今回は変数係数の微分方程式の例として、ベッセルの微分方程式のラプラス変換による解法を考えます。
なお、今回解く対象とするのは以下に示す微分方程式となります。
\begin{split}
t^2x^{”}(t)+tx'(t)+(t^2-1)x(t)=0
\end{split}
これを解く準備として、まずは変数係数の微分方程式のラプラス変換について考えていきます。
変数係数の微分方程式とラプラス変換
微分方程式の係数が定数では無く、変数となっているものを変数係数の微分方程式と呼びます。例えば $tx'(t)+x(t)=t$ という微分方程式などが変数係数の微分方程式に該当します。
ここでは、この微分方程式の解法について説明します。まず、上式のラプラス変換を実行すると、次の様にできます。
\begin{split}
\L[tx'(t)]+\L[x(t)]=\L[t]
\end{split}
さらに、$t$ 積法則や累乗関数のラプラス変換を考慮することで、
\begin{split}
-\ff{\diff}{\diff s}\L[x'(t)]+X(s)=\ff{1}{s^2}
\end{split}
とできて、さらに微分法則を適用することで、
\begin{split}
-\ff{\diff}{\diff s}\Big(sX(s)-x(0) \Big)+X(s)&=\ff{1}{s^2} \EE
\end{split}
という結果が導けます。今、初期条件として $x(0)=0$ を与えると、
\begin{split}
&-X(s)-sX'(s)+X(s)=\ff{1}{s^2} \EE
&\quad\qquad\therefore\,X'(s)=-\ff{1}{s^3}
\end{split}
が導けます。
さて、これの積分を実行すると、
\begin{split}
X(s)=\int X'(s)\diff s=\ff{1}{2}\cdot \ff{1}{s^2}+C
\end{split}
と $X(s)$ が求められます。($C$ は積分定数) 最後に、$X(s)$ のラプラス逆変換を実行することで、
\begin{split}
x(t)&=\L^{-1}[X(s)]\EE
&=\L^{-1}\left[ \ff{1}{2s^2}+C \right] \EE
&= \ff{1}{2}t+C\delta(t)
\end{split}
と $x(t)$ が求められます。なお、$\delta(t)$ はディラックのデルタ関数と呼ばれる超関数です。このようにして、ラプラス変換を用いて変数係数の微分方程式を解くことができます。
ベッセルの微分方程式のラプラス変換
それでは、今回の本題であるベッセルの微分方程式のラプラス変換について考えましょう。
今回は、以下のベッセルの微分方程式について、ラプラス変換を用いた解法について考えます。
\begin{split}
t^2x^{”}(t)+tx'(t)+(t^2-1)x(t)=0
\end{split}
なお、初期条件として $x(0)=1,x'(0)=0$ を与えます。では早速解法について見ていきます。
前節と同様に、初手としてラプラス変換を実行します。(変換の過程では、$t^n$ 積法則や微分法則を利用しています)
\begin{split}
0&=(-1)^2\ff{\diff^2}{\diff s^2}\Big(\L[x^{”}(t)]\Big)-\ff{\diff}{\diff s}\Big(\L[x'(t)]\Big)+(-1)^2\ff{\diff^2}{\diff s^2}X(s)-X(s) \EE
&=\ff{\diff^2}{\diff s^2}\Big(s^2X(s)-sx(0)-x'(0) \Big)-\ff{\diff}{\diff s}\Big(sX(s)-x(0) \Big)+X^{”}(s)-X(s) \EE
&=\ff{\diff^2}{\diff s^2}\Big(s^2X(s)-s\Big)-\ff{\diff}{\diff s}\Big(sX(s)-1 \Big)+X^{”}(s)-X(s)\EE
&=(s^2+1)X^{”}(s)+3sX'(s)
\end{split}
これより、
\begin{split}
\ff{X^{”}(s)}{X'(s)}=-\ff{3s}{s^2+1}
\end{split}
と整理できます。これの積分を実行すると、
\begin{split}
\log|X'(s)|&=-\ff{3}{2}\log|s^2+1|+C’_1\EE
\therefore\, X'(s)&=\ff{C_1}{(s^2+1)^{\ff{3}{2}}}
\end{split}
となります。($C_1=e^{C’_1}$)もう一度、積分を実行すると、
\begin{split}
X(s)=-C_1\left(1-\ff{s}{(s^2+1)^{\ff{1}{2}}}\right)+C_2
\end{split}
と $X(s)$ が得られます。
ところで、$1$ 次のベッセル関数、$J_1(t)$ をラプラス変換すると、$\DL{1-\ff{s}{(s^2+1)^{\ff{1}{2}}}}$ となることが知られています。
これを用いると、ラプラス逆変換の結果が $x(t)=-C_1J_1(t)+C_2\delta(t)$ となります。最後に初期条件を考慮すると、$C_1=1,C_2=1$ となるので、
\begin{split}
x(t)=-J_1(t)+\delta(t)
\end{split}
が導かれます。このようにして、ベッセルの微分方程式の解が得られます。