熱伝導方程式とは?|熱伝導を記述する基礎方程式の理論と導出

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熱伝導方程式とは熱伝導における温度分布の時間変化を記述する微分方程式です。

熱伝導方程式は次のように記述されます。なお、熱伝導方程式の解法については、こちらで説明しています。

熱伝導方程式

$T$ を温度、$\rho$ を密度、$c$ を比熱、$k$ を熱伝導率とする。

このとき、熱伝導方程式は次のように記述される。

\begin{split}
\ff{\del T}{\del t} = \ff{k}{\rho c}\nabla^2\,T + \ff{\dot{q_v}}{\rho c}
\end{split}

ただし、$\dot{q_v}$ を単位時間・単位体積当たりの発熱量とする。

今回は熱伝導方程式の述べる内容と、導出方法について解説します。

※ 式中の $\nabla$ はナブラと読みます。ナブラの意味についてはこちらを参照してください。

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熱伝導方程式とは?

熱伝導における温度分布とその時間変化を表した微分方程式は熱伝導方程式と呼ばれ、以下のように記述されます。

熱伝導方程式

$T$ を温度、$\rho$ を密度、$c$ を比熱、$k$ を熱伝導率とする。

このとき、熱伝導方程式は次のように記述される。

\begin{split}
\ff{\del T}{\del t} &= \ff{k}{\rho c}\left(\ff{\del^2\,T}{\del x^2}+\ff{\del^2\,T}{\del y^2}+\ff{\del^2\,T}{\del z^2} \right)+ \ff{\dot{q_v}}{\rho c}\\
\,
\end{split}

ただし、$\dot{q_v}$ を単位時間・単位体積当たりの発熱量とする。

以前解説したように、温度 $T$ は位置と時間を変数に持つ多変数関数です。熱伝導方程式を解くことで $T$ が分かれば、物体内のある瞬間での温度分布と、時間経過によるその変化についての情報を完全に得ることができます。

なお、式中に現れる $\DL{\ff{k}{\rho c}}$ は熱拡散率と呼ばれ、$\A$ とも表されます。

熱拡散率とは?

$\rho$ を密度、$c$ を比熱、$k$ を熱伝導率とする。

このとき、熱拡散率 $\A$を次のように定義する。

\begin{split}
\A=\ff{k}{\rho c}\\
\,
\end{split}

なお、熱伝導方程式は $\nabla$ (ナブラ)を使って次のようにも記述できます。

ラプラシアンを用いた熱伝導方程式

\begin{split}
\ff{\del T}{\del t} = \ff{k}{\rho c}\nabla^2\,T + \ff{\dot{q_v}}{\rho c} \\
\,
\end{split}

式中の $\nabla$ はナブラと読みます。ナブラの意味についてはこちらを参照してください。

熱伝導方程式とその解法

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熱伝導方程式の導出

それでは、熱伝導方程式の導出方法について見ていきます。導出の準備として、図のような微小要素を出入りする熱エネルギーの収支について考えます。

発熱する微小要素の熱流束の収支

物体の密度を$\rho$、比熱を $c$、熱伝導率を $k$ とし、各面を通過する熱流束を $q_x$ などと置きます。

このとき、エネルギー収支の関係から、内部エネルギーの変化 $\D U$ は、流入したエネルギー $E_{in}$ と流出したエネルギー $E_{out}$、そして微小要素内での発熱量を $E_s$ として、これらの間には以下の関係が成立します。

\begin{eqnarray}
\D U = E_{in}-E_{out}+E_s \tag{1}
\end{eqnarray}

$\D t$ 秒間の間に $\D T$ の温度変化があったとすると、$\D U$ は、

\begin{split}
\D U = \rho c (\diff x\diff y\diff z) \D T
\end{split}

とでき、次に $E_{in},E_{out}$ を考えると、

$$
\left\{
\begin{split}
E_{in} &= \big\{q(x)\diff y\diff z+q(y)\diff x\diff z+q(z)\diff x\diff y\big\}\D t \EE
E_{out} &= \big\{ q(x+\diff x)\diff y\diff z+q(y+\diff y)\diff x\diff z\EE
&\qquad+q(z+\diff z)\diff x\diff y\big\}\D t
\end{split}
\right.
$$

と表せます。最後の $E_s$ は、

\begin{split}
E_s = \dot{q}_v (\diff x\diff y\diff z) \D t
\end{split}

とできます。以上を式$(1)$に適用して整理すると、

\begin{split}
\rho c \ff{\D T}{\D t} &= -\ff{q(x+\diff x)-q(x)}{\diff x}-\ff{q(y+\diff y)-q(y) }{\diff y}\EE
&\qquad-\ff{q(z+\diff z)-q(z)}{\diff z}+\dot{q}_v\qquad (2)
\end{split}

が得られます。さて、$q(x+\diff x)$ については、テーラー展開を用いて次のように近似でき、

\begin{split}
q(x+\diff x)\NEQ q(x) + \ff{\del q(x)}{\del x}\diff x
\end{split}

これより、$\DL{q(x+\diff x)-q(x)\NEQ\ff{\del q(x)}{\del x}\diff x}$ と表せることが分かります。したがって、これにフーリエの法則を適用すると、上式は、

\begin{split}
q(x+\diff x)-q(x)\NEQ\ff{\del q(x)}{\del x}\diff x=k\ff{\del^2 T}{\del x^2}\diff x
\end{split}

とできます。以上より、式$(2)$を、

\begin{split}
\rho c \ff{\D T}{\D t} = k\ff{\del^2 T}{\del x^2}+k\ff{\del^2 T}{\del y^2}+k\ff{\del^2 T}{\del z^2}+\dot{q}_v
\end{split}

変形でき、さらに時間の極限を考えると、

\begin{split}
\rho c \ff{\del T}{\del t} = k\ff{\del^2 T}{\del x^2}+k\ff{\del^2 T}{\del y^2}+k\ff{\del^2 T}{\del z^2}+\dot{q}_v
\end{split}

となります。整理して、以下の式が得られます。

\begin{split}
\ff{\del T}{\del t} &= \ff{k}{\rho c}\left(\ff{\del^2\,T}{\del x^2}+\ff{\del^2\,T}{\del y^2}+\ff{\del^2\,T}{\del z^2} \right)+ \ff{\dot{q_v}}{\rho c}
\end{split}

このようにして、熱伝導方程式を無事導出できました。なお、熱伝導方程式はラプラシアンを用いて

\begin{split}
\ff{\del T}{\del t} &= \ff{k}{\rho c}\nabla^2 T+ \ff{\dot{q_v}}{\rho c}
\end{split}

とも記述できます。

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熱伝導方程式の境界条件

熱伝導方程式を解く場合、温度場を確定させるために境界条件を設定する必要があります。ここでは、代表的なディリクレ条件ノイマン条件と呼ばれる境界条件について解説します。

熱伝導方程式の形から分かるように、時間については$1$階、空間については$2$階微分となっています。ゆえに、温度についての時間条件を$1$個、空間条件を$2$個用意する必要があります。

ディリクレ条件とは?

ディリクレ条件では、物体の境界での温度が常に一定という条件を与えます。つまり、壁での温度を $T_w$ として

\begin{split}
T_w=const.
\end{split}

という条件を与えます。このような設定をするため、ディリクレ条件は壁温一定の条件とも言います。

ノイマン条件

ノイマン条件とは?

ノイマン条件では、物体の境界での入熱が常に一定という条件を与えます。つまり、壁を通過する熱流束を $q_w$ として

\begin{split}
q_w=-k\left.\ff{\del T}{\del x}\right|_{x=0}=const.
\end{split}

という条件を与えます。このような設定をするため、ノイマン条件は熱流束一定の条件とも言われます。

ディリクレ条件

特に $q_w=0$ のときを断熱条件と呼びます。

熱伝導方程式の解法については、こちらを参照ください。

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