1/n乗法則とは?|乱流境界層が従う平均流速分布の規則

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$\DL{\ff{1}{n}}$ 乗法則とは、乱流境界層内の平均流速分布に関しての経験則です。

1/n乗法則とは?

$U$ を主流流速、壁面からの距離を $y$、境界層厚さを $\delta$ とする。

このとき、乱流境界層における平均流速 $u$ を次のように表せる。

\begin{split}
\ff{u}{U}=\left( \ff{y}{\delta} \right)^{\ff{1}{n}} \\
\,
\end{split}

乱流境界層内の平均速度を、$\DL{\ff{1}{n}}$ 乗法則以外にも対数法則壁法則と呼ばれる別の表現方法で与える場合もあります。

今回は $\DL{\ff{1}{n}}$ 乗法則に基づいて境界層内の流れを解析していきます。

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1/n乗則とは?

乱流境界層内の流れに対しては、境界層方程式を簡略化できないため、流速分布の厳密解を得ることは困難です。

一見、乱流境界層内の流れは複雑で、時間・空間的にランダムに変動しているように思えますが、意外なことに、長時間の平均を取ると流速分布を簡単な式で表せることが明らかになっています。

さて、一般の機械の場合、実験事実として、乱流境界層内の平均流速分布が次のような関係にあることが知られています。

\begin{split}
\ff{u}{U}=\left( \ff{y}{\delta} \right)^{\ff{1}{7}}
\end{split}

ただし、主流流速を $U$、壁面からの距離を $y$、境界層厚さを $\delta$ とします。

一般的には、レイノルズ数の変化に応じて指数は変わり、$n$ を用いて次のように表せることが知られています。

\begin{split}
\ff{u}{U}=\left( \ff{y}{\delta} \right)^{\ff{1}{n}}
\end{split}

乱流境界層の平均流速分がこのような規則に従うことから、これを $\DL{\ff{1}{n}}$ 乗法則と呼びます。

ただし、対数法則壁法則と呼ばれる平均流速分布についての記述方法を採用する場合もあります。

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排除厚さと運動量厚さの計算

乱流境界層が $\DL{\ff{1}{n}}$ 乗法則に従うときの排除厚さ運動量厚さを計算していきます。

まず、境界層内の平均速度分布は次のように与えられるので、

\begin{split}
u=U\left( \ff{y}{\delta} \right)^{\ff{1}{n}}
\end{split}

これを排除厚さ $\delta^{*}$ の定義式に代入すると、

\begin{split}
\delta^{*}&= \ff{1}{U}\int_0^{\infty}(U-u)\diff y \EE
&= \int_0^{\delta}\left\{ 1-\left(\ff{y}{\delta}\right)^{\ff{1}{n}}\right\}\diff y \EE
&= \left[ y-\ff{1}{1+\ff{1}{n}}\ff{y^{1+\ff{1}{n}}}{\delta^{\ff{1}{n}}} \right]_0^{\delta} \EE
&= \ff{\delta}{n+1}
\end{split}

と計算できます。

次に運動量厚さについて考えると、定義式より、

\begin{split}
\q&= \ff{1}{U^2}\int_0^{\infty}u(U-u)\diff y \EE
&= \int_0^{\delta}\left(\ff{y}{\delta}\right)^{\ff{1}{n}}\left\{ 1-\left(\ff{y}{\delta}\right)^{\ff{1}{n}}\right\}\diff y \EE
&= \int_0^{\delta} \left\{\left(\ff{y}{\delta}\right)^{\ff{1}{n}}-\left(\ff{y}{\delta}\right)^{\ff{2}{n}}\right\}\diff y \EE
&= \left[\ff{1}{1+\ff{1}{n}}\ff{y^{1+\ff{1}{n}}}{\delta^{\ff{1}{n}}}-\ff{1}{1+\ff{2}{n}}\ff{y^{1+\ff{2}{n}}}{\delta^{\ff{2}{n}}} \right]_0^{\delta} \EE
&= \ff{n\delta}{(n+1)(n+2)}
\end{split}

となります。

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乱流流れの菅内の流量

最後に、$\DL{\ff{1}{n}}$ 乗法則を利用して、乱流流れにおける円管内の体積流量を求めていきます。

なお、層流定常流における管内の流量は、ハーゲン・パアズイユ流れについて解説した際に導出しています。

今、菅の内径を $2R$、菅内の主流流速を $U$ とします。

このとき、中心から $r$ 離れた位置を過ぎる流量 $q(r)$ を次のように表せます。

\begin{split}
q(r)=2\pi r u \diff r
\end{split}

さて、流れが $\DL{\ff{1}{n}}$ 乗法則に従っているため、平均流速を $u=U\DL{\left( \ff{y}{\delta} \right)^{\ff{1}{n}}}$ とおけます。さらに、$y=R-r, \delta=R$ のため、上式に代入すると、

\begin{split}
q(r)=\ff{2\pi U}{R^{\ff{1}{n}}}r(R-r)^{\ff{1}{n}} \diff r
\end{split}

とできます。これより管内を通り過ぎる流量 $Q$ を以下のように求められます。

\begin{split}
Q&=\int_0^R q(r) \diff r \EE
&=\ff{2\pi U}{R^{\ff{1}{n}}}\int_0^R r(R-r)^{\ff{1}{n}} \diff r
\end{split}

部分積分を適用して、

\begin{split}
\ff{QR^{\ff{1}{n}}}{2\pi U}&=\left[r\cdot\ff{-1}{\ff{1}{n}+1}(R-r)^{\ff{1}{n}+1} \right]_0^{R} \EE
&\qquad+\int_0^R\ff{1}{\ff{1}{n}+1}(R-r)^{\ff{1}{n}+1}\diff r \EE
&= \ff{n}{n+1}\left[ \ff{-1}{\ff{1}{n}+2}(R-r)^{\ff{1}{n}+2} \right]_0^{R} \EE
&= \ff{n^2}{(n+1)(2n+1)}R^{\ff{2n+1}{n}}
\end{split}

とできて、以上より流量を

\begin{split}
Q= \ff{2\pi n^2}{(n+1)(2n+1)}UR^{2}
\end{split}

と求められます。

この結果をハーゲン・ポアズイユ流れでの流量と比較すると分かるように、乱流境界層における流量は、流体の粘性よりも、主流流速により決まることが分かります。

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