ここまでは、単振動のラプラス変換や減衰振動のラプラス変換、強制振動のラプラス変換を考えてきました。
今回は趣向を変えて、式中に積分の項を含むような、積分方程式のラプラス変換による解法を考えます。
積分方程式:式中に、未知の関数の積分を含む方程式のこと
この解法でも、ラプラス変換によって積分方程式を代数方程式に変換することがポイントとなります。さて、今回解く対象となるのは以下に示すような積分方程式となります。
$$
\left\{
\begin{split}
&f(t)=\int_0^5 f(u)\diff u+1+t \EE
&f'(t)-3f(t)+2\int_0^t f(u)\diff u=e^t
\end{split}
\right.
$$
これを解くため、まずは簡単な積分方程式のラプラス変換について説明します。
積分方程式とは?
始めに積分方程式とは、その式の中に未知関数の積分を含む方程式のことを言います。
積分方程式:式中に、未知の関数の積分を含む方程式のこと
例えば、次のような方程式が積分方程式となります。
\begin{split}
f(t)=\int_0^5 f(u)\diff u+1+t
\end{split}
これを解くときは、右辺の定積分が定数となることを利用します。すなわち、$k$ を定数として、$\DL{\int_0^5 f(u)\diff u=k}$ と置くことがポイントとなります。
このように置くと上式を、
\begin{split}
f(t)=k+1+t
\end{split}
とできます。これを最初の定積分の式に代入すると、
\begin{split}
\int_0^5 (u+k+1)\diff u=k
\end{split}
と置けます。左辺を計算すると、$\DL{\ff{35}{2}+5k}$ となるので、上式は
\begin{split}
\ff{35}{2}+5k&=k
\end{split}
となり、これより $k=-\ff{35}{8}$ と求められます。以上の結果より $f(x)$ が、
\begin{split}
f(t)=t-\ff{27}{8}
\end{split}
と導けます。
ラプラス変換による積分方程式の解法
それでは、ラプラス変換を用いてより複雑な積分方程式の解法を説明していきます。
例題$1$:$\DL{f(t)=\int_0^t f(u)\diff u+t+1}$
微分方程式と同様、積分方程式の場合も式全体をラプラス変換することから始めます。
ただし、この解法ではラプラス変換の積分法則が鍵となります。実際、与式のラプラス変換を実行すると次の様になります。
\begin{split}
\L[f(t)]&=\L\left[\int_0^t f(u)\diff u\right]+\L[t+1] \EE
F(s)&=\ff{1}{s}F(s)+\ff{1}{s^2}+\ff{1}{s}
\end{split}
これを $F(s)$ について整理すると、
\begin{split}
\left(1-\ff{1}{s} \right)F(s)&=\ff{1}{s^2}+\ff{1}{s} \EE
\therefore\, F(s)&=\ff{s+1}{s(s-1)}
\end{split}
最後にラプラス逆変換を実行すると、求めたい解 $f(t)$ が得られます。この計算過程はこのようになります。
\begin{split}
f(t)&=\L^{-1}[F(s)]\EE
&=\L^{-1}\left[\ff{s+1}{s(s-1)}\right] \EE
&=\L^{-1}\left[\ff{-1}{s}\right]+\L^{-1}\left[\ff{2}{s-1}\right] \EE
\therefore\,f(t)&=-1+2e^{t}
\end{split}
なお、計算の過程で畳み込み積分のラプラス変換を用いています。
例題$2$:$\DL{f'(t)-3f(t)+2\int_0^t f(u)\diff u=e^t}$
先程と同様、ラプラス変換表を参照しつつ与式のラプラス変換を実行します。
\begin{split}
\L[f'(t)]-3\L[f(t)]+2\L\left[\int_0^t f(u)\diff u\right]=\L[e^t] \EE
(sF(s)-f(0))+3F(s)+\ff{2}{s}F(s)=\ff{1}{s-1}
\end{split}
今、初期条件として $f(0)=0$ を与えて $F(s)$ について整理すると以下のようになります。
\begin{split}
F(s)=\ff{s}{s^2-1}\cdot\ff{1}{s+2}
\end{split}
このラプラス逆変換を実行すると、
\begin{split}
f(t)&=\L^{-1}[F(s)] \EE
&=\L^{-1}\left[ \ff{s}{s^2-1}\cdot\ff{1}{s+2} \right] \EE
&=\int_0^t \cosh t\cdot e^{-2(u-t)}\diff u \EE
&=\ff{1}{2}(e^t+e^{-t})e^{2t}\int_0^te^{-2u}\diff u \EE
&=\ff{1}{2}(e^{3t}+e^{t})\left[ -\ff{1}{2}e^{-2u} \right]_0^t \EE
\therefore\,f(t)&=\ff{1}{4}(e^{3t}+e^{-t})
\end{split}
となって、解 $x(t)$ が求められます。