棒の非定常熱伝導解析|熱伝導方程式の解法②

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今回は、一次元非定常熱伝導に分類される棒の非定常熱伝導について考えます。

半無限固体の非定常熱伝導を以前考えましたが、今回は両端の温度を固定し、さらに初期温度分布を与えた場合の温度変化について考えていきます。

棒の非定常熱伝導

長さ $2L$ の棒に対して、境界条件が次のように与えられたとする。

$$
\left\{
\begin{split}
&T(-L,t)=T(L,t) = 0 \EE
&T(0,x)=\cos \ff{\pi}{2L} x
\end{split}
\right.
$$

このとき、温度分布 $T(t,x)$ は次のように表せる。

\begin{split}
T(t,x) = e^{-\ff{\A n^2\pi^2}{4L^2} t}\,\cos \ff{\pi}{2L} x \\
\,
\end{split}

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棒の非定常熱伝導と基礎方程式

棒の非定常熱伝導を考えるに当たり、まずは基礎方程式を導く必要があります。

解析の対象として、長さ $2L$ の棒を考え、この棒に対して図のような座標軸を設定します。

棒の非定常熱伝導の模式図

さて、棒の内部に発熱が無く、また一次元熱伝導について考えるため、熱伝導方程式から基礎方程式を次のように記述できます。

\begin{eqnarray}
\ff{\del T}{\del t} = \A\ff{\del T^2}{\del x^2}\tag{1}
\end{eqnarray}

ただし、熱拡散率を $\A$ とします。

このとき、初期条件として $\DL{T(0,x)=f(x)}$ に従う温度分布であるとし、境界条件として、$T(t,-L)=T(t,L)=0$ というディリクレ条件を設定します。

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変数分離法による解法

このままでは$(1)$を解くことは困難なため、解の形が $T(t,x)=\tau(t)X(x)$ という、一変数関数の積であると仮定します。

解の形をこのように仮定する方法を、変数分離法と呼びます。この仮定に従って$(1)$に適用すると、

\begin{split}
X\ff{\del \tau}{\del t} &= \A\tau\ff{\del X^2}{\del x^2} \EE
\therefore\,\,\ff{1}{\A \tau}\ff{\del \tau}{\del t} &= \ff{1}{X}\ff{\del X^2}{\del x^2}=-\omega^2
\end{split}

となり、波動方程式の解法と同様の議論より、定数を $-\omega^2\,(\omega>0)$ とおいて

$$
\left\{
\begin{split}
\,&\ff{\del \tau}{\del t} = -\A\omega^2 \tau \EE
\,&\ff{\del X^2}{\del x^2} = -\omega^2X
\end{split}
\right.
$$

と分離できます。

第一式についてはロケット方程式での結果、第二式については振り子の微分方程式での結果を利用して、

$$
\left\{
\begin{split}
\,&\tau(t) = C_1e^{-\A\omega^2 t} \\[8pt]
\,&X(x)=C_2\cos \omega x+C_3\sin \omega x
\end{split}
\right.
$$

と表すことができます。ただし、$C_1,C_2,C_3$ を積分定数とします。

以上より、$T(t,x)$ を次のように定められます。

\begin{split}
T(t,x)=\tau(t)X(x) = C_1e^{-\A\omega^2 t}(C_2\cos \omega x+C_3\sin \omega x)
\end{split}

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積分定数の決定

次に、境界条件から積分定数を決定することを考えます。

まず、$x=-L,L$ にて $T=0$ であることより、

$$
\left\{
\begin{split}
\,& C_1e^{-\A\omega^2 t}(C_2\cos \omega L+C_3\sin \omega L)=0 \\[8pt]
\,& C_1e^{-\A\omega^2 t}\Big(C_2\cos (-\omega L)+C_3\sin (-\omega L)\Big)=0
\end{split}
\right.
$$

となるため、これより $C_3=0$ といえます。

したがって、

\begin{split}
T(t,x) = Ae^{-\A\omega^2 t}\cos \omega x
\end{split}

となります。

$\omega$ については、両端にて $T=0$ となることから $\DL{\omega = \ff{n\pi}{2L}}$ であることが言えます。($n$ は自然数)

また、各 $n$ について上式が成立するので、重ね合わせの原理より解を以下のように表せます。

\begin{split}
T(t,x) = \sum_{n=1}^{\infty}A_n\,e^{-\ff{\A n^2\pi^2}{4L^2} t}\cos \ff{n\pi}{2L} x
\end{split}

$t=0$ において、温度分布が $f(x)$ であることを用いて係数 $A_n$ を確定させます。

すなわち、$t=0$ として、

\begin{split}
T(0,x) = f(x)=\sum_{n=0}^{\infty}A_n\cos \ff{n\pi}{2L} x
\end{split}

が成立します。$f(x)$ の具体的な形として、

\begin{split}
f(x)=\cos\ff{\pi}{2L}x
\end{split}

を考えます。これを上式と比較すると、

$$
A_n=
\left\{
\begin{split}
&1\quad(n=1) \EE
&0\quad(2\leq n)
\end{split}
\right.
$$

となることより、$T$ を、

\begin{split}
T(t,x) = e^{-\ff{\A n^2\pi^2}{4L^2} t}\,\cos \ff{\pi}{2L} x
\end{split}

と求められます。

今回は初期温度分布として、$\DL{\cos\ff{\pi}{2L}x}$ を仮定しましたが、任意の温度分布に対しては、フーリエ級数展開と呼ばれる手法で求めます。

フーリエ級数展開により係数を決定する方法については、フーリエ変換について解説する機会にて詳しく説明します。

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