今回は平板の定常熱伝導を例として、熱伝導方程式の解法を見ていきます。
それでは、定常熱伝導における平板内の温度分布について導いていきます。
定常熱伝導・非定常熱伝導とは?
熱伝導の様子は定常熱伝導と非定常熱伝導の$2$種類に分けられます。
定常熱伝導と非定常熱伝導の違いは次のように述べられます。
熱伝導方程式の中で非定常熱伝導の部分を担うのが、左辺第一項です。
したがって、$\DL{\ff{\del T}{\del t} = 0}$ であれば定常熱伝導を表し、$\DL{\ff{\del T}{\del t} \neq 0}$ であれば非定常熱伝導を表すと言えます。
今回は定常熱伝導における平板内の温度分布について考えていきます。
平板の定常熱伝導の支配方程式
定常熱伝導における平板内の温度分布を求める準備として、このときの熱伝導方程式を導きます。
$z$ 方向に無限に長く、$y$ 方向に非常に薄い平板を考えると、この平板の熱伝導は $x$ 方向のみに伝熱する $1$ 次元問題と考えることができます。
したがって、平板の密度を $\rho$、熱伝導率を $k$、比熱を $c$ とすると熱伝導方程式は一旦、以下の様に記述できます。
\begin{split}
\ff{\del T}{\del t} &= \ff{k}{\rho c}\ff{\del^2\,T}{\del x^2}+ \ff{\dot{q_v}}{\rho c}
\end{split}
今回は最も簡単な、熱源が平板内に無く、定常熱伝導の場合について考えます。このとき、熱伝導方程式は、以下のようになります。
\begin{eqnarray}
0 &= \ff{k}{\rho c}\ff{\del^2\,T}{\del x^2}\tag{1}
\end{eqnarray}
平板の定常熱伝導を記述する支配方程式が得られました。次節にて、この微分方程式を解いて行きます。
定常熱伝導における平板内の温度分布の計算
式$(1)$を解いて実際に平板内の温度分布を求めていきます。定石通り、両辺を積分すると、
\begin{eqnarray}
\ff{k}{\rho c}\ff{\del T}{\del x} &= C_1
\end{eqnarray}
となり、さらに積分して、
\begin{eqnarray}
T(x)=\ff{\rho c}{k}C_1x+C_2 \tag{2}
\end{eqnarray}
と、平板内の温度場を導けました。ただし、$C_1,C_2$ を積分定数とします。
温度場を確定させるため、境界条件を設定する必要があります。ここでは、最も簡単なディリクレ条件を適用することとします。
すなわち、$x=0$ にて $T_0$ とし、$x=L$ にて $T_1$ であるとします。これを式$(2)$ に適用すると、$C_1, C_2$ を
$$
\left\{
\begin{split}
C_1 &= \ff{k}{\rho c L}(T_1-T_0) \\[8pt]
C_2 &= T_0
\end{split}
\right.
$$
と求められます。これより、温度場を、
\begin{split}
T(x)=T_0+\ff{T_1-T_0}{L}x
\end{split}
と確定できます。
平板を通過する熱流束
この平板を通過する熱流束 $q$ はフーリエの法則より次のように計算できます。
\begin{split}
q=-k\ff{\del\,T(x)}{\del x} = k\ff{T_0-T_1}{L}
\end{split}
また、単位時間当たりの伝熱量 $\dot{Q}$ は平板の面積を $A$ として、
\begin{split}
\dot{Q}=qA=kA\ff{T_0-T_1}{L}
\end{split}
と求められます。
ここで注目すべき点は、熱流束の大きさが $x$ に無関係であり一定の値を取ることです。このように、内部に発熱の無い、平板の定常熱伝導においては、内部を通過する熱流束の大きさは、壁からの距離に無関係で一定となります。
この関係は、多層平板でも変わらず、どの平板を通過する熱流束の大きさも同じになります。
定常熱伝導であることが分かっている場合、この性質を利用でき、熱伝導方程式を解く手間を省けます。また、電気回路のアナロジーとして、平板の定常熱伝導の問題を扱えるようになります。