ガウスの発散定理とは?|面積分と体積分の関係の導出と証明

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電磁気学で重要な役割を果たすガウスの法則を理解する準備として、ガウスの発散定理の証明を行っていきます。

ガウスの発散定理とは、ベクトル場に置かれた閉曲面に対する面積分体積分の関係について述べた定理です。具体的には、次のように述べられます。

ガウスの発散定理

ベクトル場 $\B{E}$ の中に置かれた閉曲面について考える。
このとき、閉曲面の面積分と体積分の発散は等しくなり、以下の関係が成立する。

\begin{split}
\int_S\B{E}\cdot\B{n}\,\diff S=\int_V\RM{div}\B{E}\,\diff V
\end{split}

ただし、$\B{n}$ を閉曲面に対して外向きの単位法線ベクトルとする。

例えば、非圧縮性流体にて湧き出し・吸い込みが無いとき、連続方程式から $\RM{div}\B{E}=0$ と言えます。そして、この閉曲面を出入りする正味の流量は $0$ です。これより、ガウスの発散定理が成立することが確認できます。

ガウスの発散定理の証明を行う前に定理の概要について説明します。

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ガウスの発散定理の概要

ガウスの発散定理の概要について説明します。定理の舞台となるのは、ベクトル場とそこに置かれた体積 $V$ の閉曲面です。なお、この閉曲面の表面積を $S$ とします。

ガウスの発散定理の模式図

閉曲面を貫くベクトル $\B{E}$ に着目します。また、非圧縮性流体のような縮まない流体が流れている状態をイメージします。

今、$\B{E}$ 周辺の微小面について考え、この微小面の外側を向く単位法線ベクトル $\B{n}$ を用意します。すると、微小面の法線方向を向く $\B{E}$ の成分 $|\B{E}_n|$ を $|\B{E}_n|=\B{E}\cdot\B{n}$ とできます。

さて、微小面の範囲ではベクトル場の大きさは同じと見なせます。したがって、微小面の外に出ていく流量 $\diff Q$ が次のように与えられます。ただし、$\diff S$ を微小面の面積とします。

\begin{split}
\diff Q=|\B{E}_n|\diff S=\B{E}\cdot\B{n}\,\diff S
\end{split}

これを面全体で足し合わせれば、閉曲面全体を出入りする正味の流量の大きさ $Q$ が求められます。すなわち、面積分を用いて

\begin{split}
Q=\int_S \diff Q=\int_S\B{E}\cdot\B{n}\,\diff S
\end{split}

とできます。

さて、閉曲面を出入りする”流量” $Q$ は、閉曲面内部の正味の湧き出しあるいは吸い込み量と一致するはずです。

ところで、微小体積中の湧き出しあるいは吸い込み量は発散を用いて $\diff Q=\RM{div}\B{E}$ と表せます。したがって、閉曲面内からの正味の湧き出しあるいは吸い込み量 $Q$ を、$Q=\DL{\int_V\RM{div}\B{E}\,\diff V}$ とできます。ゆえに、

\begin{split}
\int_S\B{E}\cdot\B{n}\,\diff S=\int_V\RM{div}\B{E}\,\diff V
\end{split}

という等式が成立すると言えます。以上がガウスの発散定理の概要となります。

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微小領域の分割と面積分

これよりガウスの発散定理の証明に取り掛かります。証明の準備として、『閉曲面を分割してもその面積分の和は元の閉曲面の面積分に等しい』ことを示します。

図のような閉曲面 $S$ を用意し、これを任意の位置で分割したとします。なお、分割して新たにできた面に$S_1,S_2,S_3$ と名前を付けます。

分割した閉曲面と面積分の模式図

このとき、$2$ つの面積分の和は次のように計算できます。

\begin{split}
\int_{S_1+S_3}\B{E}\cdot \B{n}\,\diff S+\int_{S_2+S_3}\B{E}\cdot \B{n}\,\diff S
\end{split}

それぞれの閉曲面の面積分を考えるとき、$S_3$ の法線ベクトルは、大きさが同じで反対方向を向くことに注意すると、

\begin{split}
&\int_{S_1+S_3}\B{E}\cdot \B{n}\diff S+\int_{S_2+S_3}\B{E}\cdot \B{n}\diff S\EE
=&\left(\int_{S_1}\B{E}\cdot \B{n}\diff S+\int_{S_3}\B{E}\cdot \B{n}_3\,\diff S \right)\\
&\qquad+\left(\int_{S_2}\B{E}\cdot \B{n}\diff S+\int_{S_3}\B{E}\cdot (-\B{n}_3)\,\diff S \right)\EE
=&\int_{S_1}\B{E}\cdot \B{n}\diff S+\int_{S_2}\B{E}\cdot \B{n}\diff S=\int_{S}\B{E}\cdot \B{n}\diff S
\end{split}

となって、$S_3$ の面積分の寄与は無くなり、$S_1,S_2$ の面積分のみが残ります。そして、これら和は分割前の面積分と一致します。

以上より、『閉曲面を分割してもその面積分の和は元の閉曲面の面積分に等しい』ことが示されました。

この操作は無限に繰り返すことができます。したがって、

\begin{eqnarray}
\int_{S}\B{E}\cdot \B{n}\,\diff S=\sum_{i=1}^{\infty}\int_{S_i}\B{E}\cdot \B{n}\,\diff S\tag{1}
\end{eqnarray}

が成立すると言えます。

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ガウスの発散定理の証明

ガウスの発散定理の証明に取り掛かります。証明の始めとして、図のような微小立体での面積分について考えていきます。

ガウスの発散定理と微小体積の模式図

さて、微小立体の各面に $\RM{A,B,C,D,E,F}$ と名前を付けます。このとき、$\RM{A,F}$ 面の面積分の和は、

\begin{split}
\int_{\diff S_A}\B{E}\cdot \B{n}_A\,\diff S+\int_{\diff S_F}\B{E}\cdot\B{n}_F\,\diff S
\end{split}

とでき、たとえば、面 $\RM{A}$ を貫くベクトルの代表値を $\DL{\B{E}\left(x+\ff{\diff x}{2},y+\ff{\diff y}{2},z+\ff{\diff z}{2} \right)}$ とすると、上の面積分

\begin{split}
&\int_{\diff S_A}\B{n}_A\cdot \B{E}\,\diff S+\int_{\diff S_F}\B{n}_F\cdot \B{E}\,\diff S \EE
=&\,\left(E\left(x+\ff{\diff x}{2}\right),E\left(y+\ff{\diff y}{2}\right),E\left(z+\ff{\diff z}{2}\right)\right)\cdot (0,0,1)^{T}\diff x\diff y\EE
&\qquad+\left(E\left(x+\ff{\diff x}{2}\right),E\left(y+\ff{\diff y}{2}\right),E\left(z-\ff{\diff z}{2}\right)\right)\cdot (0,0,-1)^{T}\diff x\diff y\EE
=&\left\{E\left(z+\ff{\diff z}{2}\right)-E\left(z-\ff{\diff z}{2}\right)\right\}\diff x\diff y\EE
\NEQ&\ff{\del E}{\del z}\diff x\diff y\diff z
\end{split}

と求められます。同様の計算を他の $4$ 面に対しても実行すると、微小立体の面積分が次のように与えられます。(発散 $\RM{div}$ の定義と計算)

\begin{split}
\int_{S_i} \B{n}\cdot\B{E}\,\diff S&=\int_{\diff S_A+\diff S_B+\diff S_C+\diff S_D+\diff S_E+\diff S_F}\B{E}\cdot\B{n}\,\diff S\EE
&= \left(\ff{\del E}{\del x}+\ff{\del E}{\del y}+\ff{\del E}{\del z} \right)\diff x\diff y\diff z\EE
&=\RM{div} \B{E}\,\diff V
\end{split}

なお、微小立体の体積は $\diff V=\diff x\diff y\diff z$ であることを最終行への変形で用いています。

この結果を式 $(1)$ に適用すると、

\begin{split}
\int_{S}\B{E}\cdot \B{n}\,\diff S&=\sum_{i=1}^{\infty}\int_{S_i}\B{E}\cdot \B{n}\,\diff S\EE
&=\sum_{i=1}^{\infty}\RM{div} \B{E}\,\diff V
\end{split}

右辺は積分に置き換えられるので、

\begin{split}
\int_{S}\B{E}\cdot \B{n}\,\diff S&=\int_V\RM{div} \B{E}\,\diff V
\end{split}

が得られます。以上よりガウスの発散定理が示されました。

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