今回は、内部に発熱の無い円筒の定常熱伝導を例として、熱伝導方程式の解法を見ていきます。
このときの熱伝導方程式を解くと、円筒内部の温度分布は次のように表せます。
それでは、定常熱伝導における円筒内の温度分布について導いていきます。
円筒の定常熱伝導の支配方程式
平板の定常熱伝導に引き続き、今回は内部に発熱の無い円筒の定常熱伝導について考えていきます。
定常熱伝導における円筒内の温度分布を求める準備として、このときの熱伝導方程式を導くことを考えます。
下図のように、円筒内に発熱が無いとき、温度は半径方向に関してのみ変化します。したがって、今回の問題は、半径方向に関する $1$ 次元問題と見なすことができます。
ところで、円筒に関する伝熱問題を解きやすくするため、熱伝導方程式をデカルト座標系から円筒座標系に変換してやる必要があります。
変換過程の詳細については省きますが、円筒座標系での熱伝導方程式は次のように記述されます。
\begin{split}
\ff{\del T}{\del t} &= \ff{k}{\rho c}\left(\ff{\del^2}{\del r^2}+\ff{1}{r}\ff{\del}{\del r}+\ff{1}{r^2}\ff{\del^2}{\del \q^2}+\ff{\del^2}{\del z^2} \right)T+ \ff{\dot{q_v}}{\rho c}
\end{split}
今回は、半径方向の $1$ 次元問題として考えているため、$\q$ と $z$ についての項は無視できて、上式は一旦、
\begin{split}
\ff{\del T}{\del t} &= \ff{k}{\rho c}\left(\ff{\del^2}{\del r^2}+\ff{1}{r}\ff{\del}{\del r} \right)T+ \ff{\dot{q_v}}{\rho c}
\end{split}
と書け、定常熱伝導を考えており、かつ内部に発熱も無いため、さらに簡単にでき、
\begin{eqnarray}
0 &= \ff{k}{\rho c}\left(\ff{\diff^2}{\diff r^2}+\ff{1}{r}\ff{\diff}{\diff r} \right)T\tag{1}
\end{eqnarray}
とできます。この微分方程式が目標としていた、定常熱伝導における円筒の熱伝導を記述する方程式となります。
定常熱伝導における円筒の温度分布の計算
式$(1)$を解いて、発熱の無い円筒内の定常熱伝導における温度分布を求めていきます。
式$(1)$をいきなり解く前に、もう一ひねり加えて、見通しを良くします。具体的には、次のような変形を行います。
\begin{split}
0 &= \ff{k}{\rho c}\left(\ff{\diff^2}{\diff r^2}+\ff{1}{r}\ff{\diff}{\diff r} \right)T \EE
&= \ff{k}{\rho c}\left(r\ff{\diff^2}{\diff r^2}+\ff{\diff}{\diff r} \right)T \EE
&= \ff{k}{\rho c}\ff{\diff}{\diff r}\left(r\ff{\diff T}{\diff r} \right) \EE
\end{split}
上式に対して積分を実行すると、
\begin{split}
&\ff{k}{\rho c}\left(r\ff{\diff T}{\diff r} \right) = C_1 \EE
\therefore\, &\ff{\diff T}{\diff r} = \ff{C_1\rho c}{k}\cdot\ff{1}{r}
\end{split}
となり、さらに積分を行うと、
\begin{split}
T(r) = \ff{C_1\rho c}{k}\ln r+C_2
\end{split}
となり、円筒内の温度分布が求められました。
ここから積分定数 $C_1, C_2$ を求め、温度分布を確定させます。
なお、境界条件として、ディリクレ条件を適用します。すなわち、$r=r_0$ にて $T_0$ とし、$r=r_1$ にて $T_1$ であるとすると、$C_1, C_2$ を
$$
\left\{
\begin{split}
C_1 &= \ff{k}{\rho c }\cdot\ff{(T_1-T_0)}{\ln \ff{r_0}{r_1}} \\[8pt]
C_2 &= -\ff{T_0\ln r_1-T_1\ln r_0}{\ln\ff{r_0}{r_1}}
\end{split}
\right.
$$
と求められます。これより、温度分布を、
\begin{split}
T(r)=T_0+(T_1-T_0)\ff{\ln \ff{r}{r_0}}{\ln \ff{r_1}{r_0}}
\end{split}
と確定できます。
円筒を通過する熱流束と伝熱量の計算
求めた温度分布から、円筒を通過する熱流束と伝熱量の大きさを求めることができます。
まず、熱流束の大きさについては、フーリエの法則より次のように求められます。
\begin{split}
q&=-k\ff{\del T(r)}{\del r} \EE
&=\ff{k}{r}\cdot\ff{(T_0-T_1)}{\ln \ff{r_1}{r_0}}
\end{split}
これより、円筒の中心から位置 $r$ における伝熱量の大きさ $\dot{Q}(r)$ は、
\begin{split}
\dot{Q}(r)&=2\pi rL q = \ff{2\pi kL(T_0-T_1)}{\ln \ff{r_1}{r_0}}
\end{split}
と求められます。ただし、円筒の長さを $L$ とします。
これらの計算結果から、内部に発熱の無い円筒を通過する伝熱量は半径方向の位置に関わらず一定であることが分かります。
※ 熱流束の大きさは半径方向で変わります。発熱の無い平板の定常熱伝導での熱流束の性質とは異なることに注意してください。