複素平面上の円と直線の方程式の導出【複素解析】

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複素数の世界では、円と直線の方程式はどのように表せるのでしょうか?

今回は、複素数の世界での円と直線の方程式を導く過程について解説します。

円と直線の方程式

複素数を $\A, z$ とし、実数を $c$ とする。

このとき、円の方程式は次のように表せる。

\begin{split}
z\bar{z}-\bar{\A}z-\A z+c=0 \\
\end{split}

また、直線の方程式は次のように表せる。

\begin{split}
\bar{\A} z+\A\bar{z}+c =0 \\
\,
\end{split}

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円の方程式の導出

最も基本的な図形の一つである、複素数の世界での円の方程式を導いていきましょう。ところで、複素平面は実数の世界でのデカルト座標と対応させることができます。

すなわち、$x$ 軸を実軸、$y$ 軸を虚軸に対応させることでデカルト座標の図形を複素平面に置き換えることができるのです。

したがって、$x,y$ の対応関係を上手く設定してやれば、複素平面での円の方程式を導けるだろうと予想できます。

見通しを良くするため、複素数を $z$ とし、実数 $x,y$ を使って、$z=x+yi$ と表します。また、共役複素数 $\bar{z}$ は $\bar{z}=x-iy$ とできます。

これらの複素数を使うと、$x,y$ を次のように表すことができます。

$$
\left\{
\begin{split}
\,x&=\ff{z+\bar{z}}{2} \\[6pt]
\,y&=\ff{z-\bar{z}}{2i}
\end{split}
\right.
$$

これは定番の変換手法なので、覚えておきましょう。

複素平面上の円の方程式

さて、中心の座標が $(a,b)$ で半径 $r$ の円は、デカルト座標で $(x-a)^2+(y-b)^2=a^2$ と表せるため、先程の変換結果を適用して、

\begin{split}
r^2&=(x-a)^2+(y-b)^2 \EE
&= x^2+y^2-2ax-2by+a^2+b^2 \EE
&= \left(\ff{z+\bar{z}}{2}\right)^2+\left(\ff{z-\bar{z}}{2i}\right)^2\EE
&\qquad -a(z+\bar{z})+ib(z-\bar{z})+a^2+b^2 \\[6pt]
&= z\bar{z}-(a-ib)z-(a+ib)\bar{z}+a^2+b^2
\end{split}

と、円の方程式を複素数の世界に変換できます。ここで、$\A=a+ib$ として、$c=a^2+b^2-r^2$ とすると、

\begin{split}
z\bar{z}-\bar{\A}z-\A \bar{z}+c=0
\end{split}

と変形でき、複素数の世界での円の方程式を導けました。

円の方程式

複素数を $\A, z$ とし、実数を $c$ とする。

このとき、円の方程式は次のように表せる。

\begin{split}
z\bar{z}-\bar{\A}z-\A \bar{z}+c=0 \\
\,
\end{split}

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直線の方程式の導出

次に、直線の方程式を導いていきます。まず、デカルト座標の世界では、直線の方程式は $a,b,c$ を定数として、 $ax+by+c=0$ と表せます。

先程と同様に、複素数 $z$ を使って直線の方程式の変換を行うと、次のようになります。

\begin{split}
&a\left(\ff{z+\bar{z}}{2} \right)+b\left(\ff{z-\bar{z}}{2i} \right)+c =0 \\[6pt]
&\left(\ff{a}{2}-\ff{b}{2}i \right)z+\left(\ff{a}{2}+\ff{b}{2}i \right)\bar{z}+c =0
\end{split}

ここで、$\A=\DL{\ff{a}{2}+\ff{b}{2}i}$ とすると、上式は、

\begin{split}
\bar{\A} z+\A\bar{z}+c =0
\end{split}

と整理できます。無事、複素数の世界での直線の方程式を導けました。

直線の方程式

複素数を $\A, z$ とし、実数を $c$ とする。

このとき、直線の方程式は次のように表せる。

\begin{split}
\bar{\A} z+\A\bar{z}+c =0 \\
\,
\end{split}

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円と直線の方程式の統一

円と直線の方程式を並べてみると、形がかなり似ていることに気が付きます。

$$
\left\{
\begin{split}
&\,z\bar{z}-\bar{\A}z-\A \bar{z}+c=0 \EE
&\,\bar{\A} z+\A\bar{z}+c =0
\end{split}
\right.
$$

そこで、円と直線の方程式を統一する方法を考えていきます。まず、円の方程式について $-\bar{\A}=\bar{\A}, -\A=\A$ として取り換えると、

\begin{split}
z\bar{z}+\bar{\A}z+\A \bar{z}+c=0
\end{split}

とでき、左辺第2項以降については、直線の方程式と一致することが分かります。問題となる左辺第1項に関しては、係数を付けることで解決できます。すなわち、$c_1, c_2$ を実数の係数として、

\begin{split}
c_1z\bar{z}+\bar{\A}z+\A \bar{z}+c_2=0
\end{split}

とすると、$c_1=0$ のとき、直線の方程式と一致すると言えます。

円と直線の方程式

複素数を $\A, z$ とし、実数を $c_1, c_2$ とする。

このとき、円と直線の方程式を統一した方程式が次のように表せる。

\begin{split}
c_1z\bar{z}+\bar{\A}z+\A \bar{z}+c_2=0 \\
\,
\end{split}

円と直線の方程式を統一して扱えることに複素数の世界の奥深さが垣間見えます。

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円の方程式とオイラーの公式

さて、円の方程式については、次のようにも変形することができます。

\begin{split}
z\bar{z}-\bar{\A}z-\A \bar{z}+c&=0 \EE
(z-\A)(\bar{z}-\bar{\A})&=\A\bar{\A}-c=r^2\EE
|z-\A|^2 &= r^2 \EE
\therefore\,\,|z-\A| &= r
\end{split}

これは、中心からの距離が一定の点の集合が円となることを表しています。

円の方程式

複素平面上での円の中心を $\A$ とするとき、
円の方程式は次のようにも表せる。

\begin{split}
|z-\A| &= r \\
\,
\end{split}

絶対値と円の方程式

原点を中心とする半径 $1$ の円は、$|z|=1$ とでき、$z$ を極形式で表すと、$r=1$ であるので、$z=\cos\q+i\sin\q$ とでき、さらに、オイラーの公式を用いることで、$z=e^{i\q}$ と表示できます。

よって、一般の円については、$z=re^{i\q}+\A$ とできることが分かります。

円とオイラーの公式

円の半径を $r$、中心の座標を $\A$ とすると、
円周上の点 $z$ は次のように表せる。

\begin{split}
z=re^{i\q}+\A\\
\,
\end{split}

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$\delta$ 近傍とは?

ところで、円の内側の領域を数式で表すにはどうすれば良いのでしょうか?範囲指定の方法について、考えてみましょう。

円の不等式の模式図

ある点が円周より内側にあるとき、中心からその点 $z$ までの距離は半径より小さくなるはずなので、

\begin{split}
|z-\A| < r
\end{split}

という不等式が成立しなければなりません。ここで、$\delta$(デルタ)を正の実数として、中心座標が $\A$ で半径 $\delta$ の円の内部を考えます。

デルタ近傍とは?

このとき、円の内部に存在する点 $z$ の集合を『$\A$ の $\delta$ 近傍』と呼びます。

$\delta$ 近傍とは?

中心座標が $\A$ で半径 $\delta$ の円に存在する点 $z$ の集合を、
『$\A$ の $\delta$ 近傍』と呼ぶ。

複素関数の微分を考えるときに、この用語に再び出会います。

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