エルミート行列・ユニタリ行列とは?|線形代数入門④

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今回は以下のように定義されるエルミート行列ユニタリ行列について説明し、性質についても簡単に説明します。

エルミート行列とは?

行列 $A$ が以下の関係を満たすとき、$A$ をエルミート行列と呼ぶ。

\begin{split}
A=A^{*}
\end{split}

ただし、$A^{*}$ を随伴行列とする。

ユニタリ行列とは?

行列 $A$ が以下の関係を満たすとき、$A$ をユニタリ行列と呼ぶ。

\begin{split}
AA^{*}=A^{*}A=E
\end{split}

ただし、$A$ をエルミート行列、$E$ は単位行列を表すとする。

これらを説明する準備として、随伴行列と呼ばれる行列の説明から行います。

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随伴行列とは?

いきなりですが、次のような複素行列 $A$ があったとしましょう。

$$
A=
\begin{pmatrix}
1 & 1+i & -i \\
i & 2-2i & 3
\end{pmatrix}
$$

このとき、$A$ の成分 $a_{ij}$ の全てを共役複素数で置き換えた行列を $\overline{A}$ で表現します。今回は例では下のようになります。

$$
\overline{A}=
\begin{pmatrix}
1 & 1-i & i \\
-i & 2+2i & 3
\end{pmatrix}
$$

さらに、$\overline{A}$ の転置行列 ${}^t\overline{A}$ のことを共役転置行列、または随伴行列と呼び、$A^{*}$ で表します。今回の例では、随伴行列は以下のように表せます。

$$
A^{*}={}^t\overline{A}=
\begin{pmatrix}
1 & -i \\
1-i & 2+2i \\
i & 3
\end{pmatrix}
$$

次に、エルミート行列について説明します。

エルミート行列とは?

上で説明した随伴行列の中で、$A^{*}=A$ の関係を満たすような行列のことをエルミート行列と呼びます。

エルミート行列とは?

行列 $A$ が以下の関係を満たすとき、$A$ をエルミート行列と呼ぶ。

\begin{split}
A=A^{*}
\end{split}

ただし、$A^{*}$ を随伴行列とする。

エルミート行列の具体例として次のような行列が考えられます。

$$
B=
\begin{pmatrix}
1 & 1+i & -2i \\
1-i & 2 & -4 \\
2i & -4 & 3
\end{pmatrix}
$$

実際、$\overline{B}$ を考えると、

$$
\overline{B}=
\begin{pmatrix}
1 & 1-i & 2i \\
1+i & 2 & -4 \\
-2i & -4 & 3
\end{pmatrix}
$$

そして、${}^t\overline{B}=B^{*}$ は、

$$
{}^t\overline{B}=
\begin{pmatrix}
1 & 1+i & -2i \\
1-i & 2 & -4 \\
2i & -4 & 3
\end{pmatrix}
$$

となって、$B^{*}=B$ が言えます。すなわち、$B$ がエルミート行列であることが分かります。

ユニタリ行列とは?

次に、ユニタリ行列について説明します。ユニタリ行列は以下の関係を満たす行列のことです。

$$
AA^{*}=A^{*}A=E
$$

つまり、$A^{*}=A^{-1}$ となるとき、$A$ をユニタリ行列と呼びます。

ユニタリ行列とは?

行列 $A$ が以下の関係を満たすとき、$A$ をユニタリ行列と呼ぶ。

\begin{split}
AA^{*}=A^{*}A=E
\end{split}

ただし、$A^{*}$ はエルミート行列、$E$ は単位行列を表すとする。

ユニタリ行列の例として、

$$
C=
\begin{pmatrix}
\ff{i}{2} & \ff{1}{\sqrt{2}} & \ff{i}{2} \\
\ff{1}{2} & \ff{i}{\sqrt{2}} & \ff{1}{2} \\
-\ff{1}{\sqrt{2}} & 0 & \ff{1}{\sqrt{2}}
\end{pmatrix}
$$

が考えられます。このとき、$C^{*}$ は

$$
C^{*}=
\begin{pmatrix}
-\ff{i}{2} & \ff{1}{2} & -\ff{1}{\sqrt{2}} \\
\ff{1}{\sqrt{2}} & -\ff{i}{\sqrt{2}} & 0 \\
-\ff{i}{2} & \ff{1}{2} & \ff{1}{\sqrt{2}}
\end{pmatrix}
$$

となって、$CC^{*},C^{*}C$ を計算すると、

$$
\begin{split}
CC^{*}&=
\begin{pmatrix}
\ff{i}{2} & \ff{1}{\sqrt{2}} & \ff{i}{2} \\
\ff{1}{2} & \ff{i}{\sqrt{2}} & \ff{1}{2} \\
-\ff{1}{\sqrt{2}} & 0 & \ff{1}{\sqrt{2}}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
-\ff{i}{2} & \ff{1}{2} & -\ff{1}{\sqrt{2}} \\
\ff{1}{\sqrt{2}} & -\ff{i}{\sqrt{2}} & 0 \\
-\ff{i}{2} & \ff{1}{2} & \ff{1}{\sqrt{2}}
\end{pmatrix} \EE
&=\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 1 \\
\end{pmatrix} \EE
\end{split}
$$

$$
\begin{split}
C^{*}C&=
\begin{pmatrix}
-\ff{i}{2} & \ff{1}{2} & -\ff{1}{\sqrt{2}} \\
\ff{1}{\sqrt{2}} & -\ff{i}{\sqrt{2}} & 0 \\
-\ff{i}{2} & \ff{1}{2} & \ff{1}{\sqrt{2}}
\end{pmatrix}
\begin{pmatrix}
\ff{i}{2} & \ff{1}{\sqrt{2}} & \ff{i}{2} \\
\ff{1}{2} & \ff{i}{\sqrt{2}} & \ff{1}{2} \\
-\ff{1}{\sqrt{2}} & 0 & \ff{1}{\sqrt{2}}
\end{pmatrix} \EE
&=\begin{pmatrix}
1 & 0 & 0 \\
0 & 1 & 0 \\
0 & 0 & 1 \\
\end{pmatrix} \EE
\end{split}
$$

のように、単位行列となることから $C$ がユニタリ行列であることが分かります。

正規行列とは?

最後に正規行列について説明します。

正規行列とは?

行列 $A$ が以下の関係を満たすとき、$A$ を正規行列と呼ぶ。

\begin{split}
AA^{*}=A^{*}A
\end{split}

ただし、$A$ をエルミート行列とする。

なお、エルミート行列ユニタリ行列は常に正規行列となる。

上のように、エルミート行列および、ユニタリ行列正規行列となることが知られています。証明は次の様になります。

エルミート行列が正規行列であることの証明

$A$ がエルミート行列のとき、定義より以下が成立して

\begin{split}
A=A^{*}
\end{split}

これより、

$$AA^{*}=AA=A^{*}A$$

が成立します。ゆえに、エルミート行列は正規行列となります。

ユニタリ行列が正規行列であることの証明

$A$ がユニタリ行列のとき、

\begin{split}
A^{*}=A^{-1}
\end{split}

が成立します。これより、

$$
\left\{
\begin{split}
&AA^{*}=AA^{-1}=E\EE
&A^{*}A=A^{-1}A=E
\end{split}
\right.
$$

になります。これより、$AA^{*}=A^{*}A$ であると言えて、これよりユニタリ行列は正規行列となると言えます。

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