電場とは?|電荷が形成するベクトル場と電場の一般式

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今回は電磁気学の重要概念である電場について説明します。

電場とは電荷に力を及ぼす空間の性質と言えます。もちろん、何もない所に電場は生まれません。空間に電荷が存在して初めて電場は生じます。

さて、電場は具体的には次のように表されます。なお、電場ベクトル場であることに注意して下さい。

電場の一般式

体積 $V$ の領域に電荷が分布しているとする。このとき、電荷が形成する電場 $\B{E}$ は次のように表せる。

\begin{split}
\B{E}(\B{r})=\int_V\ff{k\,\rho(\B{r}_V)}{|\B{r}-\B{r}_V|^3}(\B{r}-\B{r}_V)\diff V
\end{split}

ただし、$\rho(\B{r}_V)$ を電荷密度とする。

なお、電場が $\B{E}$ の空間に置かれた電気量 $q$ の電荷には、次のように与えられる静電気力 $\B{F}$ が作用する。

\begin{split}
\B{F}=q\B{E}\\
\,
\end{split}

上式は三次元空間に広がって分布する電荷が形成する、一般の場合での電場を表す式です。

電場の一般式を理解するため、まずは点電荷が形成する電場について説明していきます。

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電場とは?

さて、距離 $r$ だけ離れた二つの点電荷 $Q,q$ 同士に作用する静電気力 $\B{F}$ は、クーロンの法則より次のように記述できました。

電場の模式図

\begin{split}
\B{F}=k\ff{Qq}{|\B{r}|^2}\cdot\ff{\B{r}}{|\B{r}|}=k\ff{Qq}{|\B{r}|^3}\B{r}
\end{split}

これを次のように変形してみます。

\begin{split}
\ff{1}{q}\B{F}=k\ff{Q}{|\B{r}|^3}\B{r}
\end{split}

すると、左辺は単位電気量当たりに作用する、$Q$ からの静電気力と言えます。そして、この静電気力の向きと大きさを定めるのが右辺の式であると言えます。

見方を変えると、右辺は電気量が $Q$ の電荷を空間に置いた時、空間に生じる静電気力の特徴を表す物理量と言えます。ゆえに、右辺のことを電場という名前で呼ぶことにします。

電場とは?

電場電荷周囲の空間に生じる、他の電荷に力を及ぼすベクトル場のこと

なお、電場を表す記号として基本的には $\B{E}$ が使われます。そして、電場はベクトル場であることにも注意して下さい。

点電荷が形成する電場

電気量 $Q$ の点電荷の周囲には次のように表されるベクトル場 $\B{E}(\B{r})$ が形成される。

\begin{split}
E(\B{r})=k\ff{Q}{|\B{r}|^3}\B{r}
\end{split}

このベクトル場電場と呼ぶ。ただし、$k$ をクーロン定数とする。

点電荷が作る電場の様子

先述のように、電場ベクトル場となります。そして、電荷からの距離に応じてベクトルの大きさは変化します。これらを考慮して、正の点電荷が作る電場の様子を描くと下図のようになります。

電場の模式図

※ 負電荷の場合、ベクトルの向きが反対となることに注意して下さい。

図から分かるように、電場の大きさは距離に応じて変化します。したがって、ベクトル $\B{r}$ を変数とした $E(\B{r})$ という関数で表すことができます。

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電場の一般式

前節では点電荷が周囲に作る電場について説明しました。この節では、三次元空間に広がって分布する電荷が形成する、一般の場合での電場について説明します。

一般の場合の電場の模式図

上図のように体積 $V$ の領域に電荷が分布しているとします。このとき、原点から $\B{r}_V$ の位置での微小体積 $\diff V$ に含まれる電荷 $\diff q(\B{r}_V)$ は次のように表せます。

\begin{split}
\diff q(\B{r}_V)=\rho(\B{r}_V)\diff V
\end{split}

ただし、$\rho$ を単位体積当たりの電気量、すなわち電荷密度とします。$\rho$ は場所により変化するため、$\B{r}_V$ の関数として、$\rho(\B{r}_V)$ と表現できます。

電荷密度

電荷密度:単位体積当たりに含まれる電気量のこと

さて、微小体積は点電荷と近似できます。したがって、この電荷によって $\B{r}$ の位置に形成される電場 $\diff \B{E}(\B{r})$ を次のように記述できます。

\begin{split}
\diff \B{E}(\B{r})&=k\ff{\diff q(\B{r}_V)}{|\B{r}-\B{r}_V|^3}(\B{r}-\B{r}_V)\EE
&=k\ff{\rho(\B{r}_V)}{|\B{r}-\B{r}_V|^3}(\B{r}-\B{r}_V)\diff V
\end{split}

これを電荷が分布する領域全体に渡って合計すると、$\B{r}$ の位置での電場を計算できます。すなわち、積分を用いて

\begin{split}
\B{E}(\B{r}_V)&=\int_V\ff{k\,\rho(\B{r}_V)}{|\B{r}-\B{r}_V|^3}(\B{r}-\B{r}_V)\diff V
\end{split}

とできます。以上より、冒頭に紹介した電場の一般式が得られました。

電場の一般式

体積 $V$ の領域に電荷が分布しているとする。このとき、電荷が形成する電場 $\B{E}$ は次のように表せる。

\begin{split}
E(\B{r})=\int_V\ff{k\,\rho(\B{r}_V)}{|\B{r}-\B{r}_V|^3}(\B{r}-\B{r}_V)\diff V
\end{split}

ただし、$\rho(\B{r}_V)$ を電荷密度とする。

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円板が作る電場

具体的な形状について電場の計算を行いましょう。今回は円板に分布する電荷が作る電場について計算を行います。なお、円板の半径を $R$、電荷密度を $\sigma$ で一定とします。

円板の作る電場

このとき、円板の微小面積 $\diff S$ から $z$ 軸上の点 $\RM{A}(0,0,z)$ の位置に形成される電場 $\B{\diff E}(\B{r})$ は次のように表されます。

\begin{split}
\B{\diff E}(\B{r})=k\ff{\sigma\,\diff S}{|\B{r}|^3}\B{r}
\end{split}

今、$\diff S=r\diff r\diff \phi$ であり、$\B{\diff E}(\B{r})$ の $z$ 方向成分と $r$ 方向成分をそれぞれ $\diff E_z,\diff E_r$ とします。すると上式を、

\begin{split}
\diff E_z\B{e}_z+\diff E_r\B{e}_r=\ff{k\sigma r\diff r\diff \phi}{(r^2+z^2)^{\ff{3}{2}}}(-r\B{e}_r+z\B{e}_z)
\end{split}

とできます。ただし、$\B{e}_z,\B{e}_r$ をそれぞれ $z$ 方向の単位ベクトル、$xy$ 平面の動径方向の単位ベクトルとします。(すると、$\B{r}=-r\B{e}_r+z\B{e}_z$ とできます)

これを円板全体で足し合わせれば $\RM{A}$ での電場が求められます。

さて、$\B{e}_r$ 方向の電場については、一周分足し合わせると $0$ になります。したがって、正味の電場は $z$ 方向成分のみとなります。ゆえに、$\RM{A}$ での電場が次のように求められます。

\begin{split}
\B{E}&=\int_S\B{\diff E}(\B{r})\EE
&=\int_0^R\int_0^{2\pi}\ff{k\sigma r}{(r^2+z^2)^{\ff{3}{2}}}\cdot z\B{e}_z\diff r\diff \phi\EE
&=k\sigma z\B{e}_z\int_0^R\ff{2\pi r}{(r^2+z^2)^{\ff{3}{2}}}\diff r\EE
&=2\pi k\sigma z\left[-\ff{1}{\sqrt{r^2+z^2}} \right]_0^{R}\B{e}_z \EE
&=2\pi k\sigma z\left(-\ff{1}{\sqrt{R^2+z^2}}+\ff{1}{z} \right)\B{e}_z
\end{split}

円板の形成する電場

半径 $R$ の円板に、電荷密度 $\sigma$ で電荷が分布しているとする。

このとき、円板から鉛直方向に $z$ 離れた位置 $\RM{A}$ に形成される電場は次のように表される。

\begin{split}
\B{E}=2\pi k\sigma z\left(-\ff{1}{\sqrt{R^2+z^2}}+\ff{1}{z} \right)\B{e}_z
\end{split}

ただし、$\B{e}_z$ を $z$ 方向の単位ベクトルとする。

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