放物線運動と微分方程式|モンキーハンティング問題とは?【動力学】 

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銃を持ったハンターが木から落ちたサルに弾丸を当てるためにはどのように銃を撃てば良いでしょうか?

サルの位置を先読みして弾丸を発射すれば良いのでしょうか?

この問題はモンキーハンティング問題と呼ばれ、興味深い結果が得られます。

モンキーハンティング問題

木から落ちたサルに弾丸を当てるためにはどのように銃を撃てば良いか?

今回はモンキーハンティング問題を物理学を用いて解析していきましょう。

座標と運動についての基礎的な事項から始め、高校物理の範囲でモンキーハンティング問題を考察したあと、大学物理の第一歩として、微分方程式による解法についても解説します。

 

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座標と運動

モンキーハンティング問題に取り組む前に、問題を解くために必要となる数学について整理しましょう。

今回、物体の運動を数式により表現することが必要になるため、物体の位置を座標上で表示することを考えます。

最初に、ある一点に存在している物体の位置を座標空間上に表示することを考えます。

とは言え、難しいことはなく、物体の位置を座標により表す方法は高校数学で学びました。

具体的にはある一点に原点をとり、水平方向に$x$軸、垂直方向に$y$軸をとります。

このとき、物体の位置は座標を用いて表現することができ、$(x_1, y_1)$等と表すことができます。

物体の位置と座標

次に運動中の物体を座標上に表示する方法を考えましょう。

簡単のため、物体は$x$軸と平行方向に速さ$v_0$で運動しているとします。

時刻$t=0$において物体が$(0, y_0)$の位置にあるとすると、時刻$t=T$での物体の座標は$(v_0T, y_0)$となります。

運動中の物体の座標

ポイントは物体の移動距離$L$が速度と時間の積、すなわち$v_0T$で表される点です。

この関係を縦軸に速度$v$、横軸を時刻$t$とするグラフで表現すると下図のようになります。

面積と距離の関係

図から明らかなように、$v-t$ グラフでは、その面積が移動距離を表すのです。

この事実は今回の重要なポイントとなります。

最後に、大きさ$a$の一定の加速度で運動している物体の位置と時刻の関係を調べてみましょう。

なお、このような運動を等加速度運動と呼びます。

等加速度運動

加速度が一定の運動のこと

いきなり加速度と移動距離の関係を導くことは難しいので、段階を追って考えていきます。

まず、加速度とは単位時間当たりの速さの増減を表すため、$\D t$秒間加速されると、物体の速度変化は$\D v = a\D t$と表せます。

加速度と速度変化の関係

加速度の大きさを$a$とし、$\D t$秒間加速されると物体の速度変化$\D v$は次のように表せる。

\begin{eqnarray}
\D v = a\D t \\
\,
\end{eqnarray}

これより、初期の速さを$v_0$として、加速度の大きさが$a$で一定であるとすると$t$秒後の速さ$v$は$v_0+at$と表せます。

加速度による速度の時間変化

初期の速さが$v_0$、加速度の大きさが$a$で一定であるとき、$t$秒後の速さは次のようになる。

\begin{eqnarray}
v = v_0 + a t \\
\,
\end{eqnarray}

さて、初期速度が$0$のとき、$t$秒後の速さは$at$となります。

これを$v-t$グラフで表すと次のようになります。

加速度と距離の関係

$v-t$グラフでは、面積が移動距離を表すことを思い出しましょう。

これより、三角形の面積が移動距離を表すことになります。

三角形の面積の公式より、等加速運動する物体の移動距離は$\DL{\ff{1}{2}at^2}$と計算できることが分かります。

ところで、この結果を積分で表すと$\DL{\int_0^t at \,\diff t}$とできるのですが、本当にそうなるのかを確認しましょう。

今、加速度が定数のため、$a$は積分の外に出せて、

\begin{eqnarray}
\int_0^t at \,\diff t &=& a\int_0^t t \,\diff t \EE
&=& a\left[ \ff{1}{2}t^2 \right]_0^t \EE
&=& \ff{1}{2}at^2
\end{eqnarray}

となります。

積分の計算結果は、先述の結果と確かに一致することが分かります。

積分による移動距離の計算は一般の場合でも成立します。

例えば、加速度が時間の関数となるとき、積分を用いた計算の本領が発揮されます。

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自由落下運動

等加速度運動の代表例が自由落下運動です。

自由落下運動では、一定の重力加速度$g$で一直線に落下していきます。

自由落下運動の様子を図示すると下図のようになります。

自由落下運動

時刻$t=0$のときに落下し始めたとすると、時刻$t=T$までの落下距離$L$は先述の積分計算を利用して、

\begin{eqnarray}
L &=& \int_0^T gt \,\diff t \EE
&=& \ff{1}{2}gt^2
\end{eqnarray}

とできます。

さて、$t=0$にて物体が$(0,H)$の位置にあったとすると、$t=T$の位置での物体の位置は$\left(0, H-\DL{\ff{1}{2}gt^2} \right)$と表せます。

質量に無関係に成立します。

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放物線運動

さて、速さ$v$の大きさで斜めに投げ上げられた物体はどんな運動を行うでしょうか?

この場合の運動について考えていきましょう。

さて、図のように水平方向から$\theta$(シータ)の角度で原点から打ち出された物体の運動を考えます。

また、$y$軸の負の方向に大きさ$g$の重力加速度が働いているとします。

投げ上げ運動

まず、速さを水平方向と鉛直方向に分解すると、原点での速度は三角関数を使って、

$$
\left\{
\begin{split}
&\,x: \,\, v\cos\theta\EE
&\,y: \,\, v\sin\theta\EE
\end{split}
\right.
$$

と分解できます。

次に時刻$t$での速さを求めます。

重力加速度は$y$軸の鉛直方向に対して働いているため、$x$軸方向の速度には影響を及ぼしません。

したがって、時刻$t$での物体の速さは次のように表せます。

$$
\left\{
\begin{split}
&\,x: \,\, v_x = v\cos\theta\EE
&\,y: \,\, v_y = v\sin\theta\,- gt\EE
\end{split}
\right.\tag{1}
$$

慣性の法則より$x$軸方向の速さが変化することが無いことがポイントです。

これより、時刻$t$での座標(=位置)を求めることができます。

式(1)の各方向で時間に関して積分を実行すると移動距離が求められ、

$$
\left\{
\begin{split}
&\,x: \,\, x(t) = \int_0^t v\cos\theta\,\diff t = vt\cos\theta \EE
&\,y: \,\, y(t) = \int_0^t (v\sin\theta\,- gt)\,\diff t = vt\sin\theta\,-\ff{1}{2}gt^2 \EE
\end{split}
\right.
$$

始めに原点にいたとすると、移動距離がそのまま座標と一致するため、$(x(t), y(t))=\left( vt\cos\theta,\, vt\sin\theta\,-\DL{\ff{1}{2}gt^2} \right)$となるのです。

この運動の軌跡を図示すると、次のようなグラフとなり放物線軌道となることが分かります。

放物線運動

このことから、物体の斜め方向の投げ上げ運動を放物線運動と呼びます。

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モンキーハンティング問題

準備が整ったので、モンキーハンティング問題の解析に取り組みましょう。

モンキーハンティング問題の模式図

物体$A$は時刻$t=0$で水平方向から$\theta$の角度で速さ$v$で原点から投げ上げられるとします。また、物体$B$は$t=0$で$(H, L)$の座標にあるとします。

時刻$T$での各物体の座標を求めましょう。

物体$A$に関して、放物線運動の計算結果より

$$
\left\{
\begin{split}
&\,x_A(T): \,\, \int_0^T v\cos\theta\,\diff t = vT\cos\theta \EE
&\,y_A(T): \,\, \int_0^T (v\sin\theta\,- gt)\,\diff t = vT\sin\theta\,-\ff{1}{2}gT^2 \EE
\end{split}
\right.
$$

と求められます。

物体$B$に関しては、自由落下運動の計算結果より、

$$
\left\{
\begin{split}
&\,x_B(T): \,\, L \EE
&\,y_B(T): \,\, H\,- \int_0^T gt\,\diff t = H\,-\ff{1}{2}gT^2 \EE
\end{split}
\right.
$$

となります。

さて、物体$A$の$x$座標が$L$となる時刻を$t_L$とすると、

\begin{split}
&vT_L\cos\theta = L \EE
\end{split}

となるため、

\begin{split}
&T_L = \ff{L}{v\cos\theta}
\end{split}

と表せます。

これより時刻$t_L$での各物体の$y$座標は次のように表せます。

$$
\left\{
\begin{split}
&\,y_A(t_L): \,\, L\tan\theta \,- \ff{1}{2}g\left( \ff{L}{v\cos\theta} \right)^2 \EE
&\,y_B(t_L): \,\, H \,- \ff{1}{2}g\left( \ff{L}{v\cos\theta} \right)^2 \EE
\end{split}
\right.
$$

さて、$\tan\theta=\DL{\ff{H}{L}}$であるため、$y_A(t_L) = \DL{H \,- \ff{1}{2}g\left( \ff{L}{v\cos\theta} \right)^2}$となります。

したがって、時刻$T_L$において$y_A = y_B$かつ$x_A = x_B$となるため、二物体は時刻$t_L$で衝突することが分かります。

驚くことに、発射の瞬間に物体$A$が$B$の方向を向いていれば、$A$の初速度に関わらず二物体は必ず衝突するのです。

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微分方程式による解法

さて、移動距離は積分により表すことができます。

一方、速度や加速度はどのように表されるのでしょうか?

速度や加速度は移動距離を時間に関して割ったものであり、この操作は積分の足し合わせとは逆の操作になるで、微分によって表されることになります。

速度$v$と加速度$a$を具体的に微分を使って表すと、次のようにできます。

微分を使って速度$v$と加速度$a$を表すと次のようになります。

\begin{split}
v &= \ff{\diff x}{\diff t}, \qquad a = \ff{\diff^2 x}{\diff t^2}
\end{split}

このように表される理由について、詳しくは位置・速度・加速度のベクトル 高校物理から大学物理へ の記事で解説しています。

さて、この等式は方程式と見ることもできます。

通常の等式と異なり、この等式は微分を含んでいるため微分方程式と呼ばれます。

通常の方程式の解は数値となりますが、微分方程式の場合、その解は関数となります。

微分方程式を解くとは、微分方程式を満足する関数を求めることであり、その方法として積分が用いられます。

モンキーハンティング問題を例に、微分方程式の解法を見ていきましょう。

まず、物体$A$の運動を微分方程式により表すと次のようになります。

$$
\left\{
\begin{split}
&\,x: \,\, v_{Ax}(t) = \ff{\diff x}{\diff t} = v\cos\theta \EE
&\,y: \,\, a_{Ay}(t) = \ff{\diff^2 y}{\diff t^2} = \,-g \EE
\end{split}
\right.
$$

この微分方程式を解くため、積分を実行します。

まずは$x$方向に関して両辺を積分します。

このとき、どの積分変数で計算を行うかがポイントになります。

今回は$\diff t$を消去したいため、$t$を積分変数として両辺を積分すれば良く、微分方程式は次のように計算できます。

\begin{split}
\int \ff{\diff x}{\diff t}\, \diff t &= \int v\cos\theta \,\diff t \EE
\therefore\,\,x_A(t) &= vt\cos\theta + C
\end{split}

※ 物理学で解く微分方程式は多くの場合、積分変数は時間になります。

ここで、$C$を積分定数とします。本来は両辺に積分定数が必要になりますが、左辺の積分定数を$0$としても一般性を失わないため、右辺のみ積分定数を考えます。

$t=0$のとき物体$A$は原点にあるため、$x_A=0$となり、$C=0$と積分定数を確定できます。

したがって、$x_A(t) = vt\cos\theta $と求められます。

次に、$y$方向に関しての微分方程式を解きます。

先程と同様に両辺を積分すると、次のように計算できます。

\begin{split}
\int\ff{\diff^2 y}{\diff t^2}\, \diff t &= -\int g \,\diff t \EE
\therefore\,\,\ff{\diff y}{\diff t} &= -gt + C
\end{split}

さて、$y$方向の速度に関しては$t=0$において$v_{Ay}(0) = v\sin\theta$であるため、$C=v\sin\theta$と確定できます。

先程の式に結果を代入すると、

\begin{split}
\ff{\diff y}{\diff t} &= -gt + v\sin\theta
\end{split}

となります。

さらに積分を実行すると、

\begin{split}
\int\ff{\diff y}{\diff t}\, \diff t &= \int (-gt + v\sin\theta)\, \diff t \EE\\
\therefore\,\,y_A(t) &= vt\sin\theta\,-\ff{1}{2}gt^2 + C
\end{split}

と$y_A(t)$を計算できます。

最後に、$t=0$にて$y_A =0$であるため$C=0$となります。

以上より、$x_A(t), y_A(t)$は以下のように求められます。

$$
\left\{
\begin{split}
&\,x_A(t)= vt\cos\theta \EE
&\,y_A(t)= vt\sin\theta\,-\ff{1}{2}gt^2 \EE
\end{split}
\right.
$$

このように、微分方程式を満たす解は関数となるのです。

一方、物体$B$に関しても同様に微分方程式で表すと次のようになります。

$$
\left\{
\begin{split}
&\,x: \,\, v_{Bx}(t) = \ff{\diff x}{\diff t} = 0 \EE
&\,y: \,\, a_{By}(t) = \ff{\diff^2 y}{\diff t^2} = \,-g \EE
\end{split}
\right.
$$

積分を実行してこれらの微分方程式を解くことができます。

先程と同様に計算し、時刻$t=0$において$x_B(0) = L, y_B(0) = H$、$v_B(0) = 0$であることより、次のように計算できます。

$$
\left\{
\begin{split}
&\,x_B(t)= L \EE
&\,y_B(t)= H\,-\ff{1}{2}gt^2 \EE
\end{split}
\right.
$$

なお、これらの条件を初期条件境界条件と呼び、微分方程式の積分定数を決定する際に重要な役割を果たします。

さて、これより、物体$A$が$x=L$の位置に到達する時刻$T_L$は、$\DL{\ff{L}{v\cos\theta}}$であるので、先程の結果と全く同じように、$T_L$にて衝突するという結果が導けます。

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