ニュートンの運動法則と質点系の力学|質点系の力学から連続体力学へ【力学基礎】

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ニュートンの運動法則と質点系の力学の関係を概観します。

質点の力学は高校物理で学びましたが、より踏み込み質点系の力学に進みます。

また、質点系の力学を拡張し、連続体力学への準備を行います。

高校物理から踏み出し、いよいよ大学物理の世界に突入していきます。

※ベクトルの表記方法や力学の各分野同士のつながりは、以下の記事で詳しく解説しています。

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ニュートンの運動法則

質点の力学から質点の力学に移行し、連続体力学の入り口まで至ることが今回の目標です。(質点の力学は、高校物理で学んだ力学とほぼ同じ内容です。)

いきなり話を始める前に、ニュートンの運動法則から復習しましょう。ニュートンの運動法則は次のようなものでした。

ニュートンの運動法則

第一法則慣性の法則
静止または一様な直線運動をする物体は、外力が作用しない限り、その状態を持続する。

第二法則運動の法則
物体の運動量の変化は、これに働く力の向きに起こり、またその力の大きさに比例する。

\begin{eqnarray}
\B{F} &=& m\B{a} \EE
\end{eqnarray}

第三法則作用反作用の法則
二つの物体が互いに力を及ぼし合う時には、これらの力は常に大きさが等しく、向きが反対である。

質点の力学はニュートンの運動法則が基礎にあります。基本は高校物理で学んだ通りですが、第二法則については変更点があります。

それは、力や加速度をベクトルで表現することです。

運動方程式について

第二法則、運動方程式について掘り下げていきます。加速度を微分により表現すると、運動方程式は次のようになります。

\begin{eqnarray}
\B{F} &=& m\ff{\diff^2 \B{r}}{\diff t^2} \EE
\end{eqnarray}

方程式に微分が含まれる式を微分方程式と呼びます。

運動方程式は微分方程式であり、微分方程式を解くことで物体の運動を解析できます。

そのため、大学物理では、微分方程式をどう解くか?というのが大きなポイントになります。さて、速度$\B{v}$に関して運動方程式を変形すると、

\begin{eqnarray}
\B{F} &=& m\ff{\diff }{\diff t}\left( \ff{\diff \B{r}}{\diff t} \right) \EE
&=& \ff{\diff }{\diff t}\left( m\ff{\diff \B{r}}{\diff t} \right) \EE
&=& \ff{\diff }{\diff t}(m\B{v}) = \ff{\diff \B{p}}{\diff t}
\end{eqnarray}

となって、運動量$\B{p}$を使って運動方程式を表せます。以下に運動方程式のいくつかの表現方法を示します。

運動方程式の複数のバージョン

\begin{eqnarray}
\B{F} &=& m\B{a}
=& m\ff{\diff^2 \B{r}}{\diff t^2} \EE
&=& \ff{\diff \B{p}}{\diff t} \\
\,
\end{eqnarray}

ロケットのように時間と共に質量が変化する物体では、運動量の形で運動方程式を考た方が都合が良い場合もあります。

※ロケットの運動については、ロケット方程式の記事で解説しています。

質点の力学

質点の力学は全ての力学の基礎になります。高校物理で習う力学は質点の力学に相当します。質点の力学では物体の大きさを無視し、物体を点として扱います。

このように、質量が一点に集中したような物体を質点と呼びます。

物体を点として扱う利点は、物体の並進運動のみに絞って議論できる点です。

欠点は、物体の回転運動を無視するため、現実の物体の運動に対する分析精度が落ちる点です。

ただし、天体力学のようなスケールの大きな問題を扱う場合は、天体を点と近似しても十分な精度で運動の解析が行えます。

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質点系の力学

複数の質点が存在する状況を考えましょう。

複数の質点のひとまとまりとしてと見なすとき、このまとまりを質点系と呼びます。初めに二個の質点が存在する場合について考えてみましょう。

質点同士に働く力

質量$m_i$と$m_j$の質点が存在し、それぞれ$\B{F}_i$と$\B{F}_j$の外力で引っ張られているとします。

また、それぞれの質点は$\B{F}_{ij}$と$\B{F}_{ji}$で引き合っているとします。($\B{F}_{ij}$は、”質点$i$が$j$から受ける力”という意味です)

各質点に働く合力は、

\begin{eqnarray}
\B{F}’_{i} &=& \B{F}_i + \B{F}_{ij} \EE
\B{F}’_{j} &=& \B{F}_j + \B{F}_{ji}
\end{eqnarray}

と表せます。さて、$\B{F}_{ij}$と$\B{F}_{ji}$は大きさが等しく向きが反対なベクトルとなっています。つまり、作用反作用の関係となっています。(重力やクーロン力などと考えてください。)

二質点の

さらに、二つの質点が一つにまとまって運動しているとしましょう。このとき、二つの質点を合わせた合力$\B{F}$は、

\begin{eqnarray}
\B{F} &=& \B{F}’_{i} + \B{F}’_{j} \EE
&=& \B{F}_i +\B{F}_j + \B{F}_{ij} + \B{F}_{ji} \EE
&=& \B{F}_i + \B{F}_j + \B{F}_{ij} \,-\, \B{F}_{ij} \EE
&=& \B{F}_i + \B{F}_j
\end{eqnarray}

となります。重要な点は、$\B{F}_{ij}$と$\B{F}_{ji}$は和を取ると$\B{0}$となることです。結果として、質点系全体に働く正味の外力は、それぞれの質点に働く外力の和になります。

内力と外力

質点系に働く力には二種類あります。一つは、質点系内の他の質点からの力=内力、もう一つは、質点系外のから働く力=外力です。

内力と外力

内力質点系内の質点同士が及ぼし合う力

外力質点系外から受ける力      

質点系全体に働く外力が各質点に働く外力の和に等しいことを示します。せっかくなので、質点の数を一気に$N$個まで増やし、この質点系に働く合力$\B{F}$を考えましょう。

N個の質点を含む質点系の内力と外力

式で表すと次のようになります。

\begin{eqnarray}
\B{F} &=& \sum_{i=1}^N \B{F}’_{i} \EE
&=& \sum_{i=1}^N \Big( \B{F}_{i} + \B{F}_{ij} \Big) \EE
&=& \sum_{i=1}^N \B{F}_{i} + \sum_{i=1}^N \sum_{j\neq i}^N \B{F}_{ij} \EE
\end{eqnarray}

となりますが、右辺第二項に関しては、作用反作用の関係から$\B{F}_{ij} = -\B{F}_{ji}$なので、

\begin{eqnarray}
\sum_{i=1}^N \sum_{j\neq i}^N \B{F}_{ij} &=& \Big( \B{F}_{12}+\B{F}_{13} + \cdots \Big) + \Big( \B{F}_{21}+\B{F}_{23} + \cdots \Big) + \Big( \B{F}_{31}+\B{F}_{32} + \cdots \Big) + \cdots \EE
&=& \Big( \B{F}_{12} + \B{F}_{21} \Big) + \Big( \B{F}_{13} + \B{F}_{31} \Big) + \Big( \B{F}_{23} + \B{F}_{32} \Big) + \cdots \EE
&=& \B{0}
\end{eqnarray}

となり、右辺第二項は$\B{0}$となります。従って、

\begin{eqnarray}
\B{F} &=& \sum_{i=1}^N \B{F}_{i} + \sum_{i=1}^N \sum_{j\neq i}^N \B{F}_{ij} \EE
&=& \sum_{i=1}^N \B{F}_{i} \tag{1}
\end{eqnarray}

となります。『質点系に働く外力は、各質点に働く外力の和に等しい』ことが示せました。

質点系の運動方程式

式(1)を運動方程式の形で表しましょう。

\begin{eqnarray}
\B{F} &=& \sum_{i=1}^N \B{F}’_{i} \EE
\sum_{i=1}^N \Big( m_i \ff{\diff^2 \B{r}_i}{\diff t^2} \Big)
&=& \ff{\diff^2 }{\diff t^2} \sum_{i=1}^N \big(m_i \B{r}_i \big) \tag{2} \EE
\end{eqnarray}

ここで、質点系の重心の位置について考えます。質点系の重心の位置ベクトル$\B{R}$は、

\begin{eqnarray}
\B{R} &=& \ff{\displaystyle\sum_{i=1}^N m_i\B{r}_i}{\displaystyle\sum_{i=1}^N m_i}
= \ff{\displaystyle\sum_{i=1}^N m_i\B{r}_i}{M} \EE
\end{eqnarray}

と表せます。(質点系全体の質量を$M$とします。)変形すると以下のようになります。

\begin{eqnarray}
\therefore M\B{R} &=& \sum_{i=1}^N m_i\B{r}_i
\end{eqnarray}

この式を代入し、式(2)を変形すると、次のようになります。

質点系の運動方程式

\begin{eqnarray}
\B{F} &=& M\ff{\diff^2 \B{R}}{\diff t^2} \\
\,
\end{eqnarray}

以上より、『質点系の運動は、重心に全外力が作用した運動と見なせる』ことが分かります。

運動量保存則

式(2)について、右辺を運動量の形に変形します。ただし、質点系全体の運動量の和を$\B{P}$とします。

\begin{eqnarray}
\B{F} &=& \sum_{i=1}^N \Big( m_i \ff{\diff^2 \B{r}_i}{\diff t^2} \Big) \EE
&=& \ff{\diff }{\diff t} \sum_{i=1}^N \Big(m_i \ff{\diff \B{r}_i}{\diff t} \Big)
= \ff{\diff }{\diff t} \sum_{i=1}^N \big(m_i \B{v}_i \big) \EE
&=& \ff{\diff }{\diff t} \sum_{i=1}^N \B{p}_i
= \ff{\diff \B{P}}{\diff t}
\end{eqnarray}

外力が$\B{0}$のとき、運動量の時間変化は、

\begin{eqnarray}
\ff{\diff \B{P}}{\diff t} &=& \B{0} \EE
\therefore \B{P} &=& const.
\end{eqnarray}

となるので、運動量が時間に依らず一定であることが分かります。

運動量保存則

『質点系に働く外力の和が$\B{0}$のとき、質点系の全運動量は時間に依らず一定である』

質点系でも、運動量保存則が成立することが示せました。

運動量が保存される例として、ロケットの運動や、爆発した砲弾が挙げられます。一見、バラバラに運動しているように見えても、全体の重心は等速直線運動をしています。

外力がないとき、質点系の重心が等速直線運動することは、入試問題を解くテクニックとしても利用することができます。

角運動量保存則

質点系の角運動量$\B{L}$について考えましょう。角運動量とは、ベクトル$\B{r}$と速度$\B{v}$の外積として、次のように定義される物理量です。

運動量を使っても角運動量を定義できます。

角運動量の定義

\begin{eqnarray}
\B{L} &=& m\B{r} \times \B{v} \EE
&=& \B{r} \times \B{p} \\
\,
\end{eqnarray}

各質点の角運動量を合計すると、質点系の角運動量が求まります。

\begin{eqnarray}
\B{L} &=& \sum_{i=1}^N \B{L}_i \EE
&=& \sum_{i=1}^N \Big( m_i\B{r}_i \times \B{v}_i \Big) \EE
&=& \sum_{i=1}^N \Big( \B{r}_i \times \B{p}_i \Big) \\
\,
\end{eqnarray}

両辺を微分して、

\begin{eqnarray}
\ff{\diff \B{L}}{\diff t} &=& \ff{\diff}{\diff t}\sum_{i=1}^N \Big( \B{r}_i \times \B{p}_i \Big) \EE
&=& \sum_{i=1}^N \Big( \B{r}_i \times \ff{\diff \B{p}_i}{\diff t} \Big) \EE
&=& \sum_{i=1}^N \Big( \B{r}_i \times \B{F}’_i \Big) \EE
&=& \sum_{i=1}^N \Big( \B{r}_i \times \B{F}_i \Big) + \sum_{i=1}^N \sum_{j\neq i}^N \Big( \B{r}_i \times \B{F}_{ij} \Big) \EE
\end{eqnarray}

となります。右辺第二項に関して、

\begin{aligned}
\begin{split}
\sum_{i=1}^N \sum_{j\neq i}^N \Big( \B{r}_i \times \B{F}_{ij} \Big)
&= \B{r}_1 \times \Big(\B{F}_{12}+\B{F}_{13} + \cdots \Big) + \B{r}_2 \times \Big( \B{F}_{21}+\B{F}_{23} + \cdots \Big) \\
&\qquad+\, \B{r}_3 \times \Big( \B{F}_{31}+\B{F}_{32} + \cdots \Big) + \cdots \EE
&= \Big( \B{r}_1 \times \B{F}_{12} + \B{r}_2 \times \B{F}_{21} \Big) + \Big( \B{r}_1 \times \B{F}_{13} + \B{r}_3 \times \B{F}_{31} \Big) \\
&\qquad+ \Big( \B{r}_2 \times \B{F}_{23} + \B{r}_3 \times \B{F}_{32} \Big) + \cdots \EE
&= (\B{r}_1 \,-\, \B{r}_2)\times \B{F}_{12} + (\B{r}_1 \,-\, \B{r}_3)\times \B{F}_{13} \\
&\qquad+ (\B{r}_2 \,-\, \B{r}_3)\times \B{F}_{23} + \cdots \EE
&= \B{0}
\end{split}
\end{aligned}

となり、$\B{0}$となることが分かります。

質点1と2同士の内力は、図のような関係となっています。

質点1と質点2の内力と各ベクトルの関係

図から、$\B{F}_{12}$は$\B{r}_{21}$($=\B{r}_1 \,-\, \B{r}_2$)と平行であることが分かります。

従って、外積$(\B{r}_1 \,-\, \B{r}_2)\times \B{F}_{12}$は$\B{0}$となります。

その他の外積も同様に計算でき、総和をとっても$\B{0}$となります。

よって、先程の式は、

\begin{eqnarray}
\ff{\diff \B{L}}{\diff t} &=& \sum_{i=1}^N \Big( \B{r}_i \times \B{F}_i \Big)
\end{eqnarray}

となります。さらに、$N=\displaystyle\sum_{i=1}^N \Big( \B{r}_i \times \B{F}_i \Big)$とおくと、

\begin{eqnarray}
\ff{\diff \B{L}}{\diff t} &=& \B{N} \tag{3}
\end{eqnarray}

とできます。このとき、$\B{N}$は外力によるモーメントの和となります。

式(3)から、『質点系の角運動量の時間変化率は、外力のモーメントの和に等しい』とことが分かります。

さらに、$\B{N} = \B{0}$のとき、

\begin{eqnarray}
\ff{\diff \B{L}}{\diff t} &=& \B{0} \EE
\therefore \B{L} &=& const.
\end{eqnarray}

となり、角運動量が時間に依らず一定となることが分かります。以上より、次のような角運動量保存則を述べることができます。

角運動量保存則

『ある点に関して外力によるモーメントの和が$\B{0}$であれば、

その点に関する全角運動量は時間に依らず一定である。』

角運動量保存則は、慣性モーメントの導出や天体力学で重要な働きをします。

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連続体力学へ

気体や液体、個体は空間内を隙間なく埋め尽くしています。

このように空間を隙間なく埋め尽くしている物体を連続体と呼びます。

連続体の運動や変形を考える分野を連続体力学と呼びます。連続体力学は、質点系の力学を拡張したものです。流体力学弾性力学などが連続体力学に含まれます。

今後のため、質点系の力学がどう連続体力学に拡張されるのかを少し説明します。ミクロな視点では、連続体のように見える物体も、厳密には原子から成っています。

しかし、日常のスケールでは原子は見えず、物体を連続体として近似することができます。ところで、質点の大きさはどの程度なのでしょうか?

数学的に考えれば、質点に大きさはありません。つまり、質点の密度は無限大であるということです。ですが、現実の世界に密度が無限大の物質など存在しません。(少なくとも地球上には) 

現実の世界の物体の振る舞いを研究する物理学に、大きさが0の質点を持ち込むのは具合が悪いという事情がある訳です。そこで、数学的な厳密性には目をつむり、『大きさはあるけれど微小であるため、点と近似できる微小な体積』を質点と呼ぶことにします。

そして、この微小な体積を微小要素と呼ぶことにしましょう。おもしろいことに、微小要素は変形や回転を考えることができます。

この性質を流体力学や弾性力学では大いに活用し、議論を進めていきます。

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