ステファン=ボルツマンの法則とは?|輻射における温度と熱流束の関係

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絶対温度が $T$ の物体から輻射される熱流束は、ステファン・ボルツマンの法則より、次のように記述されます。

ステファン=ボルツマンの法則

$\sigma$ をステファン=ボルツマン定数、$\eps$ を(全)放射率とする。

このとき、絶対温度 $T$ の物体より輻射される熱流束 $q$ の大きさは次のように記述される。

\begin{split}
q=\eps\sigma T^4\\
\,
\end{split}

輻射が熱伝導熱伝達と異なる点は、熱を伝える媒質が無い真空空間でも伝熱するということです。太陽の熱が何もない宇宙空間を伝わり、地球まで届く過程に輻射が大きな役割を果たしています。

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ステファン=ボルツマンの法則とは?

輻射により物体から放出される電磁波とエネルギーの関係を、ステファンは実験的に明らかにし、弟子のボルツマンが理論的な証明を与えました。

すなわち、ある温度の物体表面から輻射される熱流束の大きさは、以下のステファン=ボルツマンの法則により記述されます。

ステファン=ボルツマンの法則

$\sigma$ をステファン=ボルツマン定数、$\eps$ を放射率とする。

このとき、絶対温度 $T$ の物体より輻射される熱流束 $q$ の大きさは次のように記述される。

\begin{split}
q=\eps\sigma T^4\\
\,
\end{split}

ステファン=ボルツマンの法則の内容は、面から放射される熱流束として以下のように図示できます。

ステファン・ボルツマンの法則

ステファン・ボルツマンの法則から分かるように、輻射により放射される熱流束は温度に比例して大きくなります。

また、熱伝導や熱伝達では、高温側から低温側に熱が流れるのに対して、輻射では低温側の物体からも熱が移動します。

ただし、マクロな視点で見れば、正味の熱流束は常に高温側から流れ込みます。これについては、キルヒホッフの法則について解説する際に詳しく見ていきます。

輻射による伝熱形態の最大の特徴は真空空間でも伝わることです。したがって、宇宙空間での伝熱は輻射のみとなります。これは、宇宙空間での排熱手段は輻射のみしかないと言い換えることができます。

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ステファン・ボルツマン定数とは?

式から分かるように、ステファン・ボルツマンの法則には、温度 $T$ にステファン・ボルツマン定数という特別な係数がかけられています。

熱伝導率は物体固有とは言え、物体ごとに異なる定数となります。一方、ステファン・ボルツマン定数は量子力学に背景を持つ、より普遍的な定数です。

ステファン・ボルツマン定数は次のような関係を持つことが知られています。

\begin{split}
\sigma=\ff{2\pi^5k^4}{15c^2h^3}\NEQ 5.67\times 10^{-8}\, \RM{W/(m^2\,K^4)}
\end{split}

ただし、$c$ を光速、$h$ をプランク定数、$k$ をボルツマン定数とします。

ステファン=ボルツマン定数

以下の数値を、ステファン=ボルツマン定数 $\sigma$ と呼ぶ。

\begin{split}
\sigma=5.67\times 10^{-8}\, \,\RM{W/(m^2\,K^4)}\\
\,
\end{split}

なぜこのように表せるのかについては、別の機会に詳しく説明しますが、ステファン・ボルツマン定数は材質に無関係な定数であることを覚えておきましょう。

放射率とは?

もう一つの定数として放射率が登場しています。

放射率とは、名前の通り物体が輻射により放出する熱エネルギーの割合のことです。比較の基準として同温の黒体から放射されるエネルギーを用います。

黒体から放射されるエネルギーを $1$ とするので、放射率は $0 \sim 1$ の値を取ります。

放射率は熱伝達率の性質に似ていて、表面の状態によって変化します。例えば、同じ材質でも鏡のようなピカピカの研磨面では放射率は小さくなり、凹凸が大きな粗面では放射率が大きくなる傾向にあります。

そのため、消防士の耐熱服の表面は金属でコーティングされた、鏡のような服装となっています。

また、放射率は金属では小さく、不導体では大きい傾向にあります。例として、アルミニウムの良く研磨した面の放射率は約 $0.02$、ガラスの研磨面では約 $0.95$ となります。

放射率等の用語の詳しい解説は、キルヒホッフの法則について解説する際に改めて説明します。

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黒体放射とは?

放射率について説明したところで黒体という言葉が登場しました。ここでは黒体黒体放射についても解説します。

まず、黒体という言葉から分かるように、黒体は表面が黒い物体です。表面が黒く見えるということは、入射した光の内、少なくとも可視光のほとんどが吸収されていることを意味します。

物理学では、入射する全ての波長の電磁波を吸収する理想的な物体のことを黒体と呼びます。このような物体は”黒色”に見えるため、黒体、あるいは黒体面と呼ぶのです。

黒体とは?

入射する全ての波長の電磁波を吸収する理想的な物体、あるいは面

定義から分かるように、黒体の放射率(吸収率)は $1$ となります。したがって、黒体から放射されるエネルギーは、

\begin{split}
q=\sigma T^4\\
\end{split}

と表されます。

黒体は理想モデルのため、実在はしませんが、輻射の理論的な理解の上では重要なモデルとなります。

なお、黒体は全波長の電磁波を吸収するとはいえ、黒体からもある程度電磁波が放射されます。そして、黒体からの輻射を黒体放射と表現します。

黒体放射の”色”はプランクの放射式により求めることができます。この式には、プランク定数と呼ばれる定数が含まれています。

プランクの放射式の導出は、量子力学の世界を扉を開くきっかけとなりました。

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