内力と外力とは?|定義と見分け方【力学基礎】

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複数の質点や物体をまとめて一つのグループとして扱うとき、そのグループ内の物体が互いに作用しあう力を内力と呼び、外部からそのグループ内の物体に作用する力を外力と呼びます。

例えば、複数の物体に重力がはたらいている場合、重力を及ぼす地球がそのグループに属していなけえれば、そのグループにとって重力は外力となります。

なお、グループのことを専門用語で「系」と呼びます。すなわち、ひとまとまりの質点のグループは専門用語では、質点系と呼ぶのです。

内力と外力を区別することは、問題を解く上で重要なスキルになります。

内力と外力

内力:質点系内の質点同士に働く力

外力:質点系の外から働く力   

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質点とは?

内力と外力について解説する前に、質点の性質について整理します。

質点とは、質量があって大きさはない点状の物体のことです。質点は体積が$0$である一方、有限の質量を持つので密度は無限大となります。

現実の物体の密度が無限大になることはありませんから、質点は現実には存在しない理論上の存在と言えます。

ただし、球対称な質量分布を持つ物体では、重心に全質量が集中した質点としても運動を正確に計算できることが知られています。(天体力学ではこの事実を利用し、天体を質点と見なして運動の解析を実行します)

さて、質点は点であるため大きさはありません。したがって、質点に関しては回転運動が存在せず、並進運動のみが存在します。

物体の運動は並進運動と、回転運動の二つに分解できることが知られており、通常はこの二つの運動を考慮して運動方程式を解いて行きます。

一方で、質点は回転運動が存在せず、並進運動のみが存在します。つまり、質点の運動については力学的な取り扱いが楽になるのです。

現実に質点は存在しませんが、物理学的な取り扱いが最も楽になるため、質点の力学は物理学において最も基礎的な分野であり、力学の入門と位置づけられます。

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質点系とは?

2個以上の複数の質点を一つのグループとして扱う場合、このグループを質点系と呼びます。質点系には複数の質点が存在するため、区別を付ける必要があります。

質点の区別を付ける一番簡単な方法は、各質点に番号を振ることです。たとえば、質点に$1,2,3,\cdots, n$などと番号を振っていきます。質点の番号に対応して、質量も$m_1, m_2, m_3 \cdots m_n$と表します。

質点系

質点の運動を解析するため、各質点の位置を数学的に記述する必要があります。質点を数学的に記述するため、座標系を導入します。

例えば$xy$座標系を設定すると、各質点の位置は$(x_1, y_1), (x_1, y_1), \cdots, (x_n, y_n)$などと表せます。

質点系と座標

質点の位置は座標の組み合わせで通常表しますが、高次元に拡張する際や質点の数が増えると、変数が増えるため、記述が煩雑になる欠点があります。

記述を簡略化するため、位置ベクトルを用いて$\B{r}_1, \B{r}_2,\cdots, \B{r}_n$と表わす機会が増えていきます。(→位置・速度・加速度のベクトルによる表記方法

各質点に力が働いている様子を図示すると、次のようになります。

質点系と力

質点に働く力は、各質点を始点とするベクトルとして描かれます。

同様にして、速度や加速度も各質点を始点としたベクトルとして描かれます。質点系に含まれる各質点に働く力と加速度の関係は、運動方程式により次のように表されます。

$$
\left\{
\begin{split}
\,\B{F}_1 &= m_1\,\B{a}_1 \EE
\,\B{F}_2 &= m_2\,\B{a}_2 \EE
&\vdots \EE
\,\B{F}_n &= m_n\,\B{a}_n
\end{split}
\right.
$$

質点系全体を一つの物体と見なすこともでき、これにより質点系の運動方程式をすっきりと表すことができます。すなわち、各式の和を取ると、

\begin{split}
\sum_{i=1}^n \B{F}_i &= \sum_{i=1}^n m_i\B{a}_i
\end{split}

できて、左辺に関してはベクトルの合成により$\B{F}$になったとしと、右辺に関して$M\B{a}$となったとすると、

\begin{split}
\B{F} &= M\B{a}
\end{split}

とできます。この方程式についての具体的な考察に関しては、別の機会に行います。

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内力と外力

質点系とは、多数の質点から成る一つのグループのことでした。どの範囲までの質点を一塊の質点系として考えるかが運動の解析では重要になります。

これは、質点系として考える範囲により運動方程式が変化し、異なる計算結果となるためです。さて、注目する質点系内の質点同士に働く力を内力、質点系の外から働く力を外力と呼びます。質点$1$が質点$2$に及ぼす力を$F_{21}$などと書くとして、具体的に内力を図示すると次のようになります。

内力

内力の特徴は、その内力と対になる内力が必ず存在する点です。

対となる内力は、大きさが等しく向きは反対となります。すなわち、作用・反作用の関係にあるのです。これを式で表すと、よりはっきりします。

各内力のペアは作用反作用の関係より、$\B{F}_{ij} + \B{F}_{ji} = \B{0}$となるので、内力の和をとると以下のように計算できます。

\begin{split}
\sum_{i=1}^n\sum_{j=1}^n \B{F}_{ij} &= (\B{F}_{12}+\B{F}_{13}+\cdots \B{F}_{1n})\\
&\quad+(\B{F}_{21}+\B{F}_{23}+\cdots \B{F}_{2n})\EE
&\quad\quad +\cdots +(\B{F}_{n1}+\B{F}_{n2}+\cdots \B{F}_{n(n-1)})\EE
&= (\B{F}_{12}+\B{F}_{21})+(\B{F}_{13}+\B{F}_{31})+\cdots \EE
&=\B{0}
\end{split}

このように、内力は質点系を運動させることはありません。

そのため、運動の解析を行う際にあからさまに内力を図示することは少なく、普段あまり意識を向けない地味な存在でもあります。

ただし、材料力学と呼ばれる分野では内力が重要な働きをするため、覚えておいて損はありません。一方、外力は質点系の外部から働く力のことです。

外力の代表例として、重力や電磁気力などが挙げられます。もちろん、質点系以外の物体から及ぼされる力も外力となります。外力を図示すると、次のようになります。

外力

外力は物体に運動を生じさせる原因となるため、運動の解析を行う際には漏れなく書き出せるように注意しましょう。

内力と外力

内力:質点系内の質点同士に働く力

外力:質点系の外から働く力   

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内力と外力の見分け方

内力と外力の判別は問題を解く上で重要になります。

ここでは、内力と外力の見分け方について解説します。例として、ばねに繋がれた小球を考えましょう。

球に働く内力と外力

質点系の設定の仕方で、運動方程式の形が変わることを具体的に見ていきます。まず、質点系を小球のみに設定した場合の内力と外力がどのように分けられるのかを考えましょう。

小球には、重力$m\B{g}$・床からの反力$\B{N}$・ばねからの力$\B{F}_1$が加わっています。始めに外力について考えます。

外力は質点系の外から働く力であるため、以下の力が外力になります。一つ目は重力です。重力は地球が物体を引張る力であり、質点系の外から働く力であるためです。

※ 地球全体を質点系と見なす場合は重力は内力になります。地球の重心には小球が地球を引張る力が働きます。これにより、作用反作用の関係が成り立ちます。

二つ目は小球が床から受ける反力$\B{N}$です。この力も質点系から見て外部である床から働く力であるため、外力となります。

三つめはばねからの力$\B{F}_1$です。この力も質点系の外部から働く力であるため、外力となります。つまり、$\B{F}_1$は、ばねが球を引張る力であるため、外力になります。

$\B{F}_1$は、ばねが球を引張る力であるため、外力になります。これより、小球のみに注目した場合の質点系では内力が存在しないことが分かります。

考えてみれば当然のことで、質点系の中には一つの小球しかないため、系の物体同士に働く内力は存在しないのです。

球に働く力

以上より小球に関しての運動方程式を立てると、次のようになります。ただし、小球の加速度を$\B{a}$とします。

\begin{split}
m\B{a} &= \B{F}_1 + (m\B{g} + \B{N})
\end{split}

いま、$m\B{g}+\B{N} = \B{0}$の関係があるので、

\begin{split}
m\B{a} &= \B{F}_1
\end{split}

と、運動方程式を整理できます。これより、小球は運動することが分かります。

※ 小球の具体的な運動については、『ばねの運動方程式と減衰振動』で詳しく解説しています。

次に、壁とばね、小球の三つを一つの質点系と見なした場合での内力と外力を考えます。ここでは、ばねに質量は無視できるほど小さいと考えます。この質点系に働く力を図示すると、以下のようになります。

質点系の内力と外力

この質点系に働く力を考えると、小球に働く重力$m\B{g}$・床からの反力$\B{N}$・ばねが小球を引張る力$\B{F}_1$・小球がばねを引張る力$\B{F}_2$・ばねが壁を引張る力$\B{F}_3$・壁がばねを引張る力$\B{F}_4$の六つになります。

始めに外力について考えます。外力は、質点系の外部から働く力であるため、先程と同様、小球に働く重力床からの反力の二つです。

次に内力について考えます。

質点系に複数の物体が含まれるため、今回は内力を考えることができて、具体的に内力を列挙すると$\B{F}_1, \B{F}_1, \B{F}_3, \B{F}_4$の四つになります。

内力に関して、作用反作用の関係にある組は、$\B{F}_1, \B{F}_2$と$\B{F}_3, \B{F}_4$になります。以上より、質点系に対して力の和を考えると次のようになります。

\begin{split}
(m\B{g} + \B{N}) + (\B{F}_1 + \B{F}_2) + (\B{F}_3 + \B{F}_4)
&= \B{0}
\end{split}

内力の和は$\B{0}$であり、また重力と床から受ける反力は外力ですが、その和は$\B{0}$であるため、全体の力の和も$\B{0}$となります。

計算結果より、質点系全体に働く正味の力が$\B{0}$となることが分かり余す。これより、質点系全体は運動しないことが分かります。

このように、一塊の質点系として考える範囲が変わると運動方程式が変化することが分かります。

小球だけに注目すると運動するという結果が得られますが、より大きな範囲を質点系として考えると、静止状態となります。この事実を上手く利用することで問題を簡単にできる場面があります。

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