ラプラス変換とは?|ラプラス変換の定義と収束条件の証明

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今回から、線形常微分方程式を解くときに威力を発揮するラプラス変換について説明します。ここでは、ラプラス変換の定義とラプラス変換の収束する条件について説明します。

ラプラス変換の定義

$f(t)$ を $0 \leq t$ で定義された関数とする。このとき、$s$ の関数

\begin{eqnarray}
\L[f(t)] = F(s) = \int_0^{\infty} e^{-st} f(t) \diff t
\end{eqnarray}

を $f(t)$ のラプラス変換と呼び、$\L[f(t)]$ または、$\L[f]$ と書く。

なお、$f(t)$ を原関数( $t$ 関数、表関数)、$F(s)$ を像関数( $s$ 関数、裏関数)と呼ぶ。

ラプラス変換の収束条件

区間 $[0,\infty)$ で定義された関数 $f(t)$ が区分的に連続であり、指数 $\A$ 位の関数であるとする。

すなわち、$|f(t)|\le Me^{\A t}$ を満たす正の定数 $M,\A$ が存在するとき、

ラプラス変換は $\RM{Re}(s)>\A$ なる $s$ 平面上の領域で絶対収束する。

始めに、ラプラス変換の定義と簡単な例題について解いて行きます。

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ラプラス変換とは?

始めに、ラプラス変換とは次のように定義される変換のことです。(※ $\L$ は$L$ の筆記体です)

ラプラス変換の定義

$f(t)$ を $0 \leq t$ で定義された関数とする。このとき、$s$ の関数

\begin{eqnarray}
\L[f(t)] = F(s) = \int_0^{\infty} e^{-st} f(t) \diff t
\end{eqnarray}

を $f(t)$ のラプラス変換と呼び、$\L[f(t)]$ または、$\L[f]$ と書く。

なお、$f(t)$ を原関数( $t$ 関数、表関数)、$F(s)$ を像関数( $s$ 関数、裏関数)と呼ぶ。

一般に $f(t)$ は原関数( $t$ 関数、表関数)等と呼ばれ、$F(t)$ は像関数( $s$ 関数、裏関数)と呼ばれます。なお、特に断りが無い限り原関数 $f(t)$ は必ず $t<0$ にて $0$ とすることに注意して下さい。

また、変数 $s$ は実数に限らず複素数だとしても基本的にはラプラス変換を実行できます。

ラプラス変換の計算例

ラプラス変換の定義だけでは味気ないので、簡単な関数についてのラプラス変換を考えてみましょう。

例題 $1$:$f(t)=1\,\,(0 \leq t)$ をラプラス変換せよ。

定義に従い計算すると、$f(t)$ のラプラス変換は次のように計算されます。

\begin{split}
\L[1] &= \int_0^{\infty} e^{-st}\cdot 1\diff t \EE
&=\left[ -\ff{1}{s}e^{-st} \right]_0^{\infty}=\ff{1}{s}
\end{split}

ただし、$s$ の定義域は $s>0$ となります。(もし、$s\le 0$ だと上の積分が発散するためです)

例題 $2$:$f(t)=t\,\,(0 \leq t)$ をラプラス変換せよ。

\begin{split}
\L[t] &= \int_0^{\infty} e^{-st}\cdot t\diff t \EE
&=-\ff{1}{s}\left[ te^{-st} \right]_0^{\infty}+\ff{1}{s}\int_0^{\infty} e^{-st}\diff t \EE
&=-\ff{1}{s^2}\left[ e^{-st} \right]_0^{\infty}=\ff{1}{s^2}
\end{split}

上と同様の理由から、$s$ の定義域は $s>0$ となります。

例題 $3$:$\DL{f(t)=\left(\ff{\diff}{\diff t}t\right)}\,\,(0 \leq t)$ をラプラス変換せよ。

\begin{split}
\L[t] &= \int_0^{\infty} e^{-st}\cdot \left(\ff{\diff}{\diff t}t\right)\diff t \EE
&=\left[ -\ff{1}{s}e^{-st} \right]_0^{\infty}=\ff{1}{s}
\end{split}

同様にして $s$ の定義域は $s>0$ となります。また、この結果から、微分操作がラプラス変換の世界では $s$ を掛けるという四則演算の形になるというの重要な性質が垣間見えます。

一般の多項式や三角関数ベッセル関数などをラプラス変換した結果については別の機会に詳しく解説します。

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『区分的に連続』と『$\A$位の指数』とは?

ラプラス変換の定義から分かるように積分区間に無限が含まれています。そのため、ラプラス変換の結果が収束するとは言い切れません。ここからは、ラプラス変換が収束する条件について考えていきます。

これを考える準備として”区分的に連続”と”指数 $\A$ 位の関数”という用語について説明します。

区分的に連続とは?

まず、区分的に連続について説明します。今、区間 $[a,b]$ 内で定義された関数 $f(x)$ について考えます。なお、$f(x)$ は区間内に複数個の不連続点を持っていてもかまわないとします。

このとき、$f(x)$ が以下の性質も満たすとき、$f(x)$ は区分的に連続であると言います。

区分的に連続な関数とは?

区間 $[a,b]$ で定義された関数 $f(x)$ が有限個の不連続点 $x_i\,(i=1,2,\cdots,n)$ を除いて連続とする。
このとき、いずれの不連続点 $x_i$ においても左側極限と右側極限、すなわち、

$$
\left\{
\begin{split}
&\lim_{x\to x_i-0}f(x) \EE
&\lim_{x\to x_i+0}f(x)
\end{split}
\right.
$$

が存在し、さらに $f(x)$ の両端点 $a,b$ において右側極限 $\DL{\lim_{x\to a+0} f(x)}$ と左側極限 $\DL{\lim_{x\to b-0} f(x)}$ が存在するとき、$f(x)$ を区間 $[a,b]$ で区分的に連続な関数と呼ぶ。

区分的に連続な関数の模式図

次に、指数 $\A$ 位の関数について説明します。

指数 $\A$ 位の関数とは?

指数 $\A$ 位の関数とは以下で説明しているように、$0\le t$ の範囲で $-Me^{\A t}\le f(t)\le Me^{\A t}$ の領域に存在するような関数のことです。

指数 $\A$ 位の関数とは?

区間 $[0,\infty)$ で定義された関数 $f(x)$ について、

\begin{split}
|f(x)|\le Me^{\A x}\,\,\,(0\le x< \infty)
\end{split}

を満たす正の定数 $M,\A$ が存在するとき、$f(x)$ を指数 $\A$ 位の関数と呼ぶ。

指数α位の関数の模式図

これらの知識を用いて、ラプラス変換の収束条件を示します。

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ラプラス変換の収束条件

上で説明した内容を用いて、ラプラス変換が収束する条件について説明します。結論を最初に示しますが、以下の条件を満たすときラプラス変換は収束します。

ラプラス変換の収束条件

区間 $[0,\infty)$ で定義された関数 $f(t)$ が区分的に連続であり、指数 $\A$ 位の関数であるとする。

すなわち、$|f(t)|\le Me^{\A t}$ を満たす正の定数 $M,\A$ が存在するとき、

ラプラス変換は $\RM{Re}(s)>\A$ なる $s$ 平面上の領域で絶対収束する。

収束条件の中に、いきなり複素数の実部を表す記号 $\RM{Re}$ が登場して面食らうかもしれませんが、このようにした理由はラプラス変換複素関数に拡張することを見据えて、より一般の表現を採用したためです。

もちろん、$s$ が実数である場合もラプラス変換の収束条件は問題なく成立します。ラプラス変換の収束条件の証明を以下で行っていきます。

【ラプラス変換の収束条件の証明】

まず、前提条件より原関数 $f(t)$ は、

\begin{split}
|f(t)|\le Me^{\A t}
\end{split}

と言えます。次に $f(t)$ をラプラス変換すると定義から、

\begin{split}
\L[f(t)]=\int_0^{\infty} e^{-st} f(t) \diff t
\end{split}

となって、両辺の絶対値計算すると以下の不等式が得られます。

\begin{split}
\Big|\L[f(t)]\Big|&=\left| \int_0^{\infty} f(t)e^{-st} \diff t\right| \le \int_0^{\infty} \Big| f(t) e^{-st} \Big|\diff t
\end{split}

ここで、複素数 $s$ について $x,y$ を実数、$i$ を虚数単位として $s=x+iy$ とします。すると、

\begin{split}
e^{-st}&=e^{-xt-iyt} \\
&=e^{-xt}e^{-iyt} \\
&=e^{-xt}(\cos yt\q-i\sin yt\q)
\end{split}

とできます。ただし、二行目と三行目の変形でオイラーの公式を用いています。これより、

\begin{split}
|e^{-st}|&=|e^{-at}(\cos yt\q-i\sin yt\q)|\le e^{-xt}
\end{split}

と評価できます。この結果を元の不等式に適用すると、

\begin{split}
\Big|\L[f(t)]\Big|&\le \int_0^{\infty} \Big| f(t) e^{-st} \Big|\diff t \EE
&\le \int_0^{\infty} \Big| f(t) \Big|e^{-xt} \diff t
\end{split}

さらに評価できて、これに条件として与えられている $|f(t)|\le Me^{\A t}$ を適用すると、

\begin{split}
\Big|\L[f(t)]\Big|&\le \int_0^{\infty} \Big| f(t) \Big|e^{-xt} \diff t \EE
&\le \int_0^{\infty} Me^{\A t}e^{-xt} \diff t \EE
&=M\left[ \ff{1}{\A-\RM{Re}(s)}e^{(\A-\RM{Re}(s))t} \right]_0^{\infty}\EE
\end{split}

という不等式が得られます。分かり易くするため、最終行の計算では $x=\RM{Re}(s)$ という対応を用いています。

さて、最終行の結果が発散しないためには、指数部分 $\A-\RM{Re}(s)$ が負で無ければなりません。すなわち、

\begin{split}
&\A-\RM{Re}(s)<0 \EE
&\therefore\,\RM{Re}(s)>\A
\end{split}

でなければなりません。これより最初に述べた収束条件が示されました。また、この条件を満たすときは絶対収束することも言えます。

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