【粘性力の導出】粘性流体に作用するせん断応力とは?

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ナビエ・ストークス方程式導出の準備として、粘性流体に作用する粘性力について求めます。

流体に作用する粘性力

流速ベクトルを $\B{v}$、粘性係数を $\mu$ とする。

このとき、粘性力 $\B{F}$ は次のように表せる。

\begin{split}
\B{F}=\mu\nabla^2 \B{v} \\
\,
\end{split}

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流体の粘性力とは?

流体は、『変形に際してせん断力が作用しない物体』と定義されました。

ただし、この定義が厳密に成立するのは非粘性流体のみです。

一方、実在の流体は粘性を持つため、変形に際してせん断応力が作用します。

今までは、粘性を無視できる流体の性質について考えていましたが、

今回は、実在流体の粘性が運動に及ぼす影響、すなわち粘性力について考えていきます。

復習になりますが、粘性係数が $\mu$(ミュー)の流体があり、

速度勾配が $\DL{\ff{\diff u}{\diff x}}$ であるとします。

このとき、流体に作用するせん断応力 $\tau$(タウ)は次のような模式図で表せます。

粘性力の模式図

例えば、$y$ 軸に垂直な面に対して、$x$ 軸方向に作用するせん断応力を $\tau_{yx}$ のように表すと約束すると、

\begin{split}
\tau_{yx} = \mu\ff{\diff u}{\diff x}
\end{split}

のように表せます。

同様にして、流体に作用するせん断応力は、$\tau_{zx}, \tau_{zy}$ のように表せます。

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平衡方程式と粘性力

材料力学の知識になりますが、物体に作用する力は平衡方程式に従うことが知れています。

平衡方程式は、

\begin{eqnarray}
\begin{bmatrix}
\sigma_{xx} & \tau_{yx} & \tau_{zx} \EE
\tau_{yx} & \sigma_{yy} & \tau_{zy} \EE
\tau_{zx} & \tau_{zy} & \sigma_{zz}
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
\ff{\del}{\del x} \EE
\ff{\del}{\del y} \EE
\ff{\del}{\del z} \EE
\end{bmatrix}
=
\begin{bmatrix}
F_x \EE
F_y \EE
F_z
\end{bmatrix}
\end{eqnarray}

となります。

本来は圧力等が作用するはずですが、今回は粘性力のみが作用していると考えます。

すると、各方向に作用する粘性力を次のように書き下せます。

\begin{eqnarray}
&\left(\ff{\del\sigma_{xx}}{\del x}+\ff{\del\tau_{yx}}{\del y}+\ff{\del\tau_{zx}}{\del z}\right)\B{i} \EE
&\quad+\left(\ff{\del\tau_{yx}}{\del x}+\ff{\del\sigma_{yy}}{\del y}+\ff{\del\tau_{zy}}{\del z}\right)\B{j}\EE &\qquad+\left(\ff{\del\tau_{zx}}{\del x}+\ff{\del\tau_{zy}}{\del y}+\ff{\del\sigma_{zz}}{\del z}\right)\B{j} \tag{1}\\
\,
\end{eqnarray}

ただし、$\B{i}, \B{j}, \B{k}$ を単位ベクトルとします。

これらの式が流体に作用するせん断力を表します。

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粘性力の計算

流体の粘性力を求めることができました。

ここからは、式(1)をより具体的な形で表すことを目指していきます。

簡単のため、$x$ 方向に作用する粘性力から考え始めましょう。

流体に作用する剪断応力

図のような微小な直方体を考えます。

流体が微小な立方体中を流速 $u$ で通り過ぎているとします。

このとき、各せん断応力は、

$$
\left\{
\begin{split}
\sigma_{xx} &= \mu\ff{\del u}{\del x} \\[6pt]
\tau_{yx} &= \mu\ff{\del u}{\del y} \\[6pt]
\tau_{zx} &= \mu\ff{\del u}{\del z}
\end{split}
\right.
$$

と表せます。

これを先程の式に当てはめると、$x$ 軸方向に作用する粘性力は次のように求められます。

\begin{split}
F_x=\mu\ff{\del^2 u}{\del x^2}+\mu\ff{\del^2 u}{\del y^2}+\mu\ff{\del^2 u}{\del z^2}\\
\,
\end{split}

この形は、ラプラシアンを使って簡単に表せ、$\D u (=\nabla^2 u)$ とできます。

同様に計算すると、$y, z$ 軸方向に関する粘性力は、$\nabla^2 v, \nabla^2 w$ となります。

これを一本にまとめると、流体に作用する粘性力を $\nabla^2 \B{v}$ となります。

流体に作用する粘性力

流速ベクトルを $\B{v}$、粘性係数を $\mu$ とする。

このとき、粘性力 $\B{F}$ は次のように表せる。

\begin{split}
\B{F}=\mu\nabla^2 \B{v} \\
\,
\end{split}

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