ビオ数・フーリエ数とは?|熱伝導に関わる無次元数の解説と導出

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対象の物体の熱伝導熱伝達のどちらが優勢なのかは、温度分布を推定する上で重要な情報となります。

この情報を教えてくれるのが、ビオ数と呼ばれる無次元数です。

ビオ数の定義

$k$ を固体の熱伝導率、$h$ を熱伝達率、$L$ を物体の代表長さとする。

このとき、ビオ数 $Bi$ を次のように定義する。

\begin{split}
Bi = \ff{hL}{k}\\
\,
\end{split}

また、加熱された物体が、どの程度の時間で均一な温度となるのかも興味の対象となりますが、フーリエ数と呼ばれる数値を計算することで、熱伝導方程式を解かずともこの時間を簡易的に推定できます。

フーリエ数の定義

$\A$ を熱拡散率、$t$ を時間、$L$ を物体の代表長さとする。

このとき、フーリエ数 $Fo$ を次のように定義する。

\begin{split}
Fo = \ff{\A t}{L^2}\\
\,
\end{split}

今回は、ビオ数 $Bi$ とフーリエ数 $Fo$ の定義と計算例、そして導出過程について解説します。

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ビオ数とは?

物体内部の熱伝導と、物体表面での熱伝達の相対的な大きさを表す無次元数をビオ数と呼びます。

すなわち、ビオ数は次のように定義されます。

ビオ数の定義

$k$ を固体の熱伝導率、$h$ を熱伝達率、$L$ を物体の代表長さとする。

このとき、ビオ数 $Bi$ を次のように定義する。

\begin{split}
Bi = \ff{hL}{k}\\
\,
\end{split}

ビオ数の形から分かるように、熱伝導熱伝達のどちらが優勢かを表した無次元数であり、物体に発熱が無いとき、ビオ数は特に有用となります。

例えば、$Bi\ll 1$ であれば、熱伝達による表面での熱の出入りが、物体内部の熱伝導による熱の移動に比べて非常に小さいことが分かります。

これは、物体内部と表面の温度が同一と近似できることを意味します。このとき、集中熱容量モデルと呼ばれる簡略モデルを使って温度変化を計算できるようになります。

一方、ビオ数が $1$ を超えると、物体内部の熱伝導よりも熱伝達による表面での熱の出入りが速いことを意味します。この場合は、固体内部の温度分布を真面目に考慮しなければなりません。

このように、ビオ数は物体の温度分布を求める際、熱伝導方程式をどのような形で計算するかの判定条件として使うことができます。

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フーリエ数とは?

ビオ数とセットとなる無次元数にフーリエ数があります。フーリエ数は次のように定義される無次元数です。

フーリエ数の定義

$\A$ を熱拡散率、$t$ を時間、$L$ を物体の代表長さとする。

このとき、フーリエ数 $Fo$ を次のように定義する。

\begin{split}
Fo = \ff{\A t}{L^2}\\
\,
\end{split}

フーリエ数は、個体内に蓄えられた熱エネルギーに対して、熱伝導で単位時間当たりに移動する熱エネルギーの割合を表した数値です。

フーリエ数からは、ある時刻で物体の温度分布がどの程度均一になっているかを推測できます。

例として、初期に均一な温度 $T_0$ にある厚さが $L$ の平板があり、平板の片側が、時刻 $t = 0$ にて $T_h$ まで加熱されとします。

平板の反対側が温度変化を示すのにかかる所要時間 $t_d$ をフーリエ数から推測することができます。

$Fo\ll 1$ の場合、反対側の温度が変化するのに十分な時間が経過していないことを意味します。この時点では、大きな温度変化は加熱面の付近のみで生じており、平板の大部分は $T_0$ に留まっていると言えます。

$F_o \NEQ 1$ の場合では、平板全体に渡って温度変化が生じており、反対側の温度も $T_0$ から変化を始めます。

最後に $1\ll F_o$ では、平板の温度分布が一定になるのに十分な時間が経過してることを意味し、平板全体の温度が $T_h$ となっていると言えます。

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ビオ数とフーリエ数の用途

ビオ数とフーリエ数を利用して、アルミ板(熱伝導率:$240\, \RM{W/(mK)}$, 熱拡散率:$9.8\times10^{-5}\, \RM{m^2/s}$)と石英ガラスの板(熱伝導率:$1.4\, \RM{W/(mK)}$, 熱拡散率:$8.6\times10^{-7}\, \RM{m^2/s}$)の熱伝導の様子を実際に見積もってみましょう。

板の厚みを $3\,\RM{mm}$ として、$50\, {}^{\circ}\RM{C}$ のヒータに置かれたとします。このときのビオ数とフーリエ数を見積もります。

室内で風が無く、室温が $20\, {}^{\circ}\RM{C}$ であるとすると、熱伝達率は $5\, \RM{W/(m^2K)}$ とできます。

このとき、ビオ数は、アルミ板では、$6.3\times 10^{-5}$、石英ガラス板では、$1.1\times 10^{-2}$ となります。

これより、$2$ 種の板では熱伝達の影響は無視できるほど小さく、温度分布の時間変化は集中熱容量モデルで近似できることが分かります。

次に、フーリエ数を計算します。

$1$ 秒後のフーリエ数を計算すると、アルミ板では $11$、石英ガラス板では $9.6\times 10^{-2}$ となります。

これより、$1$ 秒後にはアルミ板は均一な温度になっているのに対して、石英ガラス板の反対面の温度変化はほとんど無いと、推測できます。

$t=60$ とすると、石英ガラスのフーリエ数も $6$ 程度になるので、$60$ 秒程経過すれば、石英ガラス板全体も、均一に温められているだろうと推測できます。

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ビオ数・フーリエ数の導出

最後に、ビオ数とフーリエ数の導出過程について解説します。

準備ために、まず、熱伝導方程式を次のように表示します。

\begin{split}
\ff{\rho c}{k}\ff{\del T}{\del t} &= \ff{\del}{\del x}\left(\ff{\del\,T}{\del x}\right)+\ff{\del}{\del y}\left(\ff{\del\,T}{\del y}\right)+\ff{\del}{\del z}\left(\ff{\del\,T}{\del z}\right)+ \ff{\dot{q_v}}{k}
\end{split}

熱伝導方程式を無次元化するため、方程式の各変数を次のように置きます。

\begin{split}
X=\ff{x}{L},\,Y=\ff{y}{L},\,Z=\ff{z}{L}
\end{split}

そして、温度については $T_0$ を物体の初期温度、周囲の流体の温度を $T_{\infty}$ として以下の様に無次元化します。

\begin{split}
\q=\ff{T-T_{\infty}}{T_0-T_{\infty}}
\end{split}

これらを先程の熱伝導方程式に適用すると、以下の様に計算されます。

\begin{split}
\ff{\rho c}{k}(T_0-T_{\infty})\ff{\del \q}{\del t} &= \ff{T_0-T_{\infty}}{L^2}\left( \ff{\del^2\,\q}{\del X^2}+\ff{\del^2\,\q}{\del Y^2}+\ff{\del^2\,\q}{\del Z^2} \right)+ \ff{\dot{q_v}}{k} \EE
\therefore\,\ff{L^2}{\A}\ff{\del \q}{\del t}&=\ff{\del^2\,\q}{\del X^2}+\ff{\del^2\,\q}{\del Y^2}+\ff{\del^2\,\q}{\del Z^2}+\ff{\dot{q_v}\,L^2}{k(T_0-T_{\infty})}
\end{split}

これをさらに変形し、右辺第二項にニュートンの冷却法則を適用すると、

\begin{split}
\ff{\del \q}{\del \ff{\A t}{L^2}}&=\ff{\del^2\,\q}{\del X^2}+\ff{\del^2\,\q}{\del Y^2}+\ff{\del^2\,\q}{\del Z^2}+\ff{hL}{k} \EE
\therefore\,\ff{\del \q}{\del F_o}&=\ff{\del^2\,\q}{\del X^2}+\ff{\del^2\,\q}{\del Y^2}+\ff{\del^2\,\q}{\del Z^2}+Bi
\end{split}

とできます。このように、ビオ数フーリエ数は、伝熱工学の基礎にある熱伝導方程式と密接な関係を持つ無次元数なのです。

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