ラプラス変換による波動方程式の解法|ラプラス変換による微分方程式の解法⑧

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今回は偏微分方程式ラプラス変換について考え、これにより波動方程式ラプラス変換による解法を説明します。

まず、二変数関数のラプラス変換には次のような性質を持ちます。

二変数関数のラプラス変換

二変数関数 $f(x,t)$ について、変数 $t$ に関するラプラス変換は以下のような性質を持つ。

$$
\left\{
\begin{split}
&(1)\quad \L[f(x,t)]=F(x,s) \EE
&(2)\quad \L\left[\ff{\del f(x,t)}{\del t} \right]=sF(x,s)-f(x,0) \EE
&(3)\quad \L\left[\ff{\del^2 f(x,t)}{\del t^2} \right]=s^2F(x,s)-sf(x,0)-\left.\ff{\del f(x,t)}{\del t}\right|_{t=0}\EE
&(4)\quad \L\left[\ff{\del f(x,t)}{\del x} \right]=\ff{\del F(x,s)}{\del s}
\end{split}
\right.
$$

これらの性質を用いることで、ラプラス変換による波動方程式の解を導いていきます。

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二変数関数のラプラス変換

波動方程式の解法を考える準備として、冒頭に示した二変数関数のラプラス変換の性質を示します。

さて、ここまでは $f(t)$ のような一変数関数のラプラス変換について見てきました。一方、波動方程式のような偏微分方程式に含まれる関数は、多変数関数です。そのため、偏微分方程式についてもラプラス変換が使えるように拡張する必要があります。

最初に、二変数関数 $f(x,t)$ のラプラス変換を考えてみましょう。これについては、ラプラス変の定義に従い計算を行うことで、以下のように導けます。

\begin{split}
\L[f(x,t)]=\int_0^{\infty}f(x,t)e^{-st}\diff t=F(x,s)
\end{split}

上の積分からも言えるように、ラプラス変換はある一つの変数(ここでは変数 $t$)についての変換であるので、$x$ については定数扱いすることができます。ゆえに、上式のような結果となります。

これより、$t$ についての一階偏微分や二階偏微分のラプラス変換は、微分法則をそのまま適用することで、

$$
\left\{
\begin{split}
&\L\left[\ff{\del f(x,t)}{\del t} \right]=sF(x,s)-f(x,0) \EE
&\L\left[\ff{\del^2 f(x,t)}{\del t^2} \right]=s^2F(x,s)-sf(x,0)-\left.\ff{\del f(x,t)}{\del t}\right|_{t=0}
\end{split}
\right.
$$

とできます。

ここまでは通常のラプラス変換の結果と同じですが、多変数関数のラプラス変換において異なるのは、$t$ 以外の変数による偏微分(今回の例では変数 $x$)をラプラス変換した結果です。

これについても先程と同様、定義に従って考えることとします。具体的な導出過程は以下のようになります。

\begin{split}
\L\left[\ff{\del f(x,t)}{\del x} \right]&=\int_0^{\infty}\left(\ff{\del}{\del x} f(x,t)\right)e^{-st}\diff t \EE
&=\ff{\del}{\del x}\int_0^{\infty}f(x,t)e^{-st}\diff t \EE
&=\ff{\del}{\del x}\L[f(x,t)]=\ff{\del}{\del x}F(x,s)
\end{split}

以上より、冒頭に示した二変数関数のラプラス変換の結果を導けました。次節ではこれらの結果を用いて、ラプラス変換による波動方程式の解法を示していきます。

波動方程式のラプラス変換

それでは、今回の本題であるラプラス変換による波動方程式の解法を考えていきます。まずは、波動方程式のラプラス変換を導きます。

さて、波動方程式は以下のように表される方程式でした。($\A$ は実数)

\begin{eqnarray}
\ff{\del^2 y(x,t)}{\del x^2} = \A^2\ff{\del^2 y(x,t)}{\del t^2}
\end{eqnarray}

冒頭に示した性質を用いて、$t$ についてのラプラス変換を実行します。すると、

\begin{eqnarray}
\ff{\del^2}{\del x^2}F(x,s)=\A^2\left(s^2F(x,s)-sy(x,0)-\left.\ff{\del y}{\del t}\right|_{t=0} \right)
\end{eqnarray}

となります。初期条件として、$y(x,0)=0,\DL{\ff{\del y}{\del t}(x,0)=\sin \ff{\pi x}{l}}$ を与えると、

\begin{eqnarray}
\ff{\del^2}{\del x^2}F(x,s)=\A^2\left(s^2F(x,s)-\sin \ff{\pi x}{l} \right)
\end{eqnarray}

が得られます。

ここでさらに、変数 $x$ についてのラプラス変換を実行します。ラプラス変換表を参照しつつ、変換を実行するとこのようになります。

\begin{eqnarray}
\left(\xi^2 G(\xi,s)-\xi Y(0,s)-\ff{\del Y}{\del x}(0,s) \right)=\A^2\left(s^2G(\xi,s)-\ff{\pi l}{l^2\xi^2+\pi^2} \right)
\end{eqnarray}

初期条件として、$y(0,t)=0$ を与えると $Y(0,s)=0$ と変形できます。また、$\DL{\ff{\del Y}{\del x}(0,s)=A(s)}$ とします。これらを適用すると、$G(\xi,s)$ を以下のように整理できます。

\begin{eqnarray}
G(\xi,s)=\ff{A(s)}{\xi^2-\A^2s^2}-\ff{1}{\xi^2-\A^2s^2}\cdot \ff{\pi \A^2l}{l^2\xi^2+\pi^2}
\end{eqnarray}

が得られます。これについて次節にて解いて行き、波動方程式の解を決定します。

ラプラス変換による波動方程式の解法

準備が整ったので、これより波動方程式の解を導いていきます。まず、$G(\xi,s)$ の部分分数分解を実行すると、次の様になります。

\begin{eqnarray}
G(\xi,s)=\ff{A(s)}{\xi^2-\A^2s^2}-\ff{\pi \A^2l}{\pi^2+\A^2l^2s^2}\left(\ff{1}{\xi^2-\A^2s^2}-\ff{l^2}{l^2\xi^2+\pi^2} \right)
\end{eqnarray}

最初に $\xi$ についてラプラス逆変換を行います。ラプラス逆変換表を参照しつつ変換を実行すると、

\begin{split}
\L^{-1}[G(\xi,s)]&=Y(x,s)\EE
&=\ff{A(s)}{\A s}\sinh (\A s)x-\ff{\pi \A^2l}{\pi^2+\A^2l^2s^2}\left(\ff{1}{\A s}\sinh (\A s)x-\ff{l}{\pi}\sin\ff{\pi}{l}x \right)
\end{split}

となります。初期条件として $y(l,t)=0$ を与えると $Y(l,s)=0$ と言えます。ゆえに $x=l$ の場合を考えると、$A(s)$ を

\begin{split}
A(s)=\ff{\pi \A^2l}{\pi^2+\A^2l^2s^2}
\end{split}

と求められます。これを元の式に適用すると、

\begin{split}
Y(x,s)=\ff{\A^2l^2}{\A^2l^2s^2+\pi^2}\cdot \sin\ff{\pi}{l}x
\end{split}

と $Y(x,s)$ が得られます。最後に $s$ についてラプラス逆変換を実行すると、

\begin{split}
\L^{-1}[Y(x,s)]&=y(x,t)\EE
&=\ff{\A l}{\pi }\sin \ff{\pi}{\A l}t\cdot \sin\ff{\pi}{l}x
\end{split}

と波動方程式の解が得られます。この結果は、特性方程式を用いた波動方程式の解と一致します。

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