今回は、ラプラス逆変換と呼ばれる操作とその数学的な背景について説明します。ラプラス逆変換は次のように定義される操作で、ラプラス変換の反対の操作と言えます。
まずは、ラプラス逆変換の定義と簡単な具体例について説明します。
ラプラス逆変換とは?
ここまでラプラス変換により、原関数 $f(t)$ をから像関数 $F(s)$ を得る方法について説明してきました。今回は、像関数 $F(s)$ から原関数 $f(t)$ を得る、逆の操作について考えていきます。
さて、像関数 $F(s)$ を原関数 $f(t)$ に変換する手法のことをラプラス逆変換と呼び、その定義は次のように述べられます。
例えば $\DL{F(s)=\ff{1}{s-a}}$ という像関数が与えられた場合のラプラス逆変換について考えてみます。
これは、ラプラス変換表や指数関数のラプラス変換を見ると、$\DL{\L[e^{at}]=\ff{1}{s-a}}$ であるため、
\begin{split}
\L^{-1}\left[ \ff{1}{s-a} \right] =e^{at}
\end{split}
とできます。この結果を参考にして、ラプラス逆変換が成り立つための数学的な背景を考えていきます。
ラプラス逆変換の数学的な背景
さて、ラプラス変換表を良く見てみると、$f(t)=1$ と $U(t)$ のラプラス変換が共に、
$$
\left\{
\begin{split}
&\L[1]=\ff{1}{s} \EE
&\L[U(t)]=\ff{1}{s}
\end{split}
\right.
$$
となることに気が付きます。($U(t)$ は単位ステップ関数)この例から厳密には、ラプラス変換は一対一対応とはならないことが言えます。
そうすると、ラプラス逆変換をきちんと計算できなくなりそうです。この問題について少し考えてみましょう。
例えば、次のように定義される不連続関数があったとします。
$$
g(t)=
\left\{
\begin{split}
&1\,\,\quad (0\leq t,t\neq 1,2,3)\EE
&\ff{1}{2}\quad(t=1,2,3)
\end{split}
\right.
$$
この関数のグラフは下図のようになります。
ここで $g(t)$ のラプラス変換を考えてみると、積分計算の過程で不連続点の情報は消滅してしまうので、結局、
\begin{split}
\L[g(t)]=\ff{1}{s}
\end{split}
となります。さて、$f(t)$ と $g(t)$ との違いは有限個の不連続点を持つかどうかでしかありません。そのため、これらの関数は $\DL{\ff{1}{s}}$ に変換される関数として同一視できると、考えることもできます。
このように約束すると、ラプラス変換が一対一対応の操作と見なせるようになります。これを定理としてまとめると、以下のようになります。
次回は、ラプラス逆変換の性質について考えていきます。