ベルヌーイの定理を応用した測定装置の動作原理と、理論式の導出方法について解説します。
今回は、ピトー管とベンチュリ―管について解説します。
これらの理論式の導出過程については題材として良く取り上げられるので、慣れておくとテストの際にも役立ちます。
動圧と静圧
ピトー菅の性質について解析する前に、ポイントとなる動圧と静圧について解説します。
文章で説明すると分かりにくいため、図を使いながら動圧と静圧について解説します。
図のように断面積が徐々に変化する流路があったとします。
このとき、同一流線上にある二点$\RM{A, B}$での圧力・流速・高さに関する関係は、ベルヌーイの定理より、
\begin{eqnarray}
p_1+\ff{1}{2}\rho v_1^2+\rho g z_1 = p_2+\ff{1}{2}\rho v_2^2+\rho g z_2
\end{eqnarray}
とできます。
なお、流体の密度を$\rho$(ロー)とします。
圧力についてのバランス式として上式を見ると、第二項の$\DL{\ff{1}{2}\rho v^2}$も圧力と見ることができるようになります。
ただし、この圧力が運動により生じるものであることから、区別を付ける必要がありそうです。
このような事情から第二項が表す圧力は動圧と呼ばれています。
一方、第一項は大気圧のような通常イメージする圧力を表しますが、動圧と対比する目的で静圧と呼ばれます。
圧力のバランス式をせっかく示したので、もう少し深掘りしてみましょう。
さて、上述の式に関して$\RM{A, B}$が同じ高さにあるとき、
$\rho g z_1 = \rho g z_2$となるので
\begin{eqnarray}
p_1+\ff{1}{2}\rho v_1^2 = p_2+\ff{1}{2}\rho v_2^2 \tag{1}
\end{eqnarray}
とできます。
ところで、連続の式から$A_1 v_1 = A_2v_2$の関係式が成立します。
図より$A_1 < A_2$の関係があることから、
$v_1 > v_2 $とならなければなりません。
したがって、式(1)の静圧に関しては$p_1 < p_2$という関係になることが分かります。
これより、流れが完全に停止した点では動圧が$0$になることが分かります。
なお、流体力学では流れが完全に停止したポイントのことをよどみ点と呼びます。
なお、よどみ点での圧力を全圧と呼びます。
一般に、全圧=静圧+動圧の関係となります。
後に続く、ピトー管の解析ではよどみ点の存在がポイントになります。
ピトー管の解析
それでは、ピトー管の働きについて解析していきましょう。
ピトー管は流体の速さを測定する計測器です。目標物の無い上空でも速度を計測できるため、航空機で利用されています。
ピトー管は二重になったガラス管から成っており、内側の菅には先端部分に穴が開いており、外側の菅には側壁に穴が開いています。
今、大気を理想流体とし、流れは定常流であるとします。
ピトー管の解析でポイントとなるのは、先端の穴はよどみ点であり動圧は$0$となることです。
したがって、よどみ点での圧力 $p_0$ は全圧となります。
また、側壁の穴での静圧を $p_1$ とします。
このとき、点 $\RM{A}$(よどみ点)と点 $\RM{B}$(側壁の穴)は同一流線上にあり、外力も作用しないことからベルヌーイの定理を適用でき、以下の関係式が成立します。
\begin{eqnarray}
p_0 = p_1 + \ff{1}{2}\rho_a v^2 \tag{1}
\end{eqnarray}
ただし、航空機の巡航速度を$v$、大気の密度を$\rho_a$とします。
さて、ピトー管には図のようなU字形の構造があり、ここに液体が入れてあります。
先端の穴にかかる圧力は側壁の穴にかかる圧力より大きいため、圧力差が生まれます。
この圧力差によって、U字形部分の液面には高低差が生じます。
液体は静止しているので力の釣り合い式が立てられます。
今、液面の高低差を$h$とし、液体の密度を$\rho_w$とすると、力の釣り合い式は次のように表せます。
\begin{eqnarray}
p_0+\rho_a g h = p_1 + \rho_w gh \tag{2}
\end{eqnarray}
式(2)を式(1)に代入し、整理すると次のようになります。
\begin{eqnarray}
(\rho_w-\rho_a) g h = \ff{1}{2}\rho_a v^2
\end{eqnarray}
これより、巡航速度(=流速)を次のように求められます。($v>0$のみを答えとして採用しています)
\begin{eqnarray}
v = \sqrt{\ff{2(\rho_w-\rho_a) g h}{\rho_a}}
\end{eqnarray}
ピトー管の長所は、目標物の無い上空でも自分自身の速度を計測できる点にあります。
上空を飛ぶ航空機では、この点が評価されピトー管が使用されています。
ベンチュリ―管の解析
ピトー管の他にベルヌーイの定理を応用した計測器に、ベンチュリ―管があります。
ベンチュリ―管は図のように真ん中がくびれた形状をしており、菅を流れる流量を計測する目的で使用されます。
さて、ベンチュリ―管には筒が立っており、それぞれの液面の高低差から流量を求めることができます。
それでは、流量を計算していきましょう。
ただし、$\RM{A}$点での断面積を$A_1$、静圧・流速・位置をそれぞれ$p_1, v_1, z_0$とし、
$\RM{B}$点での断面積を$A_2$、静圧・流速・位置をそれぞれ$p_2, v_2, z_0$とします。
今、流体を理想流体として密度を$\rho$とすると、ベルヌーイの定理が成立し、
\begin{eqnarray}
p_1 + \ff{1}{2}\rho v_1^2 = p_2 + \ff{1}{2}\rho v_2^2 \tag{3}
\end{eqnarray}
となります。
ところで、$\RM{A}$点と$\RM{B}$点での圧力差により、それぞれの液柱の液面には高低差が生じます。
高低差は図より$h-a$であるので、圧力差は次のように計算できます。
\begin{eqnarray}
p_1-p_2 = \rho g (h-a) \tag{4}
\end{eqnarray}
式(4)を式(3)に代入して整理すると、
\begin{eqnarray}
2(h-a)g = v_2^2-v_1^2 \tag{5}
\end{eqnarray}
となります。
ところで、管内の流れが定常流のとき、連続の式を適用できて流量$Q$に関して以下のような式が成立します。
\begin{eqnarray}
Q=A_1 v_1 = A_2 v_2
\end{eqnarray}
上式より、$\DL{v_1 = \ff{Q}{A_1}, v_2=\ff{Q}{A_2} }$であることが分かり、これを式(5)に適用すると、
\begin{eqnarray}
Q^2\left( \ff{1}{A_2^2}-\ff{1}{A_1^2} \right) = 2(h-a)g
\end{eqnarray}
となります。
これより、流量$Q$を
\begin{eqnarray}
Q &=& A_1A_2 \sqrt{\ff{2(h-a)g}{A_1^2-A_2^2}} \EE\\
&=& \ff{A_2}{\sqrt{1-\left( \ff{A_2}{A_1} \right)^2}}\sqrt{2(h-a)g}
\end{eqnarray}
と求められます。(流量は正のため)