定積比熱・定圧比熱とは?|熱力学第一法則の応用

スポンサーリンク
ホーム » 熱力学 » 定積比熱・定圧比熱とは?|熱力学第一法則の応用

今回は熱力学で重要な定積比熱定圧比熱の定義と、その定式化について解説します。

さて、定積比熱と定圧比熱の定義とその式は次のように表されます。

定積比熱

定積比熱体積一定の状態で、単位質量の気体の温度を単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量のこと

定積比熱 $c_v$ は$u$ を単位質量当たりの内部エネルギーとして次のように表される

\begin{split}
c_v&=\left.\ff{\del u}{\del T}\right|_{v}\\
\,
\end{split}

定圧比熱

定圧比熱圧力一定の状態で、単位質量の気体の温度を単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量のこと

定圧比熱 $c_p$ は$h$ を単位質量当たりのエンタルピーとして次のように表される

\begin{split}
c_p&=\left.\ff{\del h}{\del T}\right|_{p}\\
\,
\end{split}

併せてエンタルピーの定義とその物理的意味についても解説します。

スポンサーリンク

準静的微小変化と熱力学第一法則

まずは、図のような断面積 $A$ のシリンダとピストン、そしてシリンダの中が圧力 $p$ の気体で満たされた閉じた系について考えましょう。

シリンダとピストンの準静的過程

簡単のため、ピストンとシリンダの間に摩擦は無く、また周囲も真空であるとします。

このとき、ピストンを静止した状態で保持するため、ピストンを大きさ $F$ の力で押しているとします。

ここで、ピストンを $\diff x$ だけ微小に動かすと、気体は外部に対して $W=F\diff x$ の仕事すると言えます。

したがって、熱力学第一法則より

\begin{split}
\D U = \delta Q-F\diff x
\end{split}

と表せることが分かります。系に流入(流出)したを $\delta Q$ と表示したのは、熱が出入りしているのを明示的に示すためです。

今、準静的過程について考えているため、

\begin{split}
F = pA
\end{split}

の関係を満たすと言えます。ゆえに、$W=F\diff x=pA\diff x$ と変形でき、さらに微小な体積を $\diff V=A\diff x$ と置くことができるため、

\begin{split}
\D U = \delta Q-p\,\diff V
\end{split}

と表示できます。

今考えているのは、微小な準静的過程のため、$\D U$ を $\diff U$ ともできます。以上より、次のような表式が得られます。

準静的微小変化に対する熱力学第一法則

\begin{split}
\diff U = \delta Q-p\,\diff V \\
\,
\end{split}

上式は、準静的微小変化に対する熱力学第一法則と呼ばれます。この式は準静的過程に対してのみ適用できることに注意が必要です。

工学上は単位質量当たりの表式の方が便利なため、準静的微小変化に対する熱力学第一法則として、

\begin{split}
\diff u = \delta q-p\,\diff v
\end{split}

を用いる場面が多々あります。

ところで、微小な変化を足し合わせることで、状態 $1$ から状態 $2$ までの過程での内部エネルギーの増減を計算することができます。

すなわち、状態 $1$ から状態 $2$ までに系に流入した熱量を $Q_{12}$ とし、状態 $1$ と $2$ の内部エネルギーの大きさを $U_1,U_2$ として、その変化は次のように計算できます。

\begin{split}
U_2-U_1 = Q_{12}-\int_1^2p\,\diff V
\end{split}

次節にて、定積比熱定圧比熱の定義と、その表式について解説します。

スポンサーリンク

定積比熱・定圧比熱とは?

さて、物体の温度を、単位温度だけ上昇させるために必要な熱量のことを熱容量と呼びます。

熱容量

熱容量:物体の温度を単位温度だけ上昇させるために必要な熱量のこと

熱容量は $C$ を使って表すことが多く、単位は $\RM{J/K}$ が用いられます。

また、単位質量当たりに、単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量を比熱と呼びます。

比熱

比熱単位質量当たりに、単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量のこと

熱容量と比熱の関係を図示すると、以下のようになります。図では、温度が $\D T$ 上昇した場合に流入した熱量の計算方法について表しています。

熱容量と比熱

定積比熱・定圧比熱とは?

比熱の考え方は気体にも適用できます。ただし、気体の体積を一定とした場合と、気体の圧力を一定とした場合に分けて考える必要があります。

まず、体積一定の状態で、単位質量の気体の温度を、単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量のことを、定積比熱と呼ぶことにします。

定積比熱

定積比熱体積一定の状態で、単位質量の気体の温度を単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量のこと

定積比熱は $c_v$ を用いて表し、その単位として $\RM{J/kg\cdot K}$ を用います。

一方、圧力一定の状態で、単位質量の気体の温度を単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量のことを、定圧比熱と呼ぶことにします。

定圧比熱

定圧比熱圧力一定の状態で、単位質量の気体の温度を単位温度だけ上昇させるのに必要な熱量のこと

定圧比熱は $c_p$ を用いて表し、その単位として $\RM{J/kg\cdot K}$ を用います。

これらと、準静的微小変化における熱力学第一法則との対応関係を見ていくことにします。

まず、単位質量当たりの準静的微小変化における熱力学第一法則は、先述したように、

\begin{split}
\diff u = \delta q-p\,\diff v
\end{split}

とできました。

これに対して、体積を一定としたときの状況を考えると、

\begin{split}
\diff u = \delta q
\end{split}

とできることが分かります。ところで、定積比熱の定義より、$\delta q=c_v\diff T$ の関係があるため、

\begin{split}
\diff u &= c_v\diff T \EE
\therefore\,c_v&=\ff{\diff u}{\diff T}
\end{split}

と変形できます。これは、定積比熱が次のように表せることを意味します。

\begin{split}
c_v&=\left.\ff{\del u}{\del T}\right|_{v}
\end{split}

この形の類推から、定圧比熱も $\DL{c_p=\left.\ff{\del u}{\del T}\right|_{p}}$ と表せそうに感じますが、これは誤りで、正しくはエンタルピーなる物理量 $h$ を用いて、

\begin{split}
c_p&=\left.\ff{\del h}{\del T}\right|_{p}
\end{split}

の関係となります。次節にて、エンタルピーなる物理量について解説します。

スポンサーリンク

エンタルピーの定義と定圧比熱

物理的意味は置いておいて、次のように定義される物理量をエンタルピーと呼びます。

エンタルピーの定義

$U$ を内部エネルギー、$p$ を気体の圧力、$V$ を気体の体積とする。

このとき、エンタルピー $H$ を次のように定義する。

\begin{split}
H&=U+pV
\end{split}

また、単位質量当たりのエンタルピーを比エンタルピーと呼び、$h$ で表す。

エンタルピーは $H$ を用いて表し、その単位として $\RM{J}$ を用います。

エンタルピーの物理的意味を調べるため、まず、エンタルピーの変化 $\diff H$ について計算しましょう。これは、定義より次のように表せます。

\begin{split}
\diff H&=\diff U+\diff p\,V+p\,\diff V
\end{split}

ここで、定圧過程に限って考えるとします。このとき、$\diff p=0$ であるため、

\begin{split}
\diff H&=\diff U+p\,\diff V
\end{split}

という関係が成立します。

さらに、準静的微小変化に対する熱力学第一法則を適用すると、$\diff U = \delta Q-p\,\diff V$ であるため、

\begin{split}
\diff H&=\delta Q
\end{split}

となります。ここまで来ると、エンタルピーの物理的意味が見えてきます。すなわち、エンタルピーの変化は、定圧過程において系に流入(流出)した熱量と一致することが分かります。

エンタルピーの変化と熱量の関係

定圧過程において、エンタルピーの変化は系に流入(流出)した熱量と一致する

また、エンタルピーは系に含まれる全エネルギーを表すことが分かります。

ところで、定圧比熱は定義より $\delta q = c_p\diff T$ の関係にあるため、

\begin{split}
\diff H&=c_p\,\diff T \\[7pt]
\therefore\,c_p&=\ff{\diff h}{\diff T}
\end{split}

と言えます。

これより、定積比熱を次のように表せることが分かります。

\begin{split}
c_p&=\left.\ff{\del h}{\del T}\right|_{p}
\end{split}

タイトルとURLをコピーしました