電気力線とは?|電気力の可視化方法とその性質

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今回は電磁気学の重要な概念の一つである電気力線について説明します。

電気力線は、電荷が形成する電場や電気力の存在を説明するために生み出された概念であり、物質的な実体を持つものではありません。しかし、電場の物理学的な理解や数学的な記述に便利なため、電磁気学の世界で用いられています。

さて、電気力線は次のように説明される概念です。

電気力線とは?

電気力線電気力の様子を視覚的に表現するための仮想的な線のこと

電荷から伸びる電気力線を具体的に描画すると下図のようになります。

電荷から伸びる電気力線の模式図

この記事では、電気力線の説明に加え、電場との関係そして流体力学との数学的な類似点についても説明します。

まずは、電気力線の説明から行っていきます。

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電気力線とは?

クーロン力電場について説明した際、空間的に隔てた二つの電荷に力が作用すると述べました。

この事実は実験的に確かめられたことではありますが、$19$ 世紀の電磁気学の黎明期では非常に大きな問題となっていました。なぜなら、この結果は『力は物体同士が接触してはじめて伝達される』という近接作用説と矛盾するものであったためです。

万有引力の例外を除き、力学などの物理学の諸分野は近接作用説に基づいて記述されます。そのため、電磁気学近接作用説の枠組みで記述される必要がありました。しかし、電気力は遠隔作用によって伝達されているように思われます。

この難問を解決するため、ファラデー電気力線という概念を生み出しました。ファラデーは、電荷同士は目には見えない電気力線によって繋がっており、この電気力線を介して力が伝達されると考えました。そして、力の大きさは電気力線の”張力”によって決まると考えました。

電気力線とは?

電気力線電気力の様子を視覚的に表現するための仮想的な線のこと

電気力近接作用説で説明するための苦し紛れの仮説ように思われるかもしれませんが、電荷の周囲に誘電体(=不導体)の粉末を置くと動画のように電荷周辺に模様が浮かび上がります。浮かび上がった模様こそが電気力線です。

このようなことから、現代では電気力線の考え方が受け入れられています。ただし、電気力線自体には物質的な実体は無いことに注意して下さい。現代では、電気力によって伝達されるものと理解されています。

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電気力線と電場

電気力線は実体を持たない仮想的な線ですが、数学的な取り扱いを便利にするため、以下のような性質を持つと約束します。

電気力線の性質

電気力線は以下のような性質を持つ。

1.電気力線は正の電荷から負の電荷へと向かう
2.電荷の無い点では、電気力線は途切れたり交わらず、また分岐もしない。
3.ある閉曲面を通過する電気力線の本数は、閉曲面内部に含まれる電気量に比例する。(=ガウスの法則)

1つ目の性質については電気力線の向かう方向を定めるために必要なことです。

2つ目の性質については、力の伝達を媒介する電気力線が途中で消えることは無く、また外力も無く分岐することが無いことに対応するため、電気力線が途切れたり分岐したりしないことが要求されます。

最後の3つ目の性質については、電気量の大きさと電気力線の本数の対応を表します。これにより、電気力線電気量の大きさや電場の強さの定量的な指標として用いることができます。なお、これはガウスの法則とも対応しています。

なお、電気力線の本数が電場の強さに対応するという意味についてですが、例えば、正の電荷周辺での電気力線を描くと、図のようになります。

図から分かるように、電荷からの距離が離れるほど一定面積を貫く電気力線の本数は減っていきます。これは、電荷から離れるほど電場が小さくなることと対応します。

電場の大きさと電気力線の本数の関係

上で説明したように、電気力線の本数は電場の強さに比例します。

とは言え、基準を定めないと使いづらいため、電場の大きさと電気力線の本数の関係を次のように定義します。

電場の大きさと電気力線の本数の関係

大きさ $E$ の電場では、垂直な単位面積当たり $E$ 本の電気力線が貫く

電荷密度と電場の関係

上述のように、電場と電気力線の本数には一定の関係があります。これを利用すると、電荷密度と電場の大きさについての重要な関係を導けます。

まず、ある微小面積 $\D S$ での、単位面積当たりの電荷密度を $\sigma$ として、電場の大きさを $E$ とします。このとき、ガウスの法則から、$\D S$ を貫く電気力線の本数 $N$ は $4\pi k \sigma \D S$ となります。したがって、次のような関係が成立することが分かります。

\begin{split}
E=\ff{N}{\D S}= \ff{4\pi k \sigma \D S}{\D S} =4\pi k \sigma
\end{split}

以上より、電場の大きさと電荷密度について次のことが成立すると言えます。

電荷密度と電場の大きさの関係

電場の大きさを $E$、単位面積当たりの電荷密度を $\sigma$ とする。このとき、以下の関係が成立する。

\begin{split}
E=4\pi k \sigma=\ff{\sigma}{\eps_0}
\end{split}

ただし、$k$ をクーロン定数、$\eps_0$ を真空の誘電率とする。

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電気力線と流体力学のアナロジー

話は変わりますが、電気力線流線と似た概念であり、そのため電気力線流体力学の知識を用いて記述できることを説明します。

少し先取りした内容になりますが、電荷電気力線以外にも電位と呼ばれるポテンシャルエネルギーを生み出します。そして、電気力線は等電位線(電位の等しい場所を繋いだ線)と直交するという性質があります。

ところで、電荷が置かれた特別な点を除いて電位 $\phi$(ファイ)は次のラプラス方程式を満たすように形成されます。

\begin{eqnarray}
\ff{\del^2 \phi}{\del x^2}+\ff{\del^2 \phi}{\del y^2}+\ff{\del^2 \phi}{\del z^2}=0
\end{eqnarray}

一方、流体力学では上のラプラス方程式に従う流れのことをポテンシャル流れと呼びました。このアナロジーから、ポテンシャル流れの解析で用いた数学的手法を電気力線の描画にも借用できると推察されます。

このように、物理的な背景は異なりますが、数学的には同じ式であることから、等電位線速度ポテンシャル電気力線流線に相当すると類推できます。

以上のことを踏まえて考えると、正電荷は湧き出し負電荷は吸い込みに相当すると解釈できます。そのため、$x=-a,a$ に置かれたそれぞれの正電荷と負電荷が作り出す、$x-y$ 平面上の電気力線と等電位面は次の複素関数により記述できると言えます。

\begin{eqnarray}
w=\ff{Q}{2\pi}\log(z+a)+\ff{(-Q)}{2\pi}\log(z-a)
\end{eqnarray}

※ $Q$ は電気量を表し、$z$ は複素数を表すことに注意して下さい。

実際、これを描画すると左図のようになります。赤色の線が等電位線であり、青色の線が電気力線となります。同様に考えると、正電荷同士の形成する電気力線等電位線を右図のように描画できます。

電気力線の模式図

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