鏡像法による導体球と点電荷に作用する静電気力の導出|電荷の鏡像法②

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前回は、点電荷によって導体平板に形成される電場電位鏡像法により導出しました。今回は、点電荷と導体球の間に作用する静電気力鏡像法により求めていきます。

点電荷に作用する導体球からの静電気力

$a$ を導体球の半径、$Q$ を点電荷の持つ電気量とし、点電荷が導体球の中心から $L$ 離れた位置に置かれているとする。このとき、点電荷に作用する導体球からの静電気力の大きさ $F$ は次のように与えられる。

\begin{split}
F&=k\ff{Q^2aL}{(L^2-a^2)^2}=\ff{1}{4\pi \eps_0}\cdot\ff{Q^2aL}{(L^2-a^2)^2}
\end{split}

ただし、$k$ をクーロン定数、$\eps_0$ を真空の誘電率とする。

まずは前回と同様に、点電荷によって導体球の表面にどのような電荷分布が生じるのかについて考えていきます。

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導体球と点電荷

鉄のような導体でできた、半径が $a$ の導体球の近くに電気量 $Q$ の電荷を置いた状況について考えます。

導体球と点電荷の模式図

このとき、導体球の表面には静電誘導により、点電荷とは異種の電荷が現れます。例えば、点電荷が正のとき、導体球の表面には負の電荷が現れます。

ここで導体球を接地すると、導体球の電荷の偏りを打ち消すよう電子が流入または流出します。最終的には、導体球は電気的に地球と一つの系となります。そのため、地球の電位を基準電位 $0$ とすると、導体球の電位も $0$ となります。

この状態での電位を求めるには、ラプラス方程式を計算すれば良いのですが、導体球表面の電位が $0$ となるような境界条件の設定や解の導出を行うのは困難です。

このような場合、鏡像法という手法を活用します。

そして、鏡像法を利用するときは仮想的な点電荷をどの位置に設置するのかが重要になります。

次節にて、幾何学的な考察を通して仮想的な点電荷の設置位置を考えていきます。

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仮想的な点電荷の電気量と位置の導出

図のように、電気量 $-q$ の仮想的な点電荷を $L’$ の位置に置いたとします。

導体球の鏡像と点電荷の模式図

このとき、半径 $a$ の導体球上のある点 $\RM{A}$ での電位が $0$ であることを利用して $L’$ の位置を決定できます。

始めに仮想的な点電荷から円周上の $\RM{A}$ までの距離を $r_1$、点電荷から $\RM{A}$ までの距離を $r_2$ とします。すると、電位 $\phi(\RM{A})$ は次のように与えられます。

\begin{split}
\phi(\RM{A})=-k\ff{-q}{r_1}-k\ff{Q}{r_2}
\end{split}

条件設定より、$\phi(\RM{A})=0$ であるので、

\begin{eqnarray}
\ff{q}{r_1}=\ff{Q}{r_2}\tag{1}
\end{eqnarray}

が成立します。さて、$\RM{A}$ を円周上で動かすと $r_1,r_2$ の大きさは変化しますが、どの位置でも上式が成り立たたなければなりません。したがって、$r_1,r_2$ は比例関係にあることが分かります。ゆえに、比例定数を $\A$ として

\begin{eqnarray}
r_1=\A r_2\tag{2}
\end{eqnarray}

とおけます。逆に、このような比例関係が成立するためには、$\triangle \RM{OAB}\mathrel{\unicode[sans-serif]{x223D}} \triangle \RM{OCA}$ という相似関係で無ければならないので、以下が成立すると言えます。

\begin{eqnarray}
r_1:r_2=a:L
\end{eqnarray}

これより、$\A=\DL{\ff{a}{L}}$ と言えます。これを式$(1)$に適用すると、

\begin{split}
q=\ff{a}{L}Q
\end{split}

が導けます。次に、$L’$ を求めます。これについてもやはり、相似関係を利用すると、

\begin{split}
a:L’=L:a
\end{split}

が言えるので、

\begin{split}
L’=\ff{a^2}{L}
\end{split}

となります。以上より、導体球の鏡像法は $x=\DL{\ff{a^2}{L}}$ の位置に $-\DL{\ff{a}{L}Q}$ の電気量の電荷を置けば良いことが言えます。

導体球の鏡像と点電荷の図

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鏡像法による導体球と点電荷の間に作用する静電気力の導出

それでは、点電荷により導体球に作用する静電気力鏡像法を用いて求めていきましょう。

具体的には、接地された半径 $a$ の導体球の中心から距離 $L$ の位置に電気量 $Q$ の点電荷が置かれているとします。このとき、この点電荷が受ける静電気力を計算します。

今までの議論から分かる通り、これは $x=\DL{\ff{a^2}{L}}$ の位置に電気量 $\DL{-\ff{a}{L}Q}$ の点電荷を仮想的に置いた状態と等価となります。

導体球の鏡像と点電荷の図

したがって、点電荷の受ける静電気力の大きさ $F$ を次のように求められます。

\begin{split}
F&=k\ff{Qq}{(L-L’)^2}=k\ff{Q\cdot \ff{a}{L}Q}{\left(L-\ff{a^2}{L}\right)^2}\EE
&=k\ff{Q^2aL}{(L^2-a^2)^2}
\end{split}

これより、以下のことが述べられます。

点電荷に作用する導体球からの静電気力

$a$ を導体球の半径、$Q$ を点電荷の持つ電気量とし、点電荷が導体球の中心から $L$ 離れた位置に置かれているとする。このとき、点電荷に作用する導体球からの静電気力の大きさ $F$ は次のように与えられる。

\begin{split}
F&=k\ff{Q^2aL}{(L^2-a^2)^2}=\ff{1}{4\pi \eps_0}\cdot\ff{Q^2aL}{(L^2-a^2)^2}
\end{split}

ただし、$k$ をクーロン定数、$\eps_0$ を真空の誘電率とする。

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