層流と乱流|レイノルズ数とは?【バッキンガムのπ定理】【流体力学】

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流れには層流乱流の二つの状態が存在します。

層流と乱流では流れの状態が完全に異なるため、物理学的にも数学的にも興味深い対象となります。

また、流れの状態が層流か乱流かで輸送機械や熱交換の効率が変わるため、工学的にも興味のある対象となります。

今回は層流と乱流について解説し、層流と乱流の境目に関係するレイノルズ数についても解説します。

イノルズ数

動粘度を $\nu$、速度を $U$、(代表)長さを $d$ として、レイノルズ数 $Re$ を次のように定義する。

\begin{eqnarray}
Re = \ff{Ud}{\nu}
\end{eqnarray}

また、粘度を $\mu$ として流体の密度 $\rho$ を用いて $\DL{\nu = \ff{\mu}{\rho}}$ の関係があり、レイノルズ数は次のようにも表せる。

\begin{eqnarray}
Re = \ff{\rho Ud}{\mu} \\
\,
\end{eqnarray}

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層流とは?

まずは層流について解説します。

層流とは、菅の軸線に対して各流線が平行になるような流れのことです。(→流線とは?

層流を図示すると次のようになります。

層流と流線

層流では流速が規則的に変化しているため、数学的な取り扱いが楽であるという特徴があります。

また、層流では流体と物体との抵抗が小さくなるため、流体抵抗が問題となる輸送機械(航空機・自動車・船)では関心が持たれる流れです。

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乱流とは?

次に乱流について説明を行います。

とは言え、実は乱流についての明確な定義は現時点でも無く、研究者の間でも議論となっています。

ぼやけた表現になりますが、『乱流とは層流で無い流れである』と言えます。

乱流の一例を図示すると、次のようになります。

乱流と流線

乱流は複雑な流れであるため、正確に計算することが難しく、未解決の問題が数多く残されています。

そのため、現在でも乱流についての研究が精力的に行われています。

一般に、乱流が発生すると流体抵抗が大きくなるため、航空工学の観点からは乱流が発生しないような形状に工夫することが大事になります。

一方、乱流は熱を持ち去る能力が高いため、冷却の観点から言えば積極的に活用したい場面もあります。

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バッキンガムの$\pi$定理

話は変わりますが、流体力学は複雑な現象を扱います。

そのため、複雑な現象を整理する指標があると便利になります。

具体的には流れの特徴を決める粘性や密度などから、指標が求められそうです。

このような指標を求める際に、バッキンガムの$\pi$定理と呼ばれる理論を用います。

さて、物理学ではいくつかの基本単位($\RM{kg, m, s}$など)を使いますが、これらの基本単位をさらに組み合わせて新たな単位($\RM{N, Pa, J}$など)を作り出します。

例えば、質量の単位を $\RM{M}$、時間の単位を $\RM{T}$、長さの単位を $\RM{L}$ として、力の単位 $\RM{N}$ は、次のような基本単位の組み合わせとして表せます。

\begin{eqnarray}
\RM{N} &=& \RM{kg\cdot m/s^2} \EE
&=& \RM{MLT^{-2}}
\end{eqnarray}

このように、ある単位を基本単位の組み合わせとして表す方法を次元解析と言います。

次元解析の手法を一般化すると次のように述べられます。

基本単位が $n$ 個あるとき、ある物理量 $\pi$(パイ)は基本単位の指数関数の積で表せる。

\begin{eqnarray}
\pi &=& a_1^{\alpha_1}a_2^{\alpha_2}\cdots a_n^{\alpha_n}
\end{eqnarray}

$\pi$に関して、指数 $\alpha_1, \alpha_2, \cdots, \alpha_n$ を上手く選ぶと、

\begin{eqnarray}
\alpha_1 + \alpha_2 + \cdots + \alpha_n = 0
\end{eqnarray}

とできて、物理量を無次元化できます。

無次元量には単位が含まれていないため、単位系に関わらず利用できます。

メートル法でもヤード・ポンド法などの単位系に関わらず、無次元数であれば統一して記述できる利点があります。

そのため、ある現象を解析するときに無次元量は重宝されるのです。

ところで、無次元量を作るための指数の選び方はいくつかありそうですが、

無次元量の作り方に関して次の事実が知られています。

ある現象を支配する物理量が $m$ 個あるとし、これらの物理量を構成する基本単位が $n$ 個あるとします。

このとき、$k$ 個の独立した無次元量を作ることができ、$n, m, k$ の間に次の関係が成立します。

\begin{eqnarray}
k = m\,-n
\end{eqnarray}

この事実は、バッキンガムの$\pi$定理から導かれます。

バッキンガムの$\pi$定理は次のように述べられます。

バッキンガムの$\pi$定理

ある現象を支配する物理量の個数を $m$、これらの物理量を構成する基本単位の個数が $n$ であるとき、この現象は互いに独立な $k (= m-n)$ 個の無次元量で記述できる。

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レイノルズ数とは?

それでは、流体力学にバッキンガムの$\pi$定理を適用することを考えましょう。

具体的には、動粘度 $\nu$、速度 $U$、(代表)長さ $d$、流体から受ける力を $F$ を使って無次元量を導いてみます。

無次元量を $\pi$ とすると、これらの組み立て単位は指数を使って次のように表せます。

\begin{eqnarray}
\pi = \rho^{\alpha}\nu^{\beta}d^{\gamma}U^{\delta}F^{\varepsilon}
\end{eqnarray}

いま、これらの組み立て単位は、$\RM{L, M, T}$の基本単位から作られており、

$\pi$が無次元量となるためには、

$\RM{L, M, T}$の順に以下の恒等式が成立しなければなりません。

$$
\left\{
\begin{split}
&-3\alpha + 2\beta + \gamma + \delta + \varepsilon = 0 \EE
&\,\, \alpha + \varepsilon = 0 \EE
&-\beta \,- \delta \,- 2\varepsilon = 0 \EE
\end{split}
\right.
$$

これらの式より、$\delta$ と $\varepsilon$ の二つを決めれば残りの $\alpha, \beta, \gamma$ が来まることが分かります。

ここで、力 $F$ を含まない無次元量を求めてみましょう。

すなわち、$\varepsilon=0$として、$\delta = 1$とすると、

$\alpha = 0, \beta = -1, \gamma = 1$と求められます。

これより、無次元数$\pi$ が、

\begin{eqnarray}
\pi = \ff{Ud}{\nu}
\end{eqnarray}

となります。

この無次元数には、発見者の名前からレイノルズ数という名称が与えられています。

イノルズ数

動粘度を$\nu$、速度を$U$、(代表)長さを$d$として、レイノルズ数$Re$は次のように定義される。

\begin{eqnarray}
Re = \ff{Ud}{\nu}
\end{eqnarray}

また、粘度を$\mu$として流体の密度$\rho$を用いて$\DL{\nu = \ff{\mu}{\rho}}$の関係があり、次のようにも表せる。

\begin{eqnarray}
Re = \ff{\rho Ud}{\mu} \\
\,
\end{eqnarray}

レイノルズ数は層流から乱流に遷移する境目の目安となるだけでなく、力学的相似則を考える際も利用されます。

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