平面トラスの問題の解法|カスティリアノの定理・マトリクス法【材料力学】

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以前、複雑形状の変形について考えました。

このときは変形量をたわみ曲線の微分方程式と幾何学的な関係から計算しました。

今回は二部材から成るトラスの変形量を、幾何学的な関係から求める方法と、カスティリアノの定理を利用した二通りの方法について解説します。

さらに、有限要素法を理解するための準備として、マトリクス法についても解説します。

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平面トラスの問題

図のように壁に固定された二本の部材から成るトラスを考えます。(→トラスとは?

ここで、部材のヤング率を$E$、断面積を$A$とします。(→ヤング率とは?

平面トラスの問題

トラスの先端(点$\RM{C}$)に大きさ$P$の荷重が作用したときの先端の$y$方向の変形量について計算しましょう。

複雑な問題でも基本的な解き方は変わりません。

まずは自由体図の力の釣り合いを考えます。

ステップ1:自由体図の作成

トラスを構成する二つの部材をばらばらにし、それぞれの端に図のような力が働いていると考えます。

自由体図の力の釣り合い

それぞれの部材は静止しているため、

$$
\left\{
\begin{eqnarray}
-F_1+F_2 &=& 0 \EE
-F_3 + F_4 &=& 0
\end{eqnarray}
\right.\tag{1}
$$

の関係が成立します。

なお、部材を伸ばすに力を設定しています。

次に、$\RM{C}$の位置での力の釣り合いを考えます。

Cでの力の釣り合い

図より、$P$と釣り合う成分は同じ鉛直方向成分のみなので、

\begin{eqnarray}
P\,-F_3\sin\theta &=& 0 \tag{2}
\end{eqnarray}

の関係が成立します。

ステップ2:力の釣り合いの計算

各部材に働く力が判明したので、各力の大きさを釣合いの計算から明らかにしましょう。

ここでは、トラス全体の水平方向と垂直方向についての力の釣り合いを考えます。

力の釣り合い計算に当たって、三角関数を利用した力の分解を行っています。

まず、水平方向に関しては、

\begin{eqnarray}
-F_1+F_2- F_3\cos\theta + F_4\cos\theta = 0 \tag{3}
\end{eqnarray}

と計算できます。

次に、垂直方向に関しては、

\begin{eqnarray}
-F_3\sin\theta + F_4\sin\theta = 0 \tag{4}
\end{eqnarray}

と表せます。(始めに考えた自由体図の釣り合い計算のため、$P$は登場しません)

式(2)より、$\DL{F_3 = \ff{P}{\sin\theta}}$と求められるため、$F_4 =- \DL{\ff{P}{\sin\theta}}$であることが分かります。

以上を式(1)に代入すると、$F_2 = -F_1 = \DL{\ff{P}{\tan\theta}}$と計算できます。

トラスに働く力

\begin{eqnarray}
F_3 &=& -F_4 = \ff{P}{\sin\theta} \EE
F_2 &=& -F_1 = \ff{P}{\tan\theta} \\
\,
\end{eqnarray}

ステップ3:部材の伸びの計算

トラスの特徴は部材に曲げモーメントが働かないことです。

したがって、部材には軸力のみが働くことになります。

これより、部材の伸びは棒に関する伸びの計算式を使えば良く、

部材$\RM{AC}$についての伸び$\delta_{AC}$は、

\begin{eqnarray}
\delta_{AC} = \ff{Pl}{AE\tan\theta}
\end{eqnarray}

となり、部材$\RM{BC}$についての伸び$\delta_{BC}$は、

\begin{eqnarray}
\delta_{BC} = \ff{-Pl}{AE\cos\theta\sin\theta}
\end{eqnarray}

と求められます。($\RM{BC}=\DL{\ff{l}{\cos\theta}}$より)

式から分かるように、部材$\RM{AC}$は伸び、部材$\RM{BC}$は縮むことが分かります。

ステップ4:トラスの変形量の計算

トラスの各部材は先程計算した伸び(縮み)を維持した状態のまま動きます。

$\RM{C}$点は常に一致しているため、トラス先端の最終的な二つの円が交わる点であることが言えます。

図で表すと次のようになります。

それでは、$\RM{C}$の$y$方向の変位$\delta$の計算に取り掛かりましょう。

平面トラスの問題の変位

$\RM{C}$が図のような軌跡(赤線)を描くとすると、変形後の幾何学的関係より、$\delta$を次のように計算できます。

\begin{eqnarray}
\delta &=& \left( \delta_{AC}+\ff{\delta_{BC}}{\cos\theta} \right)\tan\left( \ff{\pi}{2}\,- \theta \right) \EE
&=& \left( \delta_{AC}+\ff{\delta_{BC}}{\cos\theta} \right)\ff{1}{\tan\theta} \EE
&=& \ff{Pl}{AE}\left( \ff{1}{\tan^2\theta}+\ff{1}{\cos\theta\sin^2\theta} \right)
\end{eqnarray}

となります。

例えば $\theta = \DL{\ff{\pi}{4}}$を代入すると、

\begin{eqnarray}
\delta &=& \ff{Pl}{AE}\left( 1+2\sqrt{2} \right)
\end{eqnarray}

となる訳です。

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カスティリアノの定理による解法

別解として、カスティリアノの定理を利用した解法を見ていきます。

カスティリアノの定理をするためにはひずみエネルギーを計算する必要があります。(→ひずみエネルギーとは?

トラスを構成する部材に蓄えられるひずみエネルギーは、棒のひずみエネルギーの式より次のように計算できます。

\begin{eqnarray}
U &=& \ff{P^2l}{2AE\tan^2\theta}+ \ff{P^2l}{2AE\cos\theta\sin^2\theta}\EE
\end{eqnarray}

これより、カスティリアノの定理を利用して変形量$\delta$を次のように求められます。

\begin{eqnarray}
\delta &=& \ff{\del U}{\del P} \EE
&=& \ff{\del}{\del P}\left( \ff{P^2l}{2AE\tan^2\theta}+ \ff{P^2l}{2AE\cos\theta\sin^2\theta} \right) \EE
&=& \ff{Pl}{AE}\left( \ff{1}{\tan^2\theta} + \ff{1}{\cos\theta\sin^2\theta} \right)
\end{eqnarray}

先程の結果と見事に一致しました。

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マトリクス法とは?

長さが$l_{ij}$、断面積が$A$、ヤング率$E$の棒要素を考えます。

なお、棒の左端に$i$、右端に$j$と名前を付け、棒要素方向に沿って$X$軸を取ります。

それぞれの端点(節点)に$p_i, p_j$の軸力が働いており、この力によって節点が$u_{Xi}, u_{Xj}$伸びたとします。

軸力を受ける棒要素

フックの法則より軸力と変位との間に次の関係が成立することが分かります。

\begin{eqnarray}
p_i &=& \ff{AE}{l_{ij}}u_{Xi} \EE
p_j &=& \ff{AE}{l_{ij}}u_{Xj}
\end{eqnarray}

このとき、棒要素のに働く正味の軸力$p_{ij}$は$p_j-p_i$となるので、ひずみエネルギー$U$は、

\begin{eqnarray}
U &=& \ff{p_{ij}^2 l_{ij}}{2AE} \EE
&=& \ff{(p_j-p_i)^2 l_{ij}}{2AE} \EE
&=& \ff{AE }{2l_{ij}}(u_{Xj}-u_{Xi})^2 \tag{5}
\end{eqnarray}

と計算できます。

伸びの幾何学的関係

棒要素と$x$軸との成す角を$\theta_{ij}$(シータ)とおくと、$u_{Xi}, u_{Xj}$は三角関数を使って、

$$
\left\{
\begin{eqnarray}
u_{Xi} &=& u_{Xi}\cos\theta_{ij} + u_{Xi}\sin\theta_{ij} \EE
u_{Xj} &=& u_{Xj}\cos\theta_{ij} + u_{Xj}\sin\theta_{ij}
\end{eqnarray}
\right.
$$

と表せます。

これより、ひずみエネルギーは、

$$
\begin{split}
U &= \ff{AE }{2l_{ij}}\Big\{ (u_{xj}-u_{xi})^2\cos^2\theta_{ij} \EE
&\qquad + 2(u_{xj}-u_{xi})(u_{yj}-u_{yi})\cos\theta_{ij}\sin\theta_{ij} \EE
&\qquad\quad + (u_{yj}-u_{yi})^2\sin^2\theta_{ij} \Big\}
\end{split}
\tag{6}
$$

とできます。

カスティリアノの第一定理を使うことで、式(6)から棒要素に働く軸力$p_{xi}$を次のように計算できます。

\begin{split}
p_{xi} &= \ff{\del U}{\del \delta_{u_{xi}}} \EE
&= \ff{AE}{l_{ij}}\Big\{ -(u_{xj}-u_{xi})\cos^2\theta_{ij} -(u_{yj}-u_{yi})\cos\theta_{ij}\sin\theta_{ij} \Big\} \EE
&= \ff{AE}{l_{ij}}
\begin{bmatrix}
\cos^2\theta_{ij} & \ff{1}{2}\sin 2\theta_{ij} & -\cos^2\theta_{ij} & -\ff{1}{2}\sin 2\theta_{ij}
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
u_{ix} \EE
u_{iy} \EE
u_{jx} \EE
u_{jy} \EE
\end{bmatrix}
\end{split}

今後の展開を見据えて、最終行を行列により表現しています。

$p_{yi}, p_{xj}, p_{yj}$についても同様に計算すると、行列を使って各軸力を次のようにまとめて表せます。

\begin{split}
\begin{bmatrix}
p_{ix} \EE
p_{iy} \EE
p_{jx} \EE
p_{jy} \EE
\end{bmatrix}
&= \ff{AE}{l_{ij}}
\begin{bmatrix}
\cos^2\theta_{ij} & \ff{1}{2}\sin 2\theta_{ij} & -\cos^2\theta_{ij} & -\ff{1}{2}\sin 2\theta_{ij} \EE
\ff{1}{2}\sin 2\theta_{ij} & \sin^2\theta_{ij} & -\ff{1}{2}\sin 2\theta_{ij} & -\sin^2\theta_{ij} \EE
-\cos^2\theta_{ij} & -\ff{1}{2}\sin 2\theta_{ij} & \cos^2\theta_{ij} & \ff{1}{2}\sin 2\theta_{ij} \EE
-\ff{1}{2}\sin 2\theta_{ij} & -\sin^2\theta_{ij} & \ff{1}{2}\sin 2\theta_{ij} & \sin^2\theta_{ij} \EE
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
u_{ix} \EE
u_{iy} \EE
u_{jx} \EE
u_{jy} \EE
\end{bmatrix} \EE\\
\B{p} &= \B{K}\B{u}
\end{split}

左辺のベクトルを節点力ベクトル、右辺の行列を要素剛性マトリックス、ベクトルを節点変位ベクトルと呼び、それぞれを$\B{p}, \B{K}, \B{u}$と表すことにします。

行列による表現になっていますが、力と変位の関係がフックの法則と同様の線形関係で表現されていることに気が付きます。

重要なのはここからです。

通常、力の大きさが与えれていて、部材の変位量は未知(=求めたいもの)です。

変位量を求める式は、上式に要素剛性マトリクスの逆行列$\B{K}^{-1}$を掛けたものであり、

\begin{split}
\B{u} = \B{K}^{-1}\B{p}
\end{split}

となります。

このように、部材の変形を行列(マトリクス)によって求める手法をマトリクス法と呼びます。

詳細な方法は割愛しますが、今回考えたトラスの問題に対してもマトリクス法を適用して解くことができます。

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有限要素法入門

行列が出てくるマトリクス法はわざわざ計算量を増やしているだけのように感じるでしょう。

しかし、考える構造物の要素数が増えても行列によって一貫して表せるという利点があります。

マトリクス法の最大の難所は逆行列を計算する箇所ですが、コンピュータに計算してもらえれば全自動で答えを求めることができます。

マトリクス法と同様の手法を使うのが、有限要素法です。

ここでは有限要素法の入門の部分を見ていきます。

次のように三つの節点から成る三角形の要素を考えます。

三角形要素

それぞれの節点の座標を$x_i, y_i$、変位を$u_i, v_i$のように表し、要素内の任意の点$x,y$での変位を$u,v$とします。

変位$u,v$を三つの節点の変位で表す方法について考えましょう。

要素内でのひずみと応力が一定であると仮定すると、ある点での変位は次のような一次結合として表せます。

\begin{split}
u &=& a_1 + a_2x + a_3y \EE
v &=& a_4 + a_5x + a_6y \EE
\end{split}

ただし、$a_1, \cdots, a_6$は定数とします。

このとき、各節点についても同様に表せて、

$$
\left\{
\begin{split}
u_i &= a_1 + a_2x_i + a_3y_i \EE
u_j &= a_1 + a_2x_j + a_3y_j \EE
u_k &= a_1 + a_2x_k + a_3y_k \EE
\end{split}
\right.
$$

となります。

行列を使うと、

\begin{split}
\begin{bmatrix}
u_{1} \EE
u_{2} \EE
u_{3} \EE
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
1 & x_i & y_i \EE
1 & x_j & y_j \EE
1 & x_k & y_k \EE
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
a_{1} \EE
a_{2} \EE
a_{3} \EE
\end{bmatrix}
= \B{A}
\begin{bmatrix}
a_{1} \EE
a_{2} \EE
a_{3} \EE
\end{bmatrix}
\end{split}

と整理できて、これより、定数$a_1, a_2, a_3$は

\begin{split}
\begin{bmatrix}
a_{1} \EE
a_{2} \EE
a_{3} \EE
\end{bmatrix}
&= \B{A}^{-1}
\begin{bmatrix}
u_{1} \EE
u_{2} \EE
u_{3} \EE
\end{bmatrix}
\end{split}

と求めることができます。

$v$に関しても同様にして、

\begin{split}
\begin{bmatrix}
a_{4} \EE
a_{5} \EE
a_{6} \EE
\end{bmatrix}
&= \B{B}^{-1}
\begin{bmatrix}
u_{4} \EE
u_{5} \EE
u_{6} \EE
\end{bmatrix}
\end{split}

と求めることができます。

これらをまとめて表現すると、任意の点でのひずみ$u,v$は次のように表せます。

\begin{split}
\begin{bmatrix}
u \EE
v
\end{bmatrix}
&= \B{N}
\begin{bmatrix}
u_{i} \EE
v_{i} \EE
u_{j} \EE
v_{j} \EE
u_{k} \EE
v_{k} \EE
\end{bmatrix} = \B{N}\B{u}
\end{split}

ここで$\B{N}$を形状マトリクスと呼び、$B{u}$を節点変位ベクトルとします。

先程のマトリクス法を考えると、要素剛性マトリクス$\B{K}$が分かれば変位を計算できることが推測できます。

問題は要素剛性マトリクスをどのように求めるのか?ですが、これについては別の機会に詳しく考えましょう。

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