マイヤーの関係式とは?|定積比熱と定圧比熱の関係式の導出

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気体の温度上昇と系に流入した熱量の間には一定の関係があり、それらには定積比熱定圧比熱の二種類があることを学びました。

今回は、定積比熱と定圧比熱の具体的な関係を導くことを考えます。結論から示すと、気体定数を用いて、これらは以下のように表せます。

理想気体の定積比熱と定圧比熱

気体定数を $R$ として単原子分子理想気体定積比熱 $c_v$ と定圧比熱 $c_p$ は次のように表せる。

$$
\left\{
\begin{split}
&c_v=\ff{3}{2}R \EE
&c_p=\ff{5}{2}R
\end{split}
\right.
$$

※ 定積比熱と定圧比熱は気体固有

なお、定圧比熱を計算する過程で以下のマイヤーの関係式を導出できます。

マイヤーの関係式

理想気体において、定積比熱 $c_v$ と定圧比熱 $c_p$ との間に以下の関係が成立する。

\begin{split}
c_p-c_v=R
\end{split}

この関係をマイヤーの関係式と呼ぶ。ただし、$R$ を気体定数とする。

今回は、マイヤーの関係式の導出過程について解説します。

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ボイル・シャルルの法則と気体定数

熱力学にて主に取り扱う、気体の基本的な性質について復習することから始めます。

ボイル・シャルルの法則

さて、気体の圧力 $p$・体積 $V$・温度 $T$ の間には密接な関係があることが実験により確かめられており、圧力と体積の関係についてはボイルの法則、体積と温度の関係についてはシャルルの法則が知られています。

熱力学ではこれらを併せた、次のボイル・シャルルの法則が重要になります。

ボイル・シャルルの法則

一定質量の気体の体積 $V$ は圧力 $p$ に反比例し、絶対温度 $T$ に比例する

\begin{split}
\ff{pV}{T} = const. \\
\,
\end{split}

ただし、ボイル・シャルルの法則が厳密に成立するのは理想気体のみであることに注意が必要です。

気体定数・一般気体定数とは?

ボイル・シャルルの法則を単位質量当たりの体積とした関係式、$\DL{\ff{pv}{T} = const.}$ に直します。

今、定数を $R$ とおいて上式を変形すると、

\begin{split}
pv = RT
\end{split}

とできます。

ここで、$R\,\,[\RM{J/kg\cdot K}]$ のことを気体定数と呼ぶことにします。気体定数はその気体固有の値となります。

気体定数を用いることで、質量が $m$ の気体に対して

\begin{split}
pV = mRT
\end{split}

という関係式を導出することができます。この方程式を気体の状態方程式と呼びます。

ところで、$M$ を気体の分子量、$n$ をモル数とすると、$m=nM$ の関係にあるため、

\begin{split}
pV = nMRT = nR_0T
\end{split}

と変形できます。

さて、$R_0=MR$ は気体の種類に関わらず一定の値を取るため、$R_0$ を一般気体定数あるいは、普遍気体定数と呼びます。

一般気体定数は、下記の数値となります。

\begin{split}
R_0 = MR = 8.314\, \RM{J/mol\cdot K}
\end{split}

一般気体定数とは?

$M$ をある気体の分子量、$R$ を気体定数として、一般気体定数 $R_0$ は次のように表せる。

\begin{split}
R_0 = MR = 8.314\, \RM{J/mol\cdot K} \\
\,
\end{split}

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理想気体の内部エネルギーと定積比熱

次に、理想気体における定積比熱一般気体定数 $R_0$ の関係について見ていきましょう。簡単のため、単原子分子の理想気体について考えることにします。

これについては、以前に気体分子運動論にて論じたように、内部エネルギーは次のように表せました。

\begin{split}
U=\ff{3}{2}nR_0T
\end{split}

したがって、内部エネルギーの変化は

\begin{split}
\D U=\ff{3}{2}nR_0\D T
\end{split}

と表すことができます。

ところで、定積過程での熱力学第一法則を考えると、内部エネルギーの変化と流入(流出)した熱量の間には、

\begin{split}
\D U=Q
\end{split}

の関係がありました。また、定圧比熱の定義より、$Q=mc_v\D T$ であるので、

\begin{split}
\D U&=\ff{3}{2}nR_0\D T=mc_v\D T \EE
\therefore\, c_v&=\ff{3}{2}\ff{n}{m}R_0=\ff{3}{2}R
\end{split}

の関係にあることが分かります。

これより、定積比熱は気体定数のみにより決まることが言えます。

理想気体の定積比熱

気体定数を $R$ として単原子分子の理想気体の定積比熱 $c_v$ は次のように表せる。

\begin{split}
c_v=\ff{3}{2}R
\end{split}

※ 定積比熱は気体固有

次に、定圧比熱 $c_p$ を導出してみましょう。このとき、鍵になるのがマイヤーの関係式です。

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マイヤーの関係式の導出

定圧比熱気体定数の関係を導くにあたり、定積比熱と定圧比熱が次のようにも表せることを思い出しましょう。

$$
\left\{
\begin{split}
c_v&=\left.\ff{\del u}{\del T}\right|_{v}\EE
c_p&=\left.\ff{\del h}{\del T}\right|_{p}
\end{split}
\right.
$$

→定圧比熱と定積比熱の関係式

ここで、$h$ は比エンタルピーと呼ばれる物理量であり、$h=u+pv$ と表されます。

さて、内部エネルギーが $v$ と $T$ の $2$ 変数関数として表せると考え、全微分を実行すると、

\begin{split}
\diff u&=\left.\ff{\del u}{\del T}\right|_v\diff T+\left.\ff{\del u}{\del v}\right|_T\diff v\EE
&=c_v\,\diff T+\left.\ff{\del u}{\del v}\right|_T\diff v
\end{split}

とできます。

これに、定圧過程においては $\diff h = \diff q$ の関係にあることと、準静的過程に対する熱力学第一法則を適用すると、

\begin{split}
\diff h &= \diff q = \diff u+p\diff v\EE
&= c_v\,\diff T+\left.\ff{\del u}{\del v}\right|_T\diff v+p\diff v \EE
\therefore\, \ff{\diff h}{\diff T} &= c_v+\left({\left.\ff{\del u}{\del v}\right|_T}+p \right)\left.\ff{\diff v}{\diff T}\right|_p
\end{split}

とできます。

ところで、理想気体の内部エネルギーは $\DL{u=\ff{3}{2}RT}$ となることから分かるように、$T$ のみの一変数関数です。

そのため、理想気体の場合は $\DL{\left.\ff{\del u}{\del v}\right|_T=0}$ となります。また、$\DL{\left.\ff{\diff v}{\diff T}\right|_p}$ の値については、気体の状態方程式より次のように計算できます。

\begin{split}
\left.\ff{\diff v}{\diff T}\right|_p &= \left.\ff{\diff}{\diff T} {\left(\ff{RT}{p} \right)} \right|_p \EE
&= \ff{R}{p}
\end{split}

となります。以上より、

\begin{split}
\ff{\diff h}{\diff T} &= c_v+R
\end{split}

と求められます。今、$c_p=\DL{\ff{\diff h}{\diff T}}$ であるので、

\begin{split}
c_p &= c_v+R
\end{split}

であることが導けます。このような関係をマイヤーの関係式と呼びます。

マイヤーの関係式

理想気体において、定積比熱 $c_v$ と定圧比熱 $c_p$ との間に以下の関係が成立する。

\begin{split}
c_p-c_v=R
\end{split}

この関係をマイヤーの関係式と呼ぶ。ただし、$R$ を気体定数とする。

以上、マイヤーの法則より、単原子分子の理想気体の定圧比熱 $c_p$ を、

理想気体の定積比熱

気体定数を $R$ として単原子分子理想気体の定圧比熱 $c_p$ は次のように表せる。

\begin{split}
c_p=\ff{5}{2}R
\end{split}

※ 定積比熱は気体固有

と求められます。

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