\L[t^n]=\DL{\ff{n!}{s^{n+1}}}$ となることが予想できます。この予想は、数学的帰納法を使っても証明できますが、今回はガンマ関数を上手に利用することで証明していきます。

さて、$\L[t^n]$ は、ラプラス変換の定義式から次の様にできて、

\begin{split}
\L[t^n]&=\int_0^{\infty}t^ne^{-st} \diff t \EE
\end{split}

右辺を $st=u$ と置換すると、

\begin{split}
\int_0^{\infty}t^ne^{-st} \diff t &= \int_0^{\infty}\left( \ff{u}{s} \right)^ne^{-u}\left( \ff{1}{s} \diff u\right) \EE
&= \ff{1}{s^{n+1}}\int_0^{\infty}u^ne^{-u}\diff u \EE
&= \ff{1}{s^{n+1}}\int_0^{\infty}u^{(n+1)-1}e^{-u}\diff u \EE
\end{split}

となり、この結果をガンマ関数の定義と比較すると、

\begin{split}
\ff{1}{s^{n+1}}\int_0^{\infty}u^{(n+1)-1}e^{-u}\diff u =\ff{\Gamma(n+1)}{s^{n+1}}
\end{split}

と言えます。これより、$\L[t^n]=\DL{\ff{\Gamma(n+1)}{s^{n+1}}}$ であることが導けます。$n$ が自然数のとき、特に $\Gamma(n+1)=n!$ なので、$\L[t^n]=\DL{ \ff{n!}{s^{n+1}} }$ となります。先の予想の正しさが証明できました。

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一般化した累乗のラプラス変換の導出

次に、一般化した累乗のラプラス変換を求めます。ここでは、$\A>-1$ の任意の実数として、$t^{\A}$ のラプラス変換を導きます。

これについても、ラプラス変換の定義より次のように計算できます。

\begin{split}
\L[t^{\A}]&=\int_0^{\infty}t^{\A}e^{-st} \diff t \EE
\end{split}

先程と同様に $st=u$ として置換すると、

\begin{split}
\int_0^{\infty}t^{\A}e^{-st} \diff t &= \int_0^{\infty}\left( \ff{u}{s} \right)^{\A}e^{-u}\left( \ff{1}{s} \diff u\right) \EE
&= \ff{1}{s^{\A+1}}\int_0^{\infty}u^{\A}e^{-u}\diff u \EE
&= \ff{1}{s^{\A+1}}\int_0^{\infty}u^{(\A+1)-1}e^{-u}\diff u \EE
\end{split}

右辺はガンマ関数の定義より

\begin{split}
\ff{1}{s^{\A+1}}\int_0^{\infty}u^{(\A+1)-1}e^{-u}\diff u=\ff{\Gamma(\A+1)}{s^{\A+1}}
\end{split}

であることが導けます。

以上より、一般の場合でも前節と同様に $\L[t^{\A}]=\DL{\ff{\Gamma(\A+1)}{s^{\A+1}}}$ であることが導けました。

これらの結果より、冒頭に示した累乗のラプラス変換を示せました。

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