三次元主応力とは?|主応力・平均垂直応力・偏差応力の導出【材料力学】

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以前、主応力と呼ばれるものを考えました。

ただし、このとき考えたのは二次元主応力と呼ばれるものでした。

今回は三次元の場合の主応力、三次元主応力について考えます。

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応力の座標変換

以前と同様、力の釣り合いを考えることで応力の座標変換を行いましょう。

四面体に図のような垂直応力せん断応力が働いているとします。

斜面に働く応力

このとき、各三角形の面積が$\RM{OBC}=\diff S_x, \RM{OAB}=\diff S_y, \RM{OAC}=\diff S_z, \RM{ABC} = \diff S$であると、各面に働く応力は$\sigma_{xx}, \tau_{xy}, \tau_{xz}$ のように表せるとします。

このとき四面体は静止しているため、各方向に関する力の釣り合い式を次のように計算できます。

\begin{eqnarray}
f_x\diff S \,- \sigma_{xx}\diff S_x \,- \tau_{yx}\diff S_y\,-\tau_{zx}\diff S_z &=& 0\EE
f_y\diff S \,- \tau_{xy}\diff S_x \,- \sigma_{yy}\diff S_y\,-\tau_{zy}\diff S_z &=& 0\EE
f_z\diff S \,- \tau_{xz}\diff S_x \,- \tau_{yz}\diff S_y\,-\sigma_{zz}\diff S_z &=& 0\EE
\end{eqnarray}

ここで、斜面の法線ベクトルを$\B{n}$とし、その成分を$(l,m,n)$とすると

$$
\left\{
\begin{eqnarray}
\diff S_x &=& l\cdot\diff S \EE
\diff S_y &=& m\cdot\diff S \EE
\diff S_z &=& n\cdot\diff S \EE
\end{eqnarray}
\right.
$$

と表せます。ここで、斜面$\RM{ABC}$が主応力面であるとし、この面に作用する主応力を$\sigma$で表すと、

$$
\left\{
\begin{eqnarray}
f_x &=& l\cdot\sigma \EE
f_y &=& m\cdot\sigma \EE
f_z &=& n\cdot\sigma \EE
\end{eqnarray}
\right.
$$

とできます。これらを先程の式に代入し、整理すると、

\begin{eqnarray}
l(\sigma-\sigma_{xx})\diff S \,- m\tau_{yx}\diff S\,-n\tau_{zx}\diff S &=& 0\EE
m(\sigma \,-\sigma_{yy})\diff S\,- l\tau_{xy}\diff S \,- n\tau_{zy}\diff S &=& 0\EE
n(\sigma \,-\sigma_{zz})\diff S \,- l\tau_{xz}\diff S_x \,- m\tau_{yz}\diff S &=& 0\EE
\end{eqnarray}

となります。この式を行列により整理すると次のようになります。

\begin{eqnarray}
\begin{bmatrix}
\sigma_{xx}\,-\sigma & \tau_{yx} & \tau_{zx} \EE
\tau_{yx} & \sigma_{yy}\,-\sigma & \tau_{zy} \EE
\tau_{zx} & \tau_{zy} & \sigma_{zz}\,-\sigma \EE
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
l \EE
m \EE
n \EE
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
0 \EE
0 \EE
0 \EE
\end{bmatrix}\tag{1}
\end{eqnarray}

この式は、法線ベクトルの向きに応じて結果が変わるため、応力の座標変換を表す式と言えます。

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三次元主応力の導出

式(1)が非自明な解を持つためには、以下の行列式が$0$とならなければなりません。

\begin{eqnarray}
\RM{det}
\begin{bmatrix}
\sigma_{xx}\,-\sigma & \tau_{yx} & \tau_{zx} \EE
\tau_{yx} & \sigma_{yy}\,-\sigma & \tau_{zy} \EE
\tau_{zx} & \tau_{zy} & \sigma_{zz}\,-\sigma \EE
\end{bmatrix} = 0
\end{eqnarray}

これより、係数を$J_1, J_2, J_3として$次の三次方程式を計算すれば良いことが分かります。

\begin{eqnarray}
\sigma^3\,-J_1\sigma^2\,-J_2\sigma\,-J_3 = 0 \tag{2}
\end{eqnarray}

ただし、式(2)の方程式の係数は、

$$
\left\{
\begin{eqnarray}
J_{1} &=& \sigma_{xx}+\sigma_{yy}+\sigma_{zz} \EE\\
J_2 &=& –
\begin{vmatrix}
\sigma_{yy} & \tau_{zy} \EE
\tau_{zy} & \sigma_{zz} \EE
\end{vmatrix}

\begin{vmatrix}
\sigma_{zz} & \tau_{xz} \EE
\tau_{xz} & \sigma_{xx} \EE
\end{vmatrix}

\begin{vmatrix}
\sigma_{xx} & \tau_{yx} \EE
\tau_{yx} & \sigma_{yy} \EE
\end{vmatrix} \EE\\
J_3 &=&
\begin{vmatrix}
\sigma_{xx} & \tau_{yx} & \tau_{zx} \EE
\tau_{yx} & \sigma_{yy} & \tau_{zy} \EE
\tau_{zx} & \tau_{zy} & \sigma_{zz} \EE
\end{vmatrix}
\end{eqnarray}
\right.
$$

となります。この三次方程式の解を$\sigma_1, \sigma_2, \sigma_3$とすると、上式を

\begin{eqnarray}
(\sigma\,-\sigma_1)(\sigma\,-\sigma_2)(\sigma\,-\sigma_3) = 0\tag{3}
\end{eqnarray}

と変形できて、式(2)と(3)の係数を比較することで、

$$
\left\{
\begin{eqnarray}
J_1 &=& \sigma_1 +\sigma_2 + \sigma_3 \EE
J_2 &=& -\sigma_1\sigma_2 \,- \sigma_2\sigma_3 \,- \sigma_3\sigma_1 \EE
J_3 &=& \sigma_1\sigma_2 \sigma_3 \EE
\end{eqnarray}
\right.
$$

という対応関係を得ることができます。

また、$\sigma_{xx}+\sigma_{yy}+\sigma_{zz} = \sigma_1+\sigma_2+\sigma_3$となり一致することも分かります。

主応力と固有値

主応力の計算の過程から分かるように、主応力$\sigma_1, \sigma_2, \sigma_3$は行列、

\begin{eqnarray}
\begin{bmatrix}
\sigma_{xx} & \tau_{yx} & \tau_{zx} \EE
\tau_{yx} & \sigma_{yy} & \tau_{zy} \EE
\tau_{zx} & \tau_{zy} & \sigma_{zz} \EE
\end{bmatrix} = 0
\end{eqnarray}

固有値に他なりません。したがって、座標変換により主応力を計算することは、以下の行列の固有値を求めていることと同義になります。

\begin{eqnarray}
\begin{bmatrix}
\sigma_{xx} & \tau_{yx} & \tau_{zx} \EE
\tau_{yx} & \sigma_{yy} & \tau_{zy} \EE
\tau_{zx} & \tau_{zy} & \sigma_{zz} \EE
\end{bmatrix} \longrightarrow
\begin{bmatrix}
\sigma_{1} & 0 & 0 \EE
0 & \sigma_{2} & 0 \EE
0 & 0 & \sigma_{3} \EE
\end{bmatrix}
\end{eqnarray}

今回、この正方行列の固有値を具体的には表示しませんが、こちらで三次正方行列に関する固有値の具体的な例を表示しています。(正確な計算はこちらのサイトで行えます。)

二次元主応力でも明らかにしたように、主応力面ではせん断応力が$0$となります。また、主応力面は$6$つありますがそれらの面は直交しています。

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平均垂直応力と偏差応力

各方向の垂直応力の平均値を平均垂直応力$\sigma_m$と呼び、次のように定義します。

\begin{eqnarray}
\sigma_m &=& \ff{1}{3}(\sigma_1+\sigma_2+\sigma_3) \EE
&=& \ff{1}{3}(\sigma_{xx}+\sigma_{yy}+\sigma_{zz})
\end{eqnarray}

例えば$\sigma_{xx}=\sigma_{yy}=\sigma_{zz}=p$であるとき、平均垂直応力は$p$となります。

すなわち、平均垂直応力は静水圧とも考えることができます。

さて、ここで主応力から平均垂直応力を引いたものを偏差応力と呼びます。偏差応力は次のように表せます。

$$
\left\{
\begin{eqnarray}
\sigma’_1 &=& \sigma_1\,-\sigma_m \EE
\sigma’_2 &=& \sigma_2\,-\sigma_m \EE
\sigma’_3 &=& \sigma_3\,-\sigma_m \EE
\end{eqnarray}
\right.
$$

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