今回は電磁気学の第一歩として、正電荷や電荷、導体・半導体・不導体などの基本用語について説明していきます。
基本的には高校物理学での電気に関する単元の復習になります。まずは、静電気という用語の説明から始めます。
静電気とは?
下敷きと髪の毛をこすり合わせると帯電するように、摩擦や剥離などによって物体間で電荷の移動が起きます。電荷の偏りにより、物体は電気を帯びます。
電磁気学では物体が電気を帯びることを帯電と呼びます。そして、帯電した物体に分布している流れの無い電気のことを静電気と呼びます。
帯電の仕組み
帯電の仕組について詳しく見ていきます。
さて、我々の体を初め、物体は原子から構成されています。原子自体は電気を帯びておらず中性ですが、ミリカンの実験やラザフォードの実験から明らかになったように、原子は負の電荷を持つ電子と正電荷を持つ原子核から構成されています。
原子核が崩壊することは滅多にないため、正電荷である陽子が原子核から飛び出てくることは基本的にありません。一方、電子は比較的簡単に原子から放出されたり、原子に捕えられたりします。
そして、原子は電子を失ったり得たりすることで、正の電気を帯びたり(陽イオン)、負の電気を帯びます(陰イオン)。
このようなことが原子の集団である物体についても起きると、巨視的にも物体が正や負に帯電した状態となります。これが、帯電の仕組みとなります。
電荷とは?
上で説明したように、摩擦や剥離などによって物体は正や負に帯電します。このような電気現象を生じさせるものを、電荷と呼びます。
電荷には正と負の二種類があって一方を正電荷、一方を負電荷と呼びます。そして、電磁気学の世界では電子の持つ電荷を負と定義します。したがって、陽子の電荷は正となります。
なお、静止した電荷の間には力が作用することが知られており、これを静電気力あるいはクーロン力と呼びます。静電気力には、同種の電荷同士には互いに反発し合う力(=斤力)が作用し、同種の電荷同士には互いに引き合う力(=引力)が作用するという性質があります。
なお、大きさを無視できる点状の電荷のことを点電荷と呼びます。
電気量とは?
質量と同様に、電荷にも量と大きさが定義されます。
電磁気学の分野では電荷の量を電気量と呼び、単位として $\RM{C}$ (クーロン)が用いられます。
ただし、質量とは異なり電気量は最小単位である電荷素量の整数倍となることが知られています。なお、電荷素量は電子の持つ電気量であり、約 $1.6\times 10^{-19}\,\RM{C}$ となります。
静電誘導とは?
静電気力により起きる現象として、静電誘導と誘電分極と呼ばれるものがあります。
これらについて説明する前に、導体や半導体などの用語について説明します。
導体・不導体・半導体とは?
金属のように電気を良く通す物体のことを導体と呼びます。金属が電気を通しやすい理由は、金属内を自由に動き回れる電子(=自由電子)があり、これが電気の運び手となるためです。
なお、導体の電気抵抗の目安は $10^{-8}\sim 10^{-4}\,\RM{\Omega\,cm}$ 程度です。
一方、ゴムや紙など電気を通しにくい物体のことを不導体または誘電体と呼びます。不導体では、全ての電子が個々の構成粒子(原子・分子・イオン)に属しているため、自由電子がありません。電気の担い手となる自由電子が無いため、不導体には電気がほとんど流れません。また、不導体は誘電体とも呼ばれます。
なお、不導体の電気抵抗の目安は $10^{8}\sim 10^{18}\,\RM{\Omega\,cm}$ 程度です。
最後に、これら導体と不導体の中間の電気抵抗を持つ物質のことを半導体と呼びます。半導体の代表例として、ケイ素($\RM{Si}$)が挙げられます。なお、半導体の電気抵抗の目安は、$10^{-4}\sim 10^{8}\,\RM{\Omega\,cm}$ 程度となります。
静電誘導とは?
帯電体を導体に近づけると、自由電子は静電気力によって帯電体に近い面に移動していきます。
これによって、帯電体に近い側の表面には帯電体と異種の電気が現れ、遠い側の表面には同種の電気が現れることになります。
このように、電気が表面に現れる現象のことを静電誘導と呼びます。
静電誘導は導体に特有の現象です。
誘電分極とは?
ところで、帯電させたプラスチック製の下敷きを髪の毛に近づけると、髪の毛がくっつく経験をしたことがあるでしょうか。
しかしながら、髪の毛は不導体のため自由電子は存在しません。そのため、髪の毛は静電誘導により引きつけられたとは考えられません。
答えから言うと、このような現象は不導体を構成する粒子(原子・分子・イオン)の中での電子の分布が偏るためです。
このように、粒子中の電子分布が偏る現象のことを分極と呼びます。
分極によって、帯電体に近い側には帯電体と異種の電気が現れ、反対側には同種の電気が現れます。そして、不導体に生じるこの現象のことを誘電分極と呼びます。
不導体では誘電分極が起きることより、特に不導体は誘電体とも呼ばれます。