フレネル積分の留数定理による導出|留数定理の広義積分への応用②

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フレネル積分は次のように定義される広義積分のことで、光学の世界で重要な役割を果たします。

フレネル積分とは?

次の広義積分フレネル積分と呼ぶ

\begin{split}
\int_{-\infty}^{\infty}\cos{x^2}\diff x \EE
\int_{-\infty}^{\infty}\sin{x^2}\diff x \\
\,
\end{split}

さて、フレネル積分に関しては以下の公式が成立します。

ガウス積分の積分公式

フレネル積分について以下の公式が成立する

\begin{split}
\int_{-\infty}^{\infty}\cos{x^2}\diff x=\int_{-\infty}^{\infty}\sin{x^2}\diff x=\sqrt{\ff{\pi}{2}}\\
\,
\end{split}

今回は留数定理を利用したフレネル積分の導出方法について解説します。

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フレネル積分とは?

フレネル積分の特徴は、三角関数の中身が $x$ ではなく $x^2$ となっている点です。また、$\sin x^2$ と $\cos x^2$ のグラフは図のように、$y$ 軸対称の偶関数となります。

フレネル積分の形状

フレネル積分では積分区間を $-\infty$ から $\infty$ に拡張した広義積分の形で定義されます。つまり、フレネル積分は以下のように定義されます。

\begin{split}
I&=\int_{-\infty}^{\infty}\cos{x^2}\diff x \EE
J&=\int_{-\infty}^{\infty}\sin{x^2}\diff x
\end{split}

※ 次節でのフレネル積分の導出を見据えて、それぞれの積分値を $I,J$ と置いています。

実用性が一見分からないため、奇妙な関数を考えているように感じるかも知れません。ところが、光学の分野で光の回析を定式化するとフレネル積分が現れます。このように、フレネル積分は光の振る舞いを解析する際、重要な役割を果たします。

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留数定理とフレネル積分

実際にフレネル積分を導出していきましょう。フレネル積分を導出するに当たり、複素関数論の手法を用います。

まず、$\sin x^2$ と $\cos x^2$ は複素三角関数の手法を用いて

\begin{split}
e^{iz^2}=\cos z^2+i\sin z^2
\end{split}

のように表せます。ただし、$z$ を複素数とします。

天下り的になりますが、フレネル積分ではガウス積分の結果を用います。したがって、以下のような等式を考える必要があります。($x$ を実数とします)

\begin{split}
e^{iz^2}=e^{-x^2}
\end{split}

これを整理して、$z=xe^{\ff{i\pi}{4}}$ が得られます。

フレネル積分の本番となります。今回は $f(z)=e^{iz^2}$ として、その周回積分 $\DL{\oint f(z) \diff z}$ に対して留数定理を適用してきます。

積分路として、図のような $1/8$ にカットした円板周りの積分路を考えます。このような経路を考えるモチベーションは、先程得た $z=xe^{\ff{i\pi}{4}}$ を活用したいためです。

フレネル積分の周回積分路

まず、$e^{iz^2}$ は正則関数であるため、その周回積分はコーシーの積分定理から

\begin{eqnarray}
\oint e^{iz^2}\diff z=0\tag{1}
\end{eqnarray}

となります。

ここで、周回積分路を図のように $3$ つの線積分 $C_1,C_2,C_3$ に分解することを考えます。

\begin{eqnarray}
\oint e^{iz^2}\diff z&=\int_{C_1}+\int_{C_2}+\int_{C_3} \tag{2}
\end{eqnarray}

このとき、それぞれの線積分は次のように表示できます。まず、$C_1$ については実軸上に沿った積分路となるので、積分区間を $0\to R$ とできます。よって、

\begin{eqnarray}
\int_{C_1}&=& \int_0^Re^{iz^2}\diff z \EE
&=& \int_0^R\cos z^2\diff z+i \int_0^R\sin z^2\diff z\EE
&=& \ff{I}{2}+i\ff{J}{2} \tag{3}
\end{eqnarray}

次に、$C_2$ の積分路は円周に沿ったものであるので、複素平面上の円の公式を用いてその積分路を $z=Re^{i\q}\,\,(0\leq\q\leq \pi/4)$ とできます。したがって、

\begin{eqnarray}
\int_{C_2}&=& \int_0^{\ff{\pi}{4}}e^{i(Re^{i\q})^2} (iRe^{i\q})\diff \q\EE
&=& iR\int_0^{\ff{\pi}{4}}e^{iR^2(\cos2\q+i\sin2\q)}e^{i\q}\diff \q \tag{4}
\end{eqnarray}

最後に $C_3$ の積分路は $x$ を実数として $z=xe^{\ff{i\pi}{4}}\,\,(0\leq x\leq R)$ と表せるため、

\begin{eqnarray}
\int_{C_3} &=& \int_R^0e^{iz^2}\diff z\EE
&=& \int_R^0e^{i(xe^{i\pi/4})^2}(e^{\ff{i\pi}{4}}\diff x)\EE
&=& -e^{\ff{i\pi}{4}}\int_0^Re^{-x^2}\diff x\tag{5}
\end{eqnarray}

となります。

※ 積分区間の計算の際には複素平面上での円と直線の関係式を用いています。

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フレネル積分の導出

式$(3)=$式$(5)$となることを示すのがフレネル積分の核となります。したがって、まずは式$(4)$の積分値が $0$ となることを示すことが目標となります。

さて、式$(4)$の積分値については次のように評価できます。

\begin{split}
&\quad\left|iR\int_0^{\ff{\pi}{4}}e^{iR^2(\cos2\q+i\sin2\q)}e^{i\q}\diff \q \right| \EE
&\leq R\int_0^{\ff{\pi}{4}}\left|e^{iR^2(\cos2\q+i\sin2\q)} \right|\diff\q \EE
&\leq R\int_0^{\ff{\pi}{4}}\left|e^{-R^2\sin2\q}\right|\left|e^{iR^2\cos2\q}\right|\diff\q
\end{split}

今、$\DL{\left|e^{iR^2\cos2\q}\right|=1}$ のため、

\begin{split}
&\,\,\quad R\int_0^{\ff{\pi}{4}}\left|e^{-R^2\sin2\q}\right|\left|e^{iR^2\cos2\q}\right|\diff\q \EE
&\leq R\int_0^{\ff{\pi}{4}}e^{-R^2\sin2\q}\diff \q \EE
\end{split}

とできます。ここで、天下り的になりますが、図のように $0\leq \q\leq \pi/2$ の区間にて$2\q/\pi\leq\sin\q $ の関係にあることを利用すると、

幾何学的関係

$\DL{e^{-R^2\sin2\q}\leq e^{-\ff{4R^2}{\pi}\q}}$ が言えます。ゆえに、

\begin{split}
&\,\,\quad R\int_0^{\ff{\pi}{4}}e^{-R^2\sin2\q}\diff \q \EE
&\leq R\int_0^{\ff{\pi}{4}}e^{-\ff{4R^2}{\pi}\q}\diff \q \EE
&= \ff{\pi}{2R^2}(1-e^{-R^2})
\end{split}

となります。

$R\to \infty$ の極限で $\DL{\lim_{R\to\infty}\ff{\pi}{2R^2}(1-e^{-R^2})=0}$ となるので、式$(4)$の積分値が $R\to\infty$ の極限で $0$ となることが言えます。

次に $C_3$ の線積分を求めます。式$(5)$ より、

\begin{split}
\int_{C_3} &= -e^{\ff{i\pi}{4}}\int_0^Re^{-x^2}\diff x \EE
&=-\left(\ff{1}{\sqrt{2}}+\ff{i}{\sqrt{2}} \right)\int_0^Re^{-x^2}\diff x
\end{split}

と変形します。$R\to \infty$ の極限を考えると、ガウス積分が適用できるので、

\begin{split}
-\left(\ff{1}{\sqrt{2}}+\ff{i}{\sqrt{2}} \right)\lim_{R\to\infty}\int_0^Re^{-x^2}\diff x=-\left(\ff{1}{\sqrt{2}}+\ff{i}{\sqrt{2}}\right)\ff{\sqrt{\pi}}{2}
\end{split}

が得られます。したがって、

\begin{split}
\lim_{R\to\infty} \int_{C_3} &= -\left(\ff{1}{\sqrt{2}}+\ff{i}{\sqrt{2}}\right)\ff{\sqrt{\pi}}{2}
\end{split}

となります。

最後に、$C_1$ の線積分は $R\to\infty$ の極限と式$(3)$を考えることにより

\begin{split}
\lim_{R\to\infty}\int_0^Re^{iz^2}\diff z&=\ff{I}{2}+\ff{i}{2}J
\end{split}

の関係にあると言えます。

以上、式$(1),(2),(3),(4),(5)$ の結果を用いることより、

\begin{split}
\oint e^{iz^2}\diff z&=\lim_{R\to\infty}\left(\int_{C_1}+\int_{C_2}+\int_{C_3}\right)\EE
0&= \left(\ff{I}{2}+i\ff{J}{2}\right)+0-\left(\ff{1}{\sqrt{2}}+\ff{i}{\sqrt{2}}\right)\ff{\sqrt{\pi}}{2}
\end{split}

が成立し、これより

\begin{split}
I= \sqrt{\ff{\pi}{2}}=\int_{-\infty}^{\infty}\cos{x^2}\diff x\EE
J= \sqrt{\ff{\pi}{2}}=\int_{-\infty}^{\infty}\sin{x^2}\diff x
\end{split}

フレネル積分が得られます。

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